第15話 美成相見と大阪の花見1

 

 花見の為に大阪入りした私たちは、いったん武隈邸たけくまていに入った。

 ここは先代のお館様が建築された、豪奢ごうしゃなお邸だ。


 そして翌日。私は桜姫を連れて上森邸を訪れた。

 今回の花見は、越後から影勝かげかつ様が来ているはずだから、桜姫を紹介しなきゃ。

 

 義兄になるのに、まだ桜姫に会わせてない。

 美成よりも、まずはこっちだよ。


 ちなみに影勝様は攻略対象じゃないので、ゲームでこういうイベントはない。

 


 ***************                *************** 


「影勝様、お久し振りにございます、雪村です。先達せんだっては上森家に断りもなく桜姫を連れ出した事、平に伏してお詫び申し上げます」


 深々と頭を下げると、頭上から重厚な声がおりてくる。


「よい。兼継から聞いている。……息災だったか」

「はい」

 

 怒っていない様子にほっとして顔を上げると、昔と変わらない無表情な影勝様が こちらを見ている。

 雪村も影勝様と会うのは、越後を出て以来だ。

 私は改めて、斜め後ろでちょんと座っている桜姫を紹介した。


 桜姫は影勝様の義理の妹になるけれど、影勝様は剣神公の甥だから、実際の間柄は従兄妹いとこだ。

 無口・無表情な人で怖がられる事が多いけど、子供には優しかったらしく、雪村が再会を喜んでいる気配がする。

 桜姫はどうかなと様子をうかがうと、こちらはこっそり欠伸あくびみ殺していた。


 影勝様はこわくないんだ? 

 先日の右ストレートの件といい、桜姫のキャラクターがつかめなくなってきたな。


 ちなみに現世の日本史では、謙信の甥で養子の上杉景勝うえすぎかげかつと信玄の娘の菊姫きくひめが結婚している。

 桜姫も一応『信厳の娘』だけど、こっちの世界では妹かぁ。

  

 兄妹の挨拶イベントはクリアした。

 あとここで済まさなければならないのは、『美成との出会いイベント』だ。



 ***************                *************** 


 花見の宴は明日に迫っている。

 準備に忙殺されている美成に何とか時間を作って貰い、私は桜姫を連れて大阪城へと向かった。


 ゲームでの美成出会いイベントは『初めて大阪に来た時に発生』だ。

 どんなに迷惑なタイミングであろうと、ゴリ押しするしかない。


 だってこれを逃すと、攻略対象からはずれるんだよ? 

 せめて宴終了まで待ちたいけれど、今後は「神の子」発言のせいで、速攻で甲斐に戻る羽目になる。今日中に済ませないとフラグが折れるのです。


 美成は友人以外の人間、特に初対面の女性には 物凄く冷たいキャラだから、姫がショックを受けないといいな。


 お土産の饅頭まんじゅうを未練がましく見ている桜姫を見遣みやり、私は小さく吐息をついた。





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