二〇二×年。日本で突如巻き起こったサウナブームは、熱狂と共にサウナの競技化をもたらした。中学時代、スポーツサウナ「GTS」の頂点に立ちながらも勝ち負けを嫌い、サウナを去った福良大海は、謎の美少女女子高生・海城蒼に導かれ、高校で再びGTSの舞台へと舞い戻る。
「GTS」は、サウナ、水風呂、休憩までの正確性を競う競技です。サウナの熱波に耐える忍耐力、時間を正確に刻む時間感覚、周囲の重圧を跳ね除ける集中力が問われる過酷なスポーツなのです。
作中でも登場人物が口にしているように、実にバカバカしい競技です。正直、私もそう思います。バカげているのを自覚しながらも主人公の大海や、GTS部の部員が真剣にGTSに挑むのは、サウナがもたらす"ととのい"を得るため。
サウナで浴びた高熱を水風呂で一気に冷やし、ベンチで身体と心を休める。一連のサウナルーティンでもたらされる悟りの境地、それが"ととのい"なのです。
誰よりも深く、誰よりも自由に。そのために運動部ばりのトレーニングを繰り広げる大海とGTS部の情熱を目の当たりにすれば、ただサウナに入るだけとは言えません。これはもうスポ根といっても過言ではないでしょう。
どんなにバカげていようが本気でサウナの帝王を目指す高校生たち。こんな熱い青春もあっていい。
(「暑い夏こそ水分補給」4選/文=愛咲優詩)