第19話 危機的状況なう
全く。
昨日は散々だった。
シーナは最後までコップに入った変な色の液体を飲ませようとしてくるし。
俺が飲むフリして窓の外に捨てるまで、ずっと飲ませようとしてきやがった。
そのせいで、気づけば朝日がこんにちわしていて、俺は一睡もできていない。
そのくせシーナは自分の部屋で爆睡してやがる。
このくそニートめ。
だるい体をなんとか動かしながら、学校へ行く準備を済ませた。
▲ ▼ ▲
いつも通り風花と一緒に登校し、陽キャグループ朝の洗礼をしっかりと受けた俺は、そのまま眠りに──つくわけではなく。
自分で言うのもなんだが、珍しく朝のホームルームを寝ずに過ごした。
チャイムがなり、1、2時限目は移動教室なので、筆箱と数冊の教科書を持って教室を出る。
そして、ルンルン気分で俺はメディアルームへと向かった。
と言うのも今日は週に一度のプログラミングの授業。この授業は特段楽しいわけではないが、好きなものに触れていられると言う点では最高だ。
高校の授業の中で、一番楽しみにしていると言っても過言ではない。
だが、俺がルンルン気分な理由はそれだけではない。
もう一つの理由、それは──。
「あ、おはようございます。藤堂先生」
「あ、お、おはようございます。今日も早いですね」
「この授業はとても楽しみなので」
「そ、そうですか。それはよかったです」
この藤堂先生である。藤堂先生は1ヶ月ほど前、特別講師としてこの学校に来たのだが、色々とすごい。
何がすごいって、まずπ。パイパイだ。
男子生徒に藤堂先生と言えば? 「おっπ!!!」と絶対に返ってくるほどの巨乳。あそこにはきっと男の夢が詰まりまくっている。
そして、The大人の女性という感じの清楚でいて大人しそうな美貌に、溢れ出るお姉さんオーラ。
要するに、俺たち男子高校生にとってこのお姉さんは、あまりにも魅力的すぎるのだ。
ひと足先に指定された席に着き、暫くすると生徒が集まりチャイムがなって授業が開始した。
まぁ、プログラミングの授業と言っても、内容は単純。子供向けに作られたプログラミングソフトを使って、先生の言った通りにプログラミングを作っていくだけ。
ポップな絵柄に、単純な命令がたくさんあり、それらをパズルのように組み合わせていく。
正直、先生から言われた内容は5分で終わる。だが、それは単純に作った時。
俺はなるべく同じ動作で、複雑な組み合わせを作り上げることに固執していた。
だが、それにも限界はある。
30分ほどで複雑な組み合わせも作り終わった。一旦休憩に入り、周りを見渡す。
風花を含め、大多数の生徒は単純なプログラミングを作るのに悪戦苦闘しており、周りを見る余裕はなさそうだ。
そんな時に終わったぜアピールするのは少しだけ気持ちがいい。
そして、そんな矮小な自己満足をしている最中。なぜだか藤堂先生とばっちり目があった。少しだけ見つめあって、俺が軽い会釈をして目を逸らす。
やっぱりめちゃくちゃな美人なんだよなあ。髪の毛は茶髪のロングで、常に艶やかでサラサラ。毛先は少しだけ巻いていて、本当に理想の社会人お姉さんと言った感じだ。
控えめに言ってヒモになって養われてヨシヨシされたい。
なんとなく、もう一度見たくなってチラリと藤堂先生の方を見る。すると、なぜか再び目が合った。
が、今度は目があっていないふりをして逸らした。流石に二度目は気まずい。
暫くパソコンを打つふりをしながら、癒される目的で巨乳のおっぱい……略して巨パイを見ようと藤堂先生を見る。
……なぜかまたばっちりと目があった。
なぜ?
なんでこんなにタイミングよく目が合う? え、え? 俺何かした? 目をつけられるようなことしたっけ??
バレないように横目でチラリと藤堂先生を確認すると、まだ俺の方を見ている。
…………もしかして、俺、見られてる……?
そんなわけ……ないとも言いきれず。じーっと横目で観察していると、やはりずっとこちらを見ている。ずーっと他所を見ることなく俺の方を見ている。
…………なんで?
その後もずーっと授業が終わるまで、なぜか藤堂先生は俺のことを見ていた。
最初の方は甘い妄想をしてみたりしたが、時間が経つにつれ恐怖を感じるようになっていた。
チャイムが鳴り、長かった2時間の授業が終わる。
監視されていたせいか、はたまた昨日の疲労のせいか、いつもの三倍くらい長く感じた。
だが終わってしまえばこちらのもの。
さっさと荷物をまとめてメディアルームを出──。
「ちょ、ちょっと……九十九くん……来てくれますか?」
「あっ、えっ、九十九って……俺の苗字です……よね?」
「は、はい? 多分、そうだと思いますけど……」
「で、ですよねー」
なぜか呼び出されました。
もしや、πを割とじっくり見ていたのがバレた……? それとも単純に見られるのが不快だったとか……? はたまたプログラミングを複雑化しすぎた……?
どれをとっても叱られそうな未来しか見えない。
「どうしましたか藤堂先生?」
「あ、あのぉ……手伝って欲しいことがあるので……放課後、ここの準備室に来てください……よろしくお願いします」
「……あっ、……はい……」
叱られはしなかった。罵詈雑言の嵐を降り注がれることもなかった。
でも、なんだろう。この既視感。このデジャブ。
どこからか湧き出る嫌な予感を全身で感じながら、足早にメディアルームを後にした。
▲ ▼ ▲
放課後。
ここはメディアルームの準備室。
そして、そこでなぜか俺は藤堂先生に追い詰められている。(物理的に)
窓際、野球部がグラウンドをトンボをかけている光景を背にして、今にも鼻先が触れ合いそうな距離に藤堂先生はいた。そんな距離にいれば、当然おっぱいは既に俺の胸元でむっちりしていた。
だが、藤堂先生はそんなことを気にする様子はなく。ただ真剣に俺の目を覗き込んでいる。
そして段々距離は近づき、鼻先が触れ合った時。
藤堂先生は言った。
「あ、よかった、ちゃんと九十九君です」
「…………はい?」
「あ、呼び出されてびっくりしてますよね。九十九くんを呼び出した理由なんですけど、実は私──サイバー警察なんですよね」
「……………………ふぁ?」
俺は昨日の睡眠不足と、この状況に頭が追いつかず完全なキャパオーバーで──意識を失ったのだった。
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