第2話 決意の朝

 そもそもソフィアという少女があんな狂気的な愛を身に宿すことになった理由として彼女の家庭環境や周囲に問題があった。


 彼女が何か悪いことをしたわけではないのだ。


 ただ、兄のリアムが優秀すぎるがために毎回比べら、兄であるリアムと両親には罵倒されたり冷たく当たられ嫌がらせをされた。

 

 空気というものは伝染するものでメイドや屋敷の者達にはどうでもいいような扱いをされ、何か変わるのではないかと期待した学校でも兄のリアムと比べられる毎日。

 

 彼女の扱いは日に日に悪くなっていき、彼女も笑うことは勿論、泣くことや悲しむことすら少なくなっていき、目は虚ろになり現実世界に希望が持てなくなっていった。


 そんなある日、彼女は同級生にまたリアムと比べられ馬鹿にされていて耐えていたところを偶然主人公に助けられて、優しい主人公に依存していってしまい、あんなことになるわけだ。


 両親がもし彼女に愛情をもって接していたら。もし兄であるリアムが彼女に優しく接していたら。周囲の者がまともだったらあんな狂気には陥らずに済んだのではないか?


 俺はプレーしているときに何度そう思ったことか。


 そして、ここはどうやら本当に『君と私の選択』略して『キミセン』の世界みたいのようだ。


 だから俺は彼女を徹底的に甘やかすことにする!!


 殺し方とか考え方は残虐で狂気的だけれど、見た目はすごく可愛いし主人公に一途なところもいいなって思うし、笑った時の笑顔も可愛いと思うから。それにソフィアに殺されたくないしね


 今のリアム(俺)の年は十四歳である。必然的に双子であるソフィアは14歳ということになり物語が始まるのは、ソフィアたち15歳になり学園に入学して少し経ったくらいだ。


 今はもう元の地球で言うところの9月程度だろうか?学園の入学式は5月頃だからあと半年程度の間にソフィアのあの暗い狂気的な感情を矯正する。


 俺とソフィアの今の関係値はすでにかなり冷え切ってはいるがこれからだ。


 その為にはまず何をすればいいだろう?


 今まで女性とまともに交際したこともない俺だ。ここはゲームの中とはいえ今俺が生きている世界。


 好感度何てものが存在するはずもないので、少しづつ模索していくしかないのだ。


 何をすればソフィアは喜んでくれるんだ?

 

 例えば彼女の好きな食べ物は何だろう。確か、公式設定には確か.....主人公の息子と書いてあったし、好きなものは主人公。嫌いなものは主人公以外のすべてって書いてあったから参考にならない。


 主人公を今ここに連れてきたところで、彼女は主人公に助けられているわけではないから主人公に息子を露出させ、ソフィアに見せたところで気持ち悪がられるだけだろう。


 頭を捻ってみるが…考えても分からないし、本人に直接聞けばいいか。それとまずは、謝らないとな。


 ソフィアの分だけ明らかに量が少なかった朝食を急いで使用人に作らせて、彼女の部屋へと持っていく。


 ドアをノックするとすぐに、返答がありすぐにドアを開けてくれた。


「お、お兄様、何でしょうか?」


 ソフィアの顔はまだ完全に感情は失ってはいないが、目は濁っていて俺に何かされるんじゃないかと思ってビクビクとしていた。


 今までリアムや両親、それに使用人たちの冷たい態度や嫌がらせに腹が立つがそこは抑える。


「汚い部屋ですが、お入りになられますか?」

「入れてくれるのならありがたいかな」

「わ、分かりました、ではどうぞ」


 彼女の部屋に入ると、そこは勉強机と椅子、丸テーブルそれと僕とは比べ物にならないほどの安いベッド、それに魔法に関する書物が棚に並べられているだけだった。


 とても、貴族の思春期真っただ中の女の子とは思えない簡素な部屋だった。


 思わず、胸が苦しくなる。


「お兄様、ど、どうしましたか?顔色が悪いですが。何か悪いことをしてしまったのでしょうか?すみません、申し訳ありません、こんな部屋で」

「いや、違うんだソフィア。君は謝らなくていい」

「分かりました、もうしわけ…あっ、すみま.....」


 ソフィアは謝ることが癖になっているみたいだ。


 謝ることは悪いことではないけれど、ここまでなって卑屈というか弱気になってしまった原因が今はリアムである俺だと思うとむしろ謝らなければならないのは俺だ。


 勉強机に朝食を置いて、ソフィアの正面に立つ。

 

 彼女は何をされるのかビクビクしてはいるが目を背ければ何をされるか分からないと思っているのか必死に僕と目線を合わせようとしてくれている。


「ソフィア、今まで本当にごめん」

「………え?」


 俺は全力で頭を下げる。


「今までソフィアに冷たく当たったり嫌がらせしたりして本当にごめん」

「お、お兄様、あ、頭を上げてください」

「ソフィアの気の済むまで殴ってくれても構わないし、魔法で痛めつけても構わない」

「わ、私はだ、大丈夫です。そんなことしません。今謝ってもらっただけで気は済みましたから」


 下げていた頭を上げると、彼女は今も僕が頭を下げたことに対して焦っているのかあたふたしていた。


 数分後、ソフィアが落ち着いてから話を再開させる。


「謝っただけじゃ信用してもらえないと思うから、これからソフィアに信用してもらえるように努力していくから」」

「わ、分かりました。ありがとうございます」

「それじゃあ、先ずは今日の朝食少なかったよね。これ、使用人に作らせて持ってきたんだけれど」

「あ、ありがとうございます」


 勉強机に座って、スプーンを持ちスープを掬うが中々口に運ばない。

 

 なぜだ?お腹がすいていないとか?


 ..........................あっ。


「待って。俺がそれに何もしていないって証明するためにまず全部目の前でちょっとずつ食べるね」

「ご、ごめんなさい。疑っているわけではないんです。ごめんなさい。すみません」

「いいよ、大丈夫」


 一口づつ食べて、毒とか変なものを入れていないことを証明すると彼女は恐る恐る口に含み、胃に入れる。


 それからはやはりお腹が空いていたのか誰かに取られる前にとバクバク食べてあっという間に完食した。


「も、申し訳ありません。こんなにはしたなく食べてしまって」

「いいよ、全然。ソフィアが喜んでくれたみたいでよかった」

「あ、ありがとうございます」

「今日からはちゃんとした量を出すように使用人に言っておくから任せて」

「は、はい。ありがとうございます」

「これから、信じてもらえるように努力していくから」


 絶対にとことんまで甘やかして、ソフィアが自然に笑えるようにして見せる。



 



 


 


 




 

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