第20話 大阪脱出2
「姫、
月明かりだけが頼りの夜道を
でも桜姫が頑張ってくれたおかげで、随分と早く、ここまで駆けてこられた。
すまないほむら、もう少しだ。
声に出さずに首元を軽く叩くと、ほむらは返事をするかのように低く
道すがら、桜姫が大阪城での顛末を ぽつりぽつりと話してくれた。
克頼様が姫の事を『神の子』だと。この嵐を鎮めると、皆の前で
剣神公の名を出してしまったので、上森も巻き込んだこと。
そして姫自身も『嵐を
それなら私はもうひとつ、姫が知らない『桜姫の神力』を知っている。
桜姫は『嵐を起こす』ことも出来る。
雪村ルートの最後でしか見られないけど。
……うん、嵐を起こすところは見たくないな。
その時は、私の死亡フラグがたっているってことだしね。
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遠くに見えていた
炎虎はスピードを落とさずに、城門へと
城の城門は開いていて、中は明るく
白い早馬の
「兼継殿!」
「雪村、無事だったか」
「はい、
私はぐったりとした姫を抱きかかえたまま、ほむらから降りた。
即座に周囲の家臣や侍女がわらわらと寄ってきて、手を貸してくれる。
しかし姫の手が、私の
「このまま私が運びます。部屋に案内を」
「御殿の
兼継殿は侍女に指示を出した後で、抱きかかえられた桜姫を
「兼継殿、何か」
「姫を置いたら、雪村は
どうしたのか
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戦国時代といっても、戦国時代後期の今は、
その代わりに使っている建物が、すぐ麓にあるこの『
今は影勝様の居住区だけど、以前は剣神公が住んでいて、人質だった頃の雪村もここに置かれていた。
だから『
大阪から越後までのこの数時間。
いつもは身体の奥に居る『雪村』が、私が戸惑っていると察した途端に『表』に出て、すべて対応してくれた。
雪村も『表』に出てこられるって事は、今の私はどういう状態なんだろう。
転生? それとも憑依なの??
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「あとは私どもにお任せ下さいませ」
私を追い出しにかかった年配の侍女に、私は必死で食い下がった。
だって知らない場所で一人にされたら、桜姫はきっとびっくりする。
「もう少し、せめて姫が目覚めるまでお
「雪村。貴方も
――子供の頃を知っている人たちは、これだからやりづらいんだ――
再び身体の奥に引っ込んでいた雪村の、そんな
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「富豊の方は美成が抑えたようだ。桜姫が上森の姫ならば、『
呼ばれていた
この世界でも大名家は『政略結婚』が当たり前だ。
結婚=同盟を結ぶようなものだから、利害関係と
秀好は成り上がりの女好きだったから、美人なら
上森の家格がお気に召さないとなると、桜姫を
それに『上森の姫を富豊家に輿入れさせる』となると、同じ五大老で筆頭代理の徳山が黙っていないだろう。余計な
五大老
それでも拠殿は「徳山の顔色を
「仕官の
「徳山、ですか?」
「ああ。徳山は「神子姫の守護を『武隈の一家臣』が
手元の手紙から視線を上げて、兼継殿が
言っている事が間違ってない分、
ようするに「『桜姫の守護』を、今後は徳山に
そして『徳山が桜姫に接触する』事を嫌った富豊が、現在姫を守護している真木を富豊に臣従させる事で防ぎにきた、って展開だ。
ごちゃごちゃしているけれど、『武隈の一家臣』が分不相応だと言うなら『富豊の家臣』にしちゃえばいいってこと。それなら徳山とも同列になる。
なるほどなー。こう言っては何だけど、拠殿が『真木の臣従』程度で、徳山の件を納得するなんておかしいと思ったよ。
いろいろな事が一気に起こって、頭がくらくらする。
とりあえず私は、もうひとつ気になっていた事を確認した。
「ここまで来る間に、早馬を何度も見かけました。あれは富豊の伝令ですか?」
「徳山だ。姫が信濃に
徳山殿が知りたいのは『関所を通った者』だからな。姫の所在とは聞いていない、そのまま出すさ。そう
私は途中で道を
いずれバレるにしろ、
同じ五大老なのに、影勝様に命令しているとこが気に入らないんだろう。兼継殿の表情がやたらと
どんだけ影勝様大好きなんだよ。影勝様が剣神公みたいに女の人だったら、兼継は絶対に攻略不可になっているよ……
「すまない、お前も疲れているだろう。今後は私の
おお、兼継殿の私邸ですってよ。
ゲーム中の桜姫でもお呼ばれしたことないよ。
本当は姫の側から離れるべきじゃないんだろうけど、そんな事を言ったらまた
とりあえず明日早くにまた行こう。
さすがと疲れ始めていた私は、兼継殿が桜姫を
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想像以上に立派だった兼継殿の私邸でおふとんにくるまって、目を閉じる。
ゲームとは違う予想外の展開にはなっているけれど、せっかくの越後
こんな事になったのも、愛染明王様の
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