第6話 団欒
食事をしながらウォザディーとルニムネは明日の事について話し合う。
「そうだな、そろそろ世界放浪の旅に出ようと思ってた所だ。お前を送りがてら、ディアトキアで久しぶりの観光というのも悪くないな」
「じゃあさっ、じゃあさっ、イコルニアツにも来てくれる?」
当たり前の事を問われたウォザディーは一瞬戸惑う。ただ、目の前にいるルニムネが子供である事を思い出し納得する。
「ああ、当然だろ。お前を家まできちんと送って行ってやるさ」
「良かったぁ。誰かに親切にされたらソイベ先生に言わなくちゃいけないの。後でお礼に行くのが保護者の務め? というものらしいよ。でも、ここがどこか私には話せないからどうしようと思ってたの」
先程から話に上がっているソイベ先生とやらは、どうにも人格者のようである。子供達の躾は勿論の事、自分自身もしっかりと律している人物といった印象を受ける。
「送って行ってはやるが、その後のお説教までは知らんぞ」
「…………」
ウォザディーの思い描いたソイベ先生像が正し事を、沈黙するルニムネが証明していた。
「ほら、食べ終わったのならさっさと風呂に入ってきな」
「えー、食べて直ぐにお風呂に入っちゃダメだっていつもソイベ先生が言ってるよぉー」
ルニムネの沈んだ雰囲気が気まずくなって話を変えたウォザディーである。片やルニムネは緊張もだいぶ薄れたようで、その口ぶりは子供っぽさが増していた。
ウォザディーが後片付けをしていると、お風呂からルニムネが出て来た。彼の掘っ建て小屋にもちゃんとお風呂は設置されているのだ。
「おっ、出たか。ちょっとこっちへ来い」
「えっ、何ですか」
風呂上がりのルニムネを彼は呼び止めた。
「
「えっ! その割にはピカピカだったよ」
ルニムネは驚いて一瞬言葉に詰まった。お風呂場は毎日掃除しているのかと思う程に綺麗だったのだから。
「ああ、この家の物には状態保存の魔法が掛けてあるからな。いつまで経っても新品同様だ。それよりも、着心地はどうだ」
「はっ、はい。とっても良いけど、私なんかが借りていいの?」
湯上りのルニムネはウォザディーのシャツを魔法でリメイクしたワンピースを着ている。下着は洗浄魔法で綺麗にしてそのままの物を履かせているが、服の方はあちこち擦り切れていてボロボロだった為に用意したのだ。
「この服は特別な物なのか?」
「えっ、いえ」
脱衣所にはルニムネの着ていた服が綺麗に畳まれて置いてある。
「じゃあ、もう捨ててしまうぞ」
「いや、ダメです!」
ルニムネは慌てウォザディーが手にした服を掴んだ。
「んっ、何だ。捨てちゃダメなのか?」
「えっと、その……明日……服が……」
ウォザディーはここで話が繋がった。
「その服はもうお前の物なのだぞ」
「えっ?」
ルニムネは何を言われたのか、理解が追い付かずに呆けてしまう。その隙にウォザディーはルニムネの手を振り解くと
「ほら、それよりも乾かしちまうぞ」
「うわっ、わっわっ!」
タオルで水気は拭き取っているものの髪の毛はまだ湿ったままである。ウォザディーが合図をするとルニムネの周りを暖かい風が取り巻いて髪の毛に残っていた水分を飛ばしていく。
「悪いな。この通り魔法で事足りるから魔法具、ディーケ製品か、は無いんだよ」
「うー……いっ、いえ。ディーケ製品は高いんだよ。もし有ったとしてもディーケユニットも安いものじゃ無いから髪の毛を乾かす為になんて使えないよ……ふぅー……」
フニャリと心地良さそうな顔をしたルニムネが自分の生活の事を少し口にした。
「成る程な孤児院の経営状況は芳しく無いようだな」
「けいえいじょうきょう?」
ルニムネには少し難し過ぎたようである。
「そうだなぁ。簡単に言うとお金が少ししかないという事だ」
「うん。周りからは貧乏って言われる。それってお金がないからでしょ」
ルニムネはそう言うと
「もう、服の心配はしなくていいぞ。」
「ああっ!」
ウォザディーは手にしていた
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