第41話 姫君の去就
「雪村、越後に来ていたのね? いらっしゃいませ!」
庭に出ていた姫が、私の姿を見つけた
桜姫の元気な姿に、私の気持ちはほっこりと
戦が終わった後は、桜姫は越後に戻っていたから、久し振りの再会だ。
「お久し振りです。姫はお変わりありませんでしたか?」
「大丈夫よ。雪村も変わりはない?」
にこにこ笑う姫が急に慌てた顔になり、私もつられて表情を改める。
「どうかしましたか?」
「急に迎えに来るんですもの。
「はい」
笑って返事をした
「何を言っているのです。姫さまを連れていくなど許しませんよ」
「「え?」」
桜姫と私の声がハモる。
きょとんとする私たちに、老女が
「姫さまは剣神公のご息女、そして影勝様の
なるほど、言われてみればその通りだ。
その通りだけど、考えたことも無かった。ゲームでは 誰かのルートに入るまで、雪村と桜姫はいつも一緒にいたから。
何だか寂しい気がするけれど、そういう事なら仕方がない。
私は桜姫の肩に手を置き、出来る限りの笑顔を作った。
「言われてみればそうですよね。越後なら
「ちょっと待って!? 嫌よ、わたくしは!」
姫の細腕が私の
桜姫の予想外に激しい反発に、私だけではなく侍女衆もざわりと引く。
「姫さま、私どものお世話はそんなに
悲しげに侍女衆が情に訴えてくるけど、桜姫も
「それとこれとは話が別よ? 雪村はわたくしを守ると父上様とお約束したでしょう? 信濃と越後に別れて、どうやってわたくしを守るの?」
しまった、それがあった。
「それはそうですが…… 越後に居れば、桜姫に危害が及ぶことなど無いでしょう。やはりご家族と暮らされた方が幸せではないかと思います。侍女衆とも、大変仲良く過ごされているではありませんか」
「わたくしは、雪村と離れ離れになりたくないの。だったら雪村がここに残って? 真木の当主は
「そういう訳には参りません。私は真木家の者として、兄上をお支えしたいと思っております」
いくら桜姫が主人公姫でも、私の中では兄上より優先順位が低い。
子供の頃は上森に
しかし信厳公の遺言もある。
それは何を
どうしよう。
「……どうしてもというなら、年の半分を
物静かで重厚な声に、その場に居た侍女衆がいっせいに
開かれた
政務が終わって戻ったばかりなんだろう。着替えを持った影勝様付きの侍女が、庭で繰り広げられる
そりゃそうだ、姫の手は私の掛衿を
「殿、よろしいのですか。いくら雪村とはいえ……」
桜姫は、嫁入り前の娘なのに。
老女が
しばらくの間を置いて、影勝様が再び、 口を開いた。
「……雪村、頼めるな?」
「はい、お任せ下さい」
私、桜姫をキズモノにするつもりは全くありません!
たぶん兄上も大丈夫です!
でも念のため、後で兄上の恋愛イベントの
「ならば良い。……だがもうじきお前と真木殿は、
影勝様の
こくこくと
「影勝様、ありがとうございます。信頼にお
深々と頭をさげると、影勝様はわかるかわからないかくらい目元を
上洛の話は初耳だけど、とりあえずそれは戻ってから兄上に聞こう。
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