第3話 ”漆黒”とMOEの出会い。

「ふぅ~」


 部活に入っていない俺は授業が終わるとともに急いで家にネット記事を書き上げ、すぐにUPする。

 いつも数時間かかるのでちょうど夕食の時間になりやすい。

でも今回は夕食を取ることを後回しにし、俺は目覚まし時計に三時間後にアラームを鳴らすようにして寝ることにした。


 



――――


私こと白神細華は忙しい存在である。学生の身分ながら覆面の人気上昇中の歌い手MOEとしてそして№1ヒーローと言われる”天使”ミカールとして日々期待をかけられた生活を送っている。

 そして私は今、ヒーロー会議に出ている。

ヒーロー会議と言っても、今回標的である”暴虐”についての確認である。


 ”暴虐”ことヴァーク‥無差別攻撃を繰り返す。目的は不明。被害ランクは4である。攻撃の仕方として物体を浮かし上げて攻撃するため、重力か念力系だと思われる。見た目は推定18メートルで顔のところは蛇で男性の上半身、下半身はムカデのキメラである。


 被害ランクとは2<3<4<5<5a<5b<5cと7段階となっている警戒ランクのことだ。


  会議室から出ていく。”暴虐”とは本当にこんなものなのかと疑問に思いながら、”暴虐”と戦うために準備する。


「ミカール様」


 話しかけてきたのは同じヒーロー会議を受けていたダーテン君。


「なんだい?」


「なんでミカール様はそこまで”暴虐”に警戒するんですか?ほかの人たちは余裕そうですけど」


「それはね、勘がつげているんだよ、まぁ杞憂であればいいんだけどね」


「へぇー、すみません、それだけです、では」


 ダーテン君はすぐに去ってしまう。


「...」


 これも気のせいであればいいのだな。





”漆黒”それはMOEの味方である。”漆黒”はMOEのライブがある度にヴィランが襲ってこないか警戒して対処してくれる。なぜそうなったか、今でも覚えている。


――――


「今回もMOEのライブ来てくれてありがとー-!!初めての人も楽しんでいってください」


 前と同じようにライブしていた。だからこのままいつも通りにライブが終わると思っていた。しかしライブ終盤、


「きゃー-!」


 悲鳴が上がった。そのところに目をやるとヴィランが観客を襲っていた。あまりも悲惨さに呆然としてしまった。その時まだヒーローの駆け出しであった私にはヒーローになって戦うことが思いつかなかった。

 そしてヴィランは”濃霧”ことジャックであった。このヴィランは当時ヴィラン最強の一角であるとされ、ヒーローからも恐れられていた。

 能力は濃霧を自身の周りに発生させること。そして自身が持つ鉄の大きな爪で人の体を貫通させるのだ。”濃霧”のことはその当時あまりにも有名だった。だから観客は慌てふためく。そして出口に逃げようとするが、そこには”濃霧”が。

 濃霧が一部だけはれると血が流れていた。


「逃げなきゃ」


 私は関係者の出口から外に出ようとしたが、足を止める。

そう濃霧が出口付近でも発生していたのだ。

 ”濃霧”がいるところに濃霧ありと言われているので、濃霧を越えて外に出ることに危険性があった。だからステージに戻り、来客者用の出口から脱出を目指そうとしたが...


「えっ」


 そう出口のところが死体の山に積み上げられていたのだ。

思わず吐きそうになるがギリギリのところで押しとどめて、一瞬どうするか止まった瞬間だった。

 その瞬間に濃霧が私を囲むように発生した。


「あっ」


 正直、死ぬことにしか頭の中になかった。

ふとして後ろに気配を感じた。でも振り向かなかった。だってわかっているじゃないか?死ぬことが確定しているの。

 でもそんなことが来ることがなかった。だって濃霧が一瞬にしてはれたのである。

その代わりに、空から黒い羽がパラパラと落ちてくる。


「さすがに推しに手を出すことは許さん」


 と後ろから声が聞こえて振り向くと、”濃霧”の頭と体が離れていた、そしてそのすぐ横に顔が黒いモヤにかかって見えない黒い翼が生えた人?がいた。


「MOE様、これからも歌い手の仕事頑張ってください、応援しています」


 そう言った瞬間に関係者の入り口からヒーローがやってくる。


「大丈夫かぁ!」


 とヒーローが近づいてくるとまた空から黒い羽が舞う。

ヒーローとともに空を見上げるとさっきのヴィランが空中に羽ばたいていた。


「俺の名前は”漆黒”こと黒化こっかだ、俺の推しに手を出そうとした”濃霧”はその死体だ、それでは」


 ”漆黒”は飛び立っていった。


これがMOEと”漆黒”の出会いだ。

 ここでようやく”漆黒”が確認されたのであった。



 

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”漆黒”と言われる少年、敵である少女を助ける。 隴前 @rousama

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