第38話 ウィンドウショッピング

「次、どうしましょう」


 ゲームセンターで気になるものを一通り取ったあと、俺たちはショッピングモールの中を歩いていた。ゲームセンターはショッピングモールの中にあるものだったから、他に色んな場所があるとは言えど……

 こういう時、何したらいいんだろう。前世での経験不足を呪う。


「どうする? とりあえずぶらぶらするとか。映画も今はやってないし、次の上映時間まで待ってたらかなり遅くなるしなぁ」

「そうですねぇ……というかやっぱりここはあれですね! 遊んだ後のショッピング!」

「そっ……か! 確かに!」


 綾芽が言うならそうなのかもしれない。それに、こうやって決めてくれるのありがたいな。


「とはいえもちろん男性とショッピングをするなんて初めての経験です。弟とは覆面ライダーとか、クロワッサンマンとかのおもちゃを買いに来てるのが大抵なので」

「それは……さすがに、うん」

「なので、うーん、どうしましょう。とりあえずウィンドウショッピング、ということでぶらぶらしますか?」

「そうだね。そうしよう」


 2人でまた歩き始める。平日ということで、やっぱりそこまで人はいない。あと、周りに同じ学校の生徒がいなそうなのも安心だった。


「錦小路さんは何が好き、とかありますか?」

「俺は雑貨とか見たり、とかかな。花野井さんは?」

「私はやっぱり化粧品見たりとか、ちょっとした雑貨見たりとか、ですかね」

「やっぱ化粧品とかだよなぁ」

「そうですね。周りの女の子とかわりとお化粧してくるので、私も合わせてって感じで」

「あ~、なるほどな」


 女子はそういうの気遣わないといけないのか。


「あっ、あの雑貨屋さん見てもいいですか。可愛い」


 ふと綾芽が足を止める。

 猫を模したキャラクターグッズが置いてある店だった。確かに可愛いし、流行ってた気もする。さっきのゲームセンターで取ったマスコットもこのキャラクターだったしな。


「うわぁ、本当に可愛い。私このキャラクター好きなんです」

「そうなんだ。可愛いよね、これ」

「はい! あっ、このシャーペンのシリーズ集めてたし、こっちのキーホルダーも可愛い!」


 はしゃぐ声を上げる綾芽。


「う~ん。本当に可愛いです。次来たら絶対に買います」

「今日買わなくていいの?」

「はい。今日は迷いすぎて決められません」

「そっか、じゃあ、次の楽しみだな」

「はい! あっ、そうだ……」

「どうしたの?」

「次、また一緒に遊んでくれますか?」


 キャラクターグッズを眺めながら、ふと綾芽が呟く。その真剣な声の調子に、少し引っかかりがあった。でもそれは無視して答える。

 

「それはもちろん」

「安心です。というか今言質取りましたからね! 約束ですよ」

「うん。分かった」

「やった。錦小路さんが友達になってくれて嬉しいです。一緒にこうやっているの、本当に楽しいので」

「そっか」

「はい!」


 にっこり笑って、綾芽はもう一度雑貨に向き合った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る