イレイサー:File00_イハインの動くミイラ:遺物に憑りつく「ある」者を「ない」物に。憑きものを払います。遺物ごと「ない」物にしちゃったときはごめんなさい。

UD

第1話

「くっそお! なんでこいつが襲ってくんだよ!」


「うへえ、知らないっすよおおお、助けてくださいハルキさん!」


 突然、古びた鎧が二人に襲い掛かってくる。

 動きを止めた鎧から黒い光が放たれ、一瞬視界がぐにゃりと曲がった感覚が起こる。


 足元を見るとそこには何もなくなっていた。さっきまで地面があったはずなのだがそれが存在せず、自分たちが宙に浮いて赤黒い世界の中にいる。


「くそっ。おいニッタ! 先手を取られてるぞ!」

 そう言いながら銃を抜き構える。


 すると鎧もそれに反応するように、ゆっくりと身を起こし始め、鎧の周りに黒い霧のようなものが集まってくる。


 黒い霧はどんどん大きくなり形を変え人型になったところで変化を止め、全身真っ黒で目だけが赤く光っている。

 身長はおよそ二メートルくらいで、手には禍々しいオーラを放つ大剣を持っている。



 グルォォォォォォォ!!



 騎士の姿になった鎧が雄たけびを上げると次の瞬間、騎士の姿が消え同時に右腕から鮮血が噴き出す。


 「っく!」


 いつの間にか背後に回られていたようだ。咄嵯に身を翻すがさらに左腕にも傷を負う。

 

 騎士が再び姿を消しすぐさま目の前に現れる。


 速い!

 まずい、避けられない。


 咄嗟に後輩のニッタを騎士に向けて投げ飛ばす。


「うわあああああ! ひどいっすよおおおおお!!」


 ニッタが騎士にぶつかると同時に魔銃を放つと騎士鎧に命中し大爆発を起こし鎧から煙が広がる。





 数分後、煙も消え、まわりが落ち着いて来たところでニッタがかけ寄ってくる。


「いやいやダメですって! ハルキさん! なんで消して無くしちゃうんですか!! てかオレをあれに向かって投げつけましたよね?」


「ん? だって仕方ないじゃないか。襲ってきたんだから」


「今回の依頼、誰に頼まれたと思ってんですか!! いやそれもだけど、投げつけられた身にもなってくださいよ、で、射つし! ヤバいっすよお! どっちもヤバいすよお」


「うるさいなあ。イレイサーなんだから消すだろうよ。仕方なかったんだよ、緊急だったんだから。なんならお前も消すよ?」


「ひえーっ! 勘弁してくださいよお。でもこれ、プロデューサーになんて言えばいいんすか?」


「そんなもん適当に言っとけよ、知るかよ!」



 彼らは通称『イレイサー』という国家情報保安局のメンバーである。この世界には「ある」物と「ない」物が存在する。彼らは「ある」者を「ない」物に戻す役割を担っている。


「マジでヤバいですってハルキさん。今回のこれ、そーとーヤバいですよ?」


「だから知らないって言ってんだろ、お前ヤバいしか言ってないじゃないか、うるせえなあ」


 その時、ニッタの胸ポケットで通信機の音が鳴る。


「あ、ディレクターから連絡だ。どうすんですか? ハルキさん! あ、逃げた! ハルキさん! ハルキさんってばあ!!」

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