第14話 お母さんだって心配なのでした
そんなこんなで人生初の他愛もない話をしながら、私たちは家に帰った。今考えると、普通のカップルは「ここでお別れだね」「また明日ね」見たいな名残惜しい気持ちを味合わなければならないのだけれど、私たちに限ってはそんなの無縁じゃないか!と思ってしまった。今日ほどお姉ちゃんと姉妹であって良かった日はない。
家に帰り、お姉ちゃんと二人でリビングに入る。
「母さん、ただいま」
「ただいま、お母さん」
「あら、おかえりなさ......」
お母さんは夕御飯を作っている手を止めて、私とお姉ちゃんを凝視した。
「美都、美孤、一緒に、帰ってきたの......?」
「え?あ、うん!」
「美都!美孤!」
その瞬間、お母さんがキッチンから私たち目掛けて、抱きついてきた。
「うわっ!」
「きゃっ!」
突然抱きついたお母さんに私もお姉ちゃんも、驚いていた。
「もう!あんたたち、ずっと仲悪そうにしてたから、お母さんずっと心配してたのよ!」
「お、お母さん......!」
お母さんは私とお姉ちゃんの言葉も聞かないで、さらに