第4話 帝都の悪魔竜王

「ご主人様ぁっこれ以上はぁぁこれ以上はああぁっぁあ!」

「我はまだ満足していないぞ。もっと楽しませて見せろ!!」


 性奴隷とその主は毎日のように夜の営みを行っていた。その主の名はドレイ・スキー。莫大な富に物を言わせ何人もの性奴隷を手に入れていた。細身の長身エルフから低身長ロリ巨乳のドワーフまで、彼の好みは幅が広い。中には体の一部が魔物と化している獣娘も交ざっていた。つまりは雑食のやべえ奴ということだ。そんな性奴隷たちを彼は平等に可愛がっていた。


 彼が住んでいるのは奴隷が一般化されている街、帝都ドンネシア。そこでは日夜奴隷の商取引が行われており、性奴隷から何らかのスキルに特化した特別な奴隷まで幅広く取引されていた。


 そんな中、あるオークションにて一人の少女が取引された瞬間にそのオークション会場が焼失したと言う事件が起きたのだった。犯人の目星はついておらず、また同様の事件が他のオークション会場でも発生し続けたことから帝都は混乱を極めたのだった。


 一方そのころ拓夢と理沙の二人は今日もハッスルマッスル大運動会、熱い夜を過ごしていた。のんきな二人は何もしらないまま、帝都へと足を運ぶこととなる。




「それで、この街に来たのには何か理由があるの?」

「ああ。ここには悪魔竜王の逸話があるんだ」

「随分と物騒な名前だね」


 悪魔竜王。それはかつて魔族と龍種の混合生物を率いて魔王とドンパチやったヤベー存在である。しかし魔王には勝てず、呪いをかけられ人の少女に姿を変えられてしまったという逸話だ。そんな悪魔竜王はこの帝都にてひっそりと生き延びているという噂があった。その噂を聞いた拓夢は悪魔竜王の呪いを解いて世界滅茶苦茶作戦に動員する気だったのだ。


「とは言え噂でしか無いからな。天使の時は伝承に残っていたから良かったが、今回は完全に眉唾物だ。本当に悪魔竜王が生きているのかもわからないからな」


 拓夢と理沙の二人が帝都の中を散策していた時、近くのオークション会場から爆発音が聞こえたのだった。


「うおっ!?」

「爆発のようだが……近いな。もしかしたら敵対する者が来るかもしれない」

「ああ、警戒しておこうか」


 警戒しながら爆発の聞こえた方へと進んでいく二人。その時だった。


「そこどいてぇっ!」

「おぉっと」


 拓夢に向かって前から全速力で少女が突っ込んできたのだ。ただ普通の少女なら拓夢の感知スキルに引っかかるはずだった。そうならないという事はこの少女が相応の隠密スキルを持っているということに他ならない。


「は、放せ! 私はこんなところでは終われないんだ!」

「まあ待てって。色々と聞きたいことがあるんだ。……とりあえず人の少ない所に行くか?」


 拓夢達は裏路地に入り、人気のない場所まで移動した。


「で、単刀直入に聞くが……君は何者なんだ? 俺は感知スキルを持っている。なのに君はそれに引っかからなかった。つまり君はそれなりの隠密スキルを持っているということになるんだ。とてもじゃないがその年で持つようなスキルでは無いよ」

