第45話 運命の岐路 3
何がどうなってこうなったのかが全然
女には戻っているけれど、現世での私「
雪村が
縮んだ……縮んだのか!?
寝間着の上から胸をわし
今はそんな事を気にしている場合じゃないでしょ! だいたい何でそんなに
……落ち着け 私。
いや、とりあえずおっぱいはあるわ。
やっぱり雪村が子供に戻ったわけじゃなく、本当に性転換している。
ちょっと待って? こっちの世界ではこういう事ってありえるの?
和風ファンタジーな世界観だから、現世と違うって事も考えられるよね?
そう内側の雪村に聞いてみたけれど、雪村もそんなのは知らないらしく、こっちはこっちで大混乱している。
雪村の
どうしよう、どうしたらいい?
このまま帰って兄上に相談する? でも兄上に言ってどうするの?
雪村が知らないんだから、兄上も治し方を知っているとは思えない。
……じゃあ兼継殿?
そうだ、兼継殿だよ! あの人、神様っていうか
善は急げだ、夜中だけどごめんなさい。
私は庭を突っ切って、兼継殿の部屋をめざして駆け出した。
*************** ***************
幸い兼継殿はまだ起きていて、部屋からは灯りが
「兼継殿!」
庭からいきなり障子を開け放って飛び込んできた私に、兼継殿は、刀の
読書中だったのか、
「雪村、なのか……?」
いつもの朗々とした声とは違う、押し殺したみたいな声に、わたしはこくこくと
下手をしたら斬られていたって事よりも、こんなにびっくりしている兼継殿は見たことがなくて、私はますます不安になる。
これ、兼継殿にも治し方が解らないんじゃ……
でも今は兼継殿にしか頼りようがないし、この人に出来ないなら 他に出来る人はたぶん居ない。
私は兼継殿を見上げて 必死で
「あの、目を覚ましたらこのような姿になっていて。私にはどうしていいのかわかりません。兼継殿、助けてください」
「ありえるのか? こんな事が……」
額に手を当て考え込んでいる様子が、この人でも解らないんだって事をありありと示していて、私は本当にどうしていいか解らなくなった。
この世界で『ありえない事』が起きたんだとしたら。
それはきっと『私が雪村に転生した』せいだ。
私は女だから。
私が雪村の身体に入り込んだせいでこんな事になったんだとしたら、私はどうやって雪村に
いや、詫びて済む問題じゃない。
……何としても男の身体に戻らなくちゃ。私に
でも、どうしたらいいのか解らない。
*************** ***************
ほどなく、考え込んでいた兼継殿が、記憶を
「
何のことだかさっぱり解らない。
「ではどうしたら元に戻れるのでしょう?」
私は兼継殿に聞き返した。
兼継殿も、考え込んだ表情のまま首を振る。
「私はあいにく、そういった人間を見たことがない。保証はないが…… 陰の気が極まれば、また陽に転化するのではないか、と思う」
「陰の気を極める……女性を極めろという事でしょうか?」
「
そんな! それは困る! 私は兼継殿に食い下がった。
雪村は、いきなり身体に入り込んだ私に「出ていけ」と言った事なんて、一度もない。
行き場がない私を受け入れてくれた。
それだけなのに、どうしてこんな事になるの?
私はここで、雪村の望む通りに兄上を助けて、真木の領民の為に
兄上は私のこと、雪村だって認めてくれる?
領民はこの身体で、雪村だって受け入れてくれるの?
何よりこの身体じゃ戦えない。戦国時代なんだよ?
これから関ヶ原や大阪夏の陣があるけど、このままで雪村はどうなるの?
どうしたらいいの?
思考はぐるぐると回ったけれど「真木のために戦えない」って理由じゃ、上森方の兼継殿には響かない。
この人に何とかして貰わないとならないなら、上森の
「でもこれでは、姫をお守りする事ができません。兼継殿お願いです。何とかなりませんか?」
『上森の益』。そう考えるまで、私はすっかり桜姫の事を忘れていた。
そうだ。雪村は『桜姫を守る』ことを一番に考えていなければ駄目だし、そもそも大阪に来たのは、
この身体でどうやって謁見するの?
まずはそっちの心配をしなければならなかった。
「何とかと言われてもな……」
桜姫を持ち出したのが
しばらく目を
「……そうだな、子を
「分かりました。ではそうします!」
やっと示された解決策に、私は一も二も無く飛びついた。
姫のことはともかく、冷静に考えたら『謁見』の件は緊急事態だった。
「こおなせば」陰の気が
そんな私に、兼継殿が顔を上げ、
「……雪村、私の言っている意味が解っているか?」
「?」
「男と
オトコトチギレって何だ?
音琴千切れ? 男栃木れ?
脳がしばらく
同時にばっと顔が熱くなって、頭がパニックになる。
何も考えないで返事をしたけど「コオナセバ」って「子を成せば」ってこと?
「オトコトチギレ」って「男と契れ」ってこと!?
何を元気に返事しているんだ、私は!
言われた事よりもそっちの方が恥ずかしくて、私は兼継殿の顔が見られないまま
きっと「こいつ馬鹿だ」と思われた。
なのに、兼継殿の大きな手が、俯いた私の頭を優しく
もうどうしていいか解んなくて混乱している時に そういうのは反則だ、と思う。
しばらく黙ってそうしていた兼継殿が、すごく優しい声で囁いた。
「朝になったら、美成に相談してみよう。あいつは
そう言って立ち上りかける。
私は
自分でもどうしてそうしたのか解らないけど、頭の中がぐちゃぐちゃのまま 私は必死で兼継殿を見上げた。
考えがまとまらなくて口も
雪村は豊富への謁見があるから、急々に男に戻らなければならない。
そして男の人と契れば、戻れるかも知れない。
そうしなければならないとしたら、誰に頼む?
「相手に断られる」のを抜きに考えるなら、今はふたりしか頼める人は居ない。
兄上か兼継殿だ。
兄上は「これしか方法が無い」となれば協力してくれるだろうけど、母上が同じ『兄上』だ。
兼継殿は、現状を一番理解してくれている。
そしてあれだ。兼継殿は『カオス戦国』で唯一、エロが無かったキャラだから、ああは言っているけれど、頼んだところでエロいことにはならないんじゃないか?
もしかしたら、私の覚悟を試しているだけで、何か別の方法を見つけているかも知れない。
なんといっても愛染明王だ。不可能なんてあるわけない。
雪村、どうしよう?
問いかけても、雪村は私以上に混乱中だ。
私が決めるしかない。時間がない。
兼継殿の
「か、兼継殿。私は一刻も早く男に戻らねばなりません。だからその……」
「お願い、できませんか……?」
恥ずかしすぎて 兼継殿の顔が見られない。
兼継ルートにエロはない。
私は『カオス戦国』の兼継を信じる。
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