第42話 お風呂上がりの神奈
家に帰り、エコバッグの中から今日買った具材を出す。一部は冷蔵庫に入れ、今から使うものはキッチンに置いた。
「じゃあ、お風呂入ってくる」
「分かった。その間は絶対近寄らない」
「ふふっ。錦小路くんがそういう人じゃないっていうのは、分かってるから」
それだけを言って、神奈は脱衣所に消えた。それにしてもなんだか、彼女の笑いのツボって結構謎だな……
無表情のわりに、変なことで急に笑ったりするし。
「まっ、そんなことより、チャーハン作るか」
俺は買ったばかりのエプロンを身につけた。
今回作るのは、おそらく一般的だろうと思われるチャーハンだ。一般的なチャーハンってものがどんななのか分からないけど、とりあえずみんながチャーハン、と聞いた時に連想するようなやつ。
前世でも自炊がめんどくさい時には何度か作ったことがある。
「神奈、どれくらいで風呂あがってくるかな……」
体も冷えてるだろうし、女の子だから時間もかかるだろうし、一時間くらい? それは長すぎ?
「先に切ったりとかだけしておこうか。炒めるのにはそんなに時間かからないし」
神奈が上がってから炒めれば、ちょうど出来立てを食べることができる。
今の時間を確認して、具材だけを切っておく。その準備が終わった頃だった。
ガラッと扉を開く音が聞こえる。神奈が風呂に入ってから10分くらい。もう上がってきたらしい。
台所にいると、しばらくしてから神奈がリビングにやってきた。俺の渡した服を着ている。彼女は身長が低いからか、俺のトレーナーはギリギリワンピースみたいになっていたし……と、考えたところで愕然とする。
「し、下は……!?」
「ゆるゆるだったから置いてきた」
「で、でもだいぶ見えてるじゃん!?」
「パンツ見えてないからいい」
「それはそうだけどさぁ……!」
下着は確かに見えていない。見えていないが、かなり際どいところにトレーナーのすそがある。それでなくとも、白くてツヤツヤした太もものほとんどが露になっていた。
……い、いやぁ、これはちょっと……
お風呂上りでいい匂いもするし、なんだか全体に湿っていて色っぽさに磨きがかかっている。
要するに、一言で言うとかなりエロい。
「ベルトいる? そしたらウエスト締めれるから短パンも穿けるはず」
「いらない」
「え、あ、あぁ、そう。分かった。でもだいぶかなり見えそうだから気を付けて」
こくり、と頷く。それからつい、とフライパンの中を覗き込んだ。
「チャーハン?」
「そう。リクエストだったから作ってみた」
「いいにおいする」
「それなら良かったよ。チャーハン作るの久しぶりだったからさ。最近鍋ばっかりだったし」
「もうすぐ夏なのに?」
「まぁ、自炊めんどくさいとなんとなく鍋が増えるんだよな」
とは言いつつ、最近は勉強会もあってちょっと疲れてたし、お惣菜買うほうが多かったけど。
「ありがとう、錦小路くん」
「別にお礼はいいって。ほっとけなかった俺のおせっかいだからさ」
「……うん」
しばらくしてから、神奈は頷いた。
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