「……黙秘させてもらおう」

「うーん……仕方ない」

「んなっ!?」


 拓夢は理沙に少女を拘束するように促し、自身は少女の目の前へと移動した。そして……。


「ひぃっあはははっぁや、やめ……はぐっううぅひっ」

「さあ答えろ。さもなければこのままくすぐり続けてやる」


 子どもを脅すのに暴力などいらないと考えた拓夢は、少女をひたすらにくすぐり続けた。


「だ、誰が答えるもんかっあぐっううぅぅっぅふぎっぃぃっぃ」

「さあ、君の全てを答えろ」

「や、やめろっんぅっぁああっっぁぁはぁっっぐっんぅぅ」

「な、なあ……この子、だんだん反応がおかしくなっていっていないか?」


 理沙の言った通り、少女はいつの間にか恍惚の表情を浮かべており、細い足をしきりに捩っていた。まるでその様子は女性がオーガズムに達した時の様だった。


「あ、やべ」

「随分とSなんだね拓夢は……でもそれが良い」

「とりあえず落ち着くまで待つか」


 理沙のその言葉を聞いたのか聞いていないのかはわからないが、拓夢は少女を解放ししばらく休ませることにした。


「ふぅ……ふぅ……おのれ人間め。私をこのような辱めにあわせおって」

「その口調、どう考えても普通の女の子から出るものじゃないな」

「仕方ない。良いだろう教えてやる。私は悪魔竜王! かつて魔王と接戦を繰り広げた最強の王である!」

「魔王に負けたんなら最強では無く無いか?」

「ぐっ……」


 拓夢のその一言が少女もとい悪魔竜王を傷つけた。


「だって仕方が無かろう! あ奴は私の部下の魔族や龍種をことごとく味方に引き入れおったのだ! 次々と部下が寝返ってしまうからいつの間にか戦力は弱小に……気付けばもう私一人しか残っていなかった。それだけじゃない! あ奴は私をこのような少女の姿に変えおったのだ! もはや威厳も無い……全て終わりだ……」


 絶望のオーラを纏う悪魔竜王。そんな彼を理沙は抱擁し、耳元で囁いた。


「魔王はもういない。だからもう貴方は復讐を果たすことも出来ない」

「な、何だと……?」


 それは、悪魔竜王の心を砕く一言だった。


「嘘だ……私を騙そうとしておるのだろう……?」

「本当だ。何を隠そう俺が倒した」

「……ははっ」


 意気消沈。その言葉が似合う程に、悪魔竜王は燃え尽きてしまった。


「まあそんなわけだから、お前の力を借りたいんだ」

「どういうわけだ? 今までの流れで何故そうなる? 魔王を倒したお前に今更私の力など必要ないだろう」

「色々とあるんだ」


 拓夢はその色々を悪魔竜王に話した。


「なるほどな。世界を滅茶苦茶に……よし乗った。どうせ私も奴隷商に嫌がらせすることしか楽しみが無かったところだ」

「嫌がらせ?」

「うむ。敢えて奴隷として身を売り、オークション会場を爆発させては逃げてまた他の会場を襲っていた」

「小物感凄いな」


 帝都で起こっている奴隷オークション会場の焼失事件。それは全て、悪魔竜王が少女の姿を使って小汚い嫌がらせをしていただけだったのだ。というのも、そのようなことを始めたのには訳があった。


「小物だろうが何だろうがどうだっていい。あの屈辱を晴らすためには何だってしてやるつもりなんだからな。そう、あれは……」


 悪魔竜王は自身の過去について話し始めた。


 彼は少女の姿に変えられたばかりの頃は力を上手く扱えず、ほとんど普通の少女と変わらない状態となっていた。その状態で運悪く悪徳奴隷商に捕まってしまい、奴隷として売られてしまったのだ。悪徳奴隷商は正規ルートを通さずに誘拐などで奴隷を用意する。まさに悪党なり!


 本来は財も無く路頭に迷った者が自ら志願するなり、重犯罪を犯した者が奴隷として売られる。しかし悪徳奴隷商は攫ってきた奴隷を売っているために、正規の奴隷商からは手に入らないような奴隷も手に入れられるのだ。そのため一部の富裕層の中では彼らは重宝されている。何しろ性奴隷や愛玩奴隷の質が良いのだ。


 そう言った経緯から悪魔竜王も性奴隷として売られてしまった。購入者はドレイ・スキー。彼は購入した奴隷が悪魔竜王だと知るはずも無く、普通の奴隷少女として扱った。それが、悪魔竜王の怒りを買ったのだ。


 普通の奴隷少女として扱われるという事が、彼には耐えられなかった。せめて『元悪魔竜王が落ちぶれて奴隷堕ちした』といった様に悪魔竜王としての自分を意識してもらいたかったのだ。変な奴である。


 しかし現実は非常だ。スキーは彼の言葉を信じなかったのだ。しかしそれもそのはず。少女が自分は元悪魔竜王だと言ったところで誰がそれを信じるだろうか。そんなわけで、彼は屈辱を感じていたのだ。


 そのため体に慣れて力を出せるようになった彼はスキーの館から脱出した後に、腹いせとして奴隷オークションを襲うようになったのだ。


「なるほど、お前が変なヤツだという事と奴隷堕ちに屈辱を持っているってのはわかった。それで奴隷商オークションで嫌がらせをしていたんだな」

「わかってくれたか。……いや私は決して変なヤツでは無いぞ!」

「まあまあ。じゃあとりあえずこの街滅ぼしとくか」

「……は?」


 拓夢はしれっとそう答えた。それはかつて魔王を倒した勇者とは思えないとんでも発言だった。

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