第5話 ビオランテ
防衛隊に入隊すると専用の寮で生活することになる。
その中でも男女で寮が別れている。
女性の防衛隊の方に連れられて、試験会場のすぐ近くにある寮へとやってきた。
色褪せた外壁には所々亀裂が走っており、一部ツタが張っている。
窓も曇っており年季を感じる。
……古臭い建物だ……。
「
望んで入った防衛隊。
住むところが汚かろうが、2人部屋だろうが我慢する。
……どんなごつい女が住んでるんだろう……。
「入るぞ!
――防衛隊がドアを開けると、そこには小柄な美少女がいた。
小さな顔に大きな目、ゆるふわカールがかかった髪は淡いオリーブ系の色をしている。
念入りに髪をといているのであろう、とても綺麗であった。
美少女はキラキラ光る目で私の元へ駆け寄ると、いきなり両手を握ってきた。
「
……は?
「女の人で採用されるのって珍しいですよ!それも、長官にあんな啖呵切ってまで合格されるなんて!……痺れましたわ!」
ごつい女を想像してたのに、こんな可愛い子が防衛隊……?
握ってきた手はとても柔らかい。
小動物のような仕草。
……すごく可愛い……。
「おぉ?早速有名人だな
……思ってたのと違って、少し拍子抜けしたが、まぁ良いか……。
「私は
……なんで手を握ったまま自己紹介してんだ……?
……中々手を離してくれない。
「……私は
「あら? 年下だったのですね? それはそれで悪くないですわね……。
……可愛いけど、なんか気持ち悪いぞこいつ……。
……弱そうだし……。
「ちょっと気持ち悪いぞ、あんた……。女子高生らしいが、あんたみたいなのがよく合格出来たな防衛隊に?」
私からの問いかけに、
「私はこう見えても、合気道の達人ですのよ。自分で言うのも恥ずかしいですが。これからよろしくお願いいたします。」
◇
入隊した次の日。
防衛隊の訓練の一つである組手のため、試験会場であった体育館へ連れてこられた。
「これから組手をしてもらう。最近は小型の怪獣の目撃例も報告されている。相手を怪獣だと思って望むように!」
相手が誰だろうと容赦しない。怪獣だと思ってぶっ飛ばしてやる。
「手加減しねぇから気をつけろよ!」
――右足を前に出し、腰を落として構える。
「どうぞ。よろしくお願いいたします」
――初めから全力で行く。
走ってきたそのままの勢いで左のジャブを繰り出す、というフェイントを入れる。
左手に気を取られている隙に、右から後頭部に向けて強烈な一撃をお見舞する。
このやり方で、大体のやつは一発でノックアウトしてきた。
「ふふふ。魂胆が見え見えですね。さくらさん」
――避けられて空を切るパンチ。
――
――私は少し体制を崩した。
「相手の力量を見誤ってはいけませんよ?」
掴まれた腕を支点として、そのまま身体が一回転した。
――ドン!
気付くと天井が見えていた――。
「気持ちだけで勝てるようであれば苦労はいりません。まだまだ甘いですわよ?」
……くっそ。上からものを言いやがって……。
……こいつ、強い……。
「合気道は、相手が暴力を振るってきた時だけ、その力をそのまま返す。暴力を嫌うあなたにぴったりと思うのですが、いかがですか?稽古してさしあげますわよ?」
――なるほど。
……それは私の理想とする正義なのかもしれない……。
暴力を振るう奴だけ、
「……
私の問いかけに、
「……私の正義なんてたかが知れていますわ。……人間一人だけで出来ることなんて限られています……」
可愛い女子高生が青春を投げ打ってまで防衛隊に入っているんだ。
過去に何かあったのだろう……。
「……大切なものを守ることですかね……」
――
「もう!私の過去には触れないで下さい。
元の可愛い顔に戻った。
……笑い顔が可愛いのは反則だな……。
「何がエッチだよ! 気になるだろ! 教えろよ!」
倒された体制を立て直して、立ち上がる。
「うふふ。気になるなら、まずは貴女からさらけ出すのが筋ですわよ?」
「トレーニングの後って、汗を流すために共同風呂へ入るものですの。……うふふ。そのスレンダーな身体をとくと見せてくださいませ?」
……おいおい、どっちがエッチだよ。
「ふふ、大丈夫です。私は男も女も、どちらもイけるタイプですわよ?自分で言うのも恥ずかしいですが。」
「恥ずかしいなら言うなよ。……私は男の方が好きだ……。」
……言葉にするって恥ずかしいな……。
……
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