第41話 コンビニまで

「まず風呂に入ろうか。あっ、脱衣所と風呂はそこにあるから。トイレはその向かい側」


 結局相合傘をして、俺の家まで帰った。

 冷え切っているであろう彼女を簡単に案内しつつ、着られそうな服を探しにいく。うーん、このトレーナーくらいは着れそう……かな。下はなぜかあったジャージの短パンでいい、か。


「濡れた服、どこに置けばいい?」

「うーん。干しといた方が良さそうだよな。部屋干ししとくから、風呂から上がった時に渡してくれ。あっ、でも下着とかどうしよう。今からだけど、コンビニに買いに行くか? 同じの穿くの嫌だろ」

「……うん。そうする」


 その言葉に、神奈に制服を着替えさせた後、俺たちはもう一度外に出た。ここはわりかし都会だから、コンビニは徒歩5分圏内にある。


「そういえば、聞かないの? 事情」


 ふと神奈が呟いた。横目で見てみるけど、髪が顔にかかってるせいで、表情が分からない。


「まぁ、話したくないことの方が多いだろうし」

「そっか……じゃあ、なんで泊めてくれたの?」

「普通……あんな顔で公園に、雨の中、1人きり。そんな女の子がいたらほっておかないと思うけどな……いい意味でも悪い意味でも」

「……そうだよね」


 神奈は黙ってしまう。

 そしてまた、一言も発さなくなってしまった。


 




「あっ、そうだ」


 ふとあることを思い出して呟くと、神奈がそっとこっちを見る。


「どうしたの」

「今日のご飯どうしようかなって思って。ほら、うち一人分しか材料がないからさ~。もしそこまで寒くなかったりしたら、スーパー寄ってもいい? コンビニにまた戻るのも面倒だし」

「うん。わたしのことは気にしないで」

「分かった。じゃあ行くか。すぐそこだし」


 俺の家、立地条件だけはいいからな。おかげさまで、こんな状況でも食料に困ることはない。

 お惣菜でも買って帰った方がいいのかもしれないけど、神奈の顔を見る限り、ちゃんと人の作ったご飯を出来立ての状態で食べてほしいと思った。


「佐々木〜。今日の晩御飯何がいい?」

「なんでもいい」

「そう言われてもなぁ〜。ほら、好きな食べ物ない? 俺作れるか分からないけど」

「好きな食べ物……」

「うん」

「好き、かは分からないけど、昔お母さんが作ってくれたチャーハンは美味しかった」

「チャーハン、かぁ。具材は普通のやつ?」

「多分。有り合わせで作ったものだったと思うけど……美味しかった」

「そっか。チャーハンなら俺作れるわ」

「うん」


 神奈は頷くだけだ。

 どんな事情があったかは知らんが、とにかく落ち込んでいる様子。

 少しでもあの明るさを取り戻して欲しいなぁ、と、ゲームでヤンデレ化した神奈に思いを馳せつつ、俺は神奈と一緒にスーパーの中に入った。

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