問題だらけ

 帝都観光、俺とルナは大いに満喫していた。

 王国にはないものということで、人が賑わう場所では多くの出し物が用意されており、俺たち以外にも旅行客はかなり居る。

 今の帝国に起きそうになっているキナ臭い出来事について知っているのか、或いは気にしていないのかは分からないが……ま、賑やかであればあるほど帝国にとってもお金は巡るので悪くはないんだろう。


「ルナ、レストランに行こうぜ」

「分かったわ」


 そこそこ食べ歩きはしたが、やはりレストランには立ち寄りたい。

 ちょうど昼頃というのもあって、俺たちは歩く時に渡された帝都観光用のパンフレットに目を通しながらおススメされているレストランに向かう。

 そこは建物が綺麗で高級感を感じさせるものの、旅客に親切な対応を心掛けているということで誰でも寄って行ってくれと看板があった。


「中見えるけど色んな服装の人が居るんだな。それだけ他所の人が多いってわけか」

「王国も似たような場所はあるけれど、やっぱり時代の先を行っているのは現時点では帝国でしょうね」

「なるほどな……」

「まあ、どんなに技術力が向上したとしてもそれを使う人次第よ」


 帝国の中で起きようとしている不穏なことはともかく、こうやって技術が発展した先でこの国が他国に戦争を仕掛ける可能性も否定は出来ない。

 しかし、今は全ての国とまでは言えないが悪くない関係が続いている……以前のドラゴン騒ぎはともかくとして。


「良し、飯だ飯!」

「行きましょう」


 それから俺とルナはレストランに足を踏み入れた。

 外装が綺麗ということは内装も綺麗ということで、気持ち良く昼食を摂るのに何も不足がないほどだ。

 帝国の料理に関してはあまり詳しくないため、店員さんがおススメしてくれた料理を頼むことにした。


「名前からして分からないのが多いわね……人間体でそれとなく城下街に紛れ込むことはあったけれど、やっぱり他国の料理は興味深いわ」

「やっぱりそんなことしてたんだ」

「でも頻度は全然だから覚えていることも少ないけどね」


 俺とルナはそんな風に会話を楽しみながら昼食を済ませた。

 そして改めて観光を再開したその時だった――少しばかり向こうで大きな爆発音が響いたのは。

 その爆発が響き渡った瞬間、周りの人々はすぐに逃げようとする者と呆然とする者で分かれ、俺はというとそっとルナに腕を抱かれた。


「観光どころじゃなさそうね?」

「……だなぁ」

「残念だけど早々に帝都を出ることにしましょう。ドラゴンは国を守護する者とはいっても、さっきも言ったけれど他所のことに首を突っ込むつもりはないわ」

「分かった」


 徐々に慌てる人が多くなり、そんな中を俺たちは落ち着いて行動する。

 ルナが何も恐れていないのはともかくとして、そんな彼女に腕を抱かれているからこそ俺も全く怖くはなかった。

 帝都の出口に向かいはするものの、段々と近づいてくる爆発音の多さは周到さを思わせる。


「帝国って技術の発展が著しいけど、そのやり方に反発も多いと聞くしこんなことになるのも必然なのかな」

「そうね。王国は本当にリヒターたちが良く纏めていると思うわ」


 そう考えると王国は本当に過ごしやすい場所と言える。

 お前たちも首謀者ではないのかと、疑われてもおかしくはないほどにのんびりと出口に向かう中、そこで一つの異変が起こるのだった。

 外に通じる門、その天井部分にも爆発物が仕掛けられていたらしく……俺たちが近づいた瞬間にそこが大きく爆発した。


「大丈夫よ」


 周りから悲鳴が零れる中、俺の耳はそんな一言を聞き取った。

 ゆっくりと落ちてくる瓦礫に向かってルナが手を翳したかと思えば、まるで衝撃波が放たれるように全ての瓦礫が吹き飛ばされた。

 瓦礫だけでなく城門もある程度綺麗に吹き飛ばされたが、こんな騒ぎの中でそれを気にするような人は居なかった。


「……あら?」

「どうし……あ」


 チラッと視線を向けた場所、そこには今回の騒ぎを起こしたであろう怪しげな格好をした一団が武器を構えていた。

 彼らが向かおうとしている先には子供たちが身を寄せ合っており、彼らはそんな子供たちにすら武器を向け、そして駆け出した。


「ねえゼノ」

「なんだ?」

「私は正直、あなた以外の存在に価値を見出せない。王国に住む者なら多少は考えることもあるけれど、そこはやはり私の本質が人間ではないのだと分かるのよ」

「あぁ」

「でも、目に入ったものなら助けてもいいかもって思うわよね」


 ルナはまた手を翳す。

 するとルナは小さな火球を手の平に生み出し、それをあの一団に向かって放った。

 その火球はユラユラと彼らの元に向かい、空中で制止したかと思えば途端に膨れ上がって特大の火球へと変貌した。

 正に地上に落ちた太陽のように、それは彼らを呑み込んで消滅させた。


「さ、行きましょうか。後はこの国がどうするかでしょう」

「……だな」


 ちなみに、ルナの話だと帝国は他所の国に救われたとしても認めないらしく、反対にお前たちがやったんだと言いがかりを付けることがあるとリヒター様から聞いたとのことで……色々と上層部に関しては問題のある国かもしれない。

 外に出た後、すぐにドラゴン体になったルナに乗って飛び立った。


“大丈夫か? 流石に少し疲れたか?”

「え?」

“なんだかんだ問題が続いている。早いが少し休むとしよう”


 どうやら自分でも気付かない間に疲れていたようだ。

 ルナが言ったように朝から色々とあったしな……ていうか、流石に問題起きすぎだろこの国。

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