第39話 波乱の出来事

「それでは、さようなら。今日は本当に楽しかったです」

「こちらこそありがとう。楽しかった」


 綾芽を最寄り駅まで送って、そこで別れた。あの調子のままウィンドウショッピングは終了し、綾芽とは友達と言えどちょっと距離の近いままでいて……でもいい感じだったと思う。


 バイバイ、と手を振る綾芽に俺も振り返し、帰路につく。

 そういえば、ショッピングモールに行く前、神奈に似た子を見たよなぁ。さすがにあんなところにいるわけないし。あの時声かけなくてよかった。めっちゃ恥ずかしいことするところだった。

 なんて呑気に考えていたのを後悔したのは、翌日のことだった。




「なぁ錦小路、ヤバいって!」

「どうしたんだよ」

「はぁ!? お前また掲示板見てないの? すんごい騒ぎだっただろ」

「ごめん、普段から見てない……」

「ほら、携帯貸すから見てみろよ。ここ!」


 綾芽と遊んだ翌日。登校してすぐ慌てた様子の成田に声をかけられる。うーん、強烈なデジャヴ。

 にしても、さすがに前世で掲示板を見る習慣はなかったからなぁ。ここの世界では、掲示板が学校の情報の最先端らしいけど。


「えーっと、1年5組の佐々木 神奈、援助交際……?」


 そのまま目の前にある文字を読み上げる。が、頭が混乱して、何も入ってこない。ちょっと待って。ほんとにどういうことだ? 


「ほら。ここに写真あるじゃん。これ、たぶんうちのクラスの誰かが撮ったんだろうな」


 成田が声を低くして言う。周りの人も、同じようにして喋っていた。ほとんどが神奈に対する話題だろうな。

 それを確認してから、手元に見せられた携帯を覗き込んだ。

 成田の言葉通り、そこにはラブホ街を男の人と2人で歩く神奈が写っている。

 そして肝心の本人は珍しくまだ学校に来ていないらしい。神奈は情報通だし、既に知っている可能性もある。となれば、今日は学校に来ないかも。


 ……あと、やっぱり昨日ラブホ街で見た人は神奈だったんだ。

 やっぱり、声をかけた方が良かった。

 後悔していると、ガラッと勢いよく教室のドアが開いた。


「おっはよ~、みんな♪」


 その声に、みんなが振り向く。


「えっ、あれ、どうしたの? 何か大注目されてる感じ?」


 当の本人はキョトンとしている。しかもいつも通り、明るい感じだ。もしかしてこの雰囲気だと知らないのか?


「大注目っていうか、あの、神奈、聞きたいことがあるんだけど。……これ、神奈じゃないよね」

「えー、どれどれー?」


 スマホの画面を見た神奈がぴしりと固まる。


「どう見ても、神奈だよね」

「えー、これわたしかなぁ」

「このかばんのアレンジしてる人、神奈しかいないよね?」

「でも、わたし、こんな覚え」

「そっか。じゃあいいや」


 神奈から、女友達が離れる。なんというか、無視したりはしていないけど、普通に話しかけることはない。1つ壁が挟まっているというか、距離がはっきり示されている感じ。

 これは、なんというか……


 神奈の方をもう一度見たら、取り繕ったような笑顔のまま固まっていた。






☆☆☆あとがき☆☆☆


急にシリアスかつかなり波乱な展開になりました。一応スッキリ終わる回にはなっているので、それに期待しつつお読みいただけると嬉しいです。

また、いつも読んでいただいてありがとうございます。

遅くなりましたが、夢だった☆2000も達成する事が出来ました。本当にありがとうございます!!

この作品を何かしらの形で評価してくださること、本当に感謝し、また嬉しく思っています。

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