第4話 追放へ
「嫌です。わたしは、殿下の婚約者なんです」
殿下をあきらめたくない。
わたしは、婚約をする前は、わたしのところに婚約の話が来ても、それを異母妹に譲ってもいいと思ったことはあった。
しかし今は違う。
婚約して以降、わたしは、殿下のことを好きになる努力をしてきた。
そして、国民の為になる王太子妃、そして、王妃になることを目指して努力してきた。
それなのに、殿下はわたしとの婚約を破棄し、異母妹を婚約者にしようとしている。
せっかくここまで努力してきたのに……。
このままではその努力が無駄になってしまう。
殿下と結婚というところまで進んでいきたい。
「まだあきらめていないのか。まったく。わたしはイレーナと先まで進んでいるのに」
「先に進んでいる?」
それってどういうこと?
「二人だけの儀式をしているということだ」
イレーナは恥ずかしそうにしている。
わたしは大きな打撃を受けた。
わたしの方も、殿下とのキスや殿下に抱きしめられることについて、心の準備を整えていたところだったのに……。
「ここまで進んでいるのだから、婚約するのも当然というところだな」
微笑む殿下。
殿下は、異母妹に心を奪われてしまった。
「わたし、殿下が愛してくださって、幸せです」
殿下と異母妹はもうラブラブだ。
そう言いたくなるが、なんとか我慢する。
「今日もパーティーが終わった後は……」
「よろしくお願いします」
甘えた声で言うイレーナ。
いつもは、穏やかに対応することを心がけているわたしだが、このような冷たい仕打ちを受けてしまっては、どうしても怒りが湧いてきてしまう。
わたしは、怒りで心が沸騰してきていた。
「殿下、最後に、もう一度わたしに振り向いてもらえませんか。振り向いて、婚約を続けて、結婚していただけませんか。お願いします」
頭を下げるわたし。
ここまで殿下を好きになろうと努力してきた。わたしを選んでほしい。
もう可能性はほとんどない、しかし、ゼロでない限りは、お願いをしていく。
しばしの沈黙
やがて、
「セリフィーヌよ」
と殿下は口を開いた。
緊張するわたし。
少しでもいい方向に行ってほしい。淡い期待。
しかし……。
「先程からの度重なる無礼。もう許してはおけぬ。婚約破棄をおとなしく受け入れれば、何も言わなかったものを」
殿下はそう言うと、継母の方を向いた。
「こういう無礼な女は、国境近くの場所に追放しようと思う。よろしいな」
継母は、
「殿下がおっしゃる通りに従います。殿下に無礼を働いた以上、ラフォンラーヌ公爵家の人間ではもうありませんから。これからは母でも子でもありません」
と淡々と言った。
イレーナも、
「もうあなたは、姉ではありません。ただの他人です」
と言う。
どうして……。わたし、殿下との婚約を続けて結婚したいと言っているだけなのに……。どうしてそれが無礼なことになるの……。
「殿下、わたしは殿下に無礼など働いていません」
「そういうこと自体が無礼なことだと言っているんだ」
「これほど殿下のことを想っているのに……」
わたしの想いはでも届きそうにない。
「いつまで言っているんだ。おい、この無礼な女をつまみだせ。つまみだして国境近くのところに追放しろ」
殿下は冷たく言う。
王太子付の護衛がわたしを外に連れ出そうとする。
「殿下、殿下……」
涙がこぼれてくる。
殿下、継母、異母妹は、そんなわたしをあざけるように笑っている。
殿下。政略結婚とはいえ、わたしは殿下のことを好きになろうと努力してきました。一生懸命努力してきたんです。足りなったかもしれませんが、殿下の好みの女性になろうと努力してきたんです。それなのに……。全く通じなかった。
継母、異母妹。いくらわたしと合わなかったからといって、この仕打ちはあんまりです。
しかし、それは言葉にならずに、わたしは部屋から追い出されていった。
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