第3話 ラドン
最近は気分が沈んでなくても屋上で弁当を食う。
昼過ぎ、いつものように弁当を持って屋上へ集まる。
日に日に屋上に吹く風が暑くなるのが感じられる。
今日も良く晴れている。
「なんで
綺麗な箸の持ち方で几帳面にご飯を切り分けながら食べる。
ご飯とおかずの配分に気をつけているのだろう。
やることが細かい。
「……うるせぇな。別にどこで食っても良いだろ」
本当は男子とご飯食べるなんて恥ずかしくて、人前に出られないって理由だけど……。
……あと、2人きりで弁当食べるの気に入ってなんかねぇし……。
「まぁ、俺くらいしか友達が居ないお前らしいけどな」
綺麗な顔してハッキリとものを言うんだよなコイツ……。
眼鏡ぶっ壊してやろうか……。
あと、いちいち
2人きりで一緒に飯食ってるからって、別に勘違いしねえし……。
……バカ。
――その時、地面が大きく揺れた。
「ん、なんだ地震か?揺れがデカいぞ……」
「ギャオーーーー!!!」
とんでもなく大きな
咄嗟に耳を塞ぐが、塞いだ手を貫通して叫び声が鼓膜を叩いてくる。
「くっ……。うっせぇっ!! なんだ!!」
晴れていた日差しが何かに遮られ、辺りは一瞬のうちに暗くなった。
暗くなった屋上――。
不穏な、冷たい視線を背後に感じる……。
……背筋に寒気が走った。
太陽の光が遮られた先に何かがいる――。
屋上の高さをも超えるほど大きな何か――。
恐怖を抱きながらも、顔をあげる。
――目の前には、大きな怪獣が両手を広げて立っていた。
怪獣の両腕には翼竜のような翼がついており、腕から足へ綺麗に開いている。
屋上の高さは怪獣にとってちょうど腹の位置にあり、怪獣の顔の位置は遥か上の方にある。
遠くに見える怪獣の顔を確認すると、鋭いクチバシが着いているのが見えた。
クチバシの横に怪獣の目がある……。
怪獣の目は鋭くこちらを睨んでいた――。
「……ラドン」
昔テレビで見たことがある。
怪獣が暴れ回る特撮映画だ。
そんな特撮映画の中の怪獣が、現実の世界に出てきた。
――子供の頃の記憶が呼び覚まされる。
10年程前に大怪獣が東京を襲った。
あの惨劇は、子供であっても心の中に深く刻み込まれている――。
怪獣は防衛隊によって倒されたと報道があった。
こいつがここにいるのはおかしい……。
「……おい、
驚き戸惑っている私の手を、
こちらを向いているラドンは私達の動きに気づいたのか、上げていた腕を振り下ろした。
ラドンの手は屋上のちょうど真上。
近づいてくるラドンの腕から目をそらさずに見ることが出来なかった。
……また、恐怖に負けた。
◇
「――しっかりしろ。大丈夫か?」
……何か声が聞こえる。
……私はいつ寝てたんだ。授業中だったか……。
ちょっと……、勝手に私の身体を触るな……。
ぶっ殺すぞ……。
――ゆっくりと目を開けてみる。
目の前には、男性の顔があった。
レスキュー隊なのか、オレンジ色の繋ぎの男性に抱きかかえられていた。
……眩しい。
……くっそ、なんだってんだ。
……段々と目が慣れてきた。
――気付くと、辺りは瓦礫で溢れていた。
「……なんだこの景色……」
……そうか。
……
瓦礫の下敷きになった
咄嗟に
「……くっ、
身体どころか、首を回すだけでも激痛が走る。
「あそこに人がいるだろ、あいつを助けてくれ……!」
大声が出ない。
かろうじて出せる精一杯の声でレスキュー隊に訴えかける。
「……あの子はもうダメかもしれない」
何言ってるんだ……。
目の前にいるだろ。
生きてるのが見えないのか。
レスキュー隊だろ、目の前の命を救えよ!
なんでもいいから早くやれよ!
バカか!お前ら全員バカか!!
やれよ!!
早くやれよ!!助けろよ!!
「見殺しにするのか! 嫌だ! 早く助けろ! あいつを助けろ! あいつは私の……」
急に叫んだせいか、そこで気を失ってしまった……。
……そこからの記憶は無い。
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