第14話 これが私の生きる道 ~桜姫視点~
俺の努力がようやく実り、チワワ好きの
口約束だが、忘れたとは言わせない、絶対に実行させる……って、あれ……?
「今度、越後に行ってみませんか? こちらの世界には『
あの時、雪村は確かにそう言った。
『こちらの世界には』?
俺はやっと、あの時に感じた違和感の正体に思い至った。
そうだ、それだ。
まるで俺が『この世界』を知らないことを、知っているかのような言い方。
……何で雪村がそれを知っている?
わかんねぇ。
デートだと浮かれていた気持ちが、じわじわと萎んでいく。
雪村のやつ、俺が何かヤバいことをやったら抹殺する任務を請け負った、タイムパトロール隊みたいな組織だったらどうしよう……
…………。
うん、無いわ。
俺は俺自身の、あんぽんたんな妄想を一蹴した。
*************** ***************
ゲームは 暇を見て進めている。
今のところ『兼継エンド』だけ見たけど、あいつ、
俺を殺す役割なら、間違いなくあいつだ。
「エンディングで天に
初対面の時から、奴は「俺はどこで選択を間違えたんだ?」って
いや、いいんですよ別に。俺だって兼継狙いじゃないし?
…………。
それはともかく。
『夏桜』うんぬんの件は俺の聞き違いか、雪村の言い間違いだろう、たぶん。
+++
そんな感じでのほほんと姫生活を満喫していたら、
ゲームでも発生するこの『大阪の花見』は、神子姫の存在が大々的に認識される、桜姫デビュー! みたいなイベントだ。悪い意味で。
というのも、
まあ、別に「証拠をみせろ」と言われる訳じゃないし、ただ桜姫が有名になるだけのイベントだ。
だが俺は、花見なんてどうでもいい。
確かこのタイミングで
何が何でも、会いに連れて行って貰わねばならない。
*************** ***************
「雪村、似合う?」
俺は俺自身の女子力を全開にして くるりと回ってみせた。
克頼の用意した着物はやたら豪奢で、はしゃいで回るには少々、重い。
ちなみに頭に被った
ほらあ! 俺って一目見ただけで、男をメロメロにさせそうな美少女だよな?
なのに あの攻略対象ども、本当にどうなってんだよ。
とくにあのチワワ好き。
「ぼくがかんがえたさいきょうのヒロイン」全開で、あらん限りのあざと可愛さを駆使しても、
実際、この男どもを狂わせそうな
こいつ、どうやったら攻略できるんだ?
幼馴染だから「桜姫を恋愛対象に見てない」設定か?
それとも桜姫は、どっちかっつーとロリっこだから、「まだ早い」と大人になるのを待っているパターンか?
ならば『大人の女』をご所望か?
ちょいと『女』を意識させるようなイベントをぶち込むべき? と胸に
その歳で枯れるなよ、もっとグイグイ来い!!
そんな感じで、こいつをオトす事ばかり考えているせいだろうか。
何かキラキラして見えるなー……花嫁のヴェール越しって、こんな風に見えるんだろうか。ぼかして補正をかける、対結婚式用イケメンフィルター……?
あ、そうか。現世で俺が結婚式を挙げたとしても、ヴェールを被る予定はない。
これも満喫しておくべきイベントだな!
俺は改めて雪村を見上げた。
「ね、雪村? これって結婚式みたいじゃない?」
上背があるし、いざって時は行動が男前だから意識してなかったけれど、穏やかな表情していると女みたいに見えるな、こいつ。
俺は男目線で見るべきなのか女目線が正しいのか、自分でもよく解らない。
そんな事を考えながらぼんやり眺めていると、少し不思議そうな表情で俺を見た雪村が「でもこれでは、姫の可愛らしいお顔が見えません」とか何とか言いながら、突然、顔に掛かっていた
「女みたい」なんて思っていた雪村の顔が、突然、至近距離でクリアになる。
突然の出来事に動揺した俺は、思わず雪村の脇腹に突きを入れてしまった。
やばい、俺、子供の頃は空手やっていたのに!
慌てすぎてうっかり手が出た!
ぐらりと沈みかけた雪村を慌てて支えたけど、衝撃に驚いただけみたいで 意識は普通にある。
女の細腕での突きは、さほどではなかったみたいだ。良かった。
良かったんだが……
何でこいつ、殴られたのに嬉しそうな顔をしているんだ?
何かよからぬ
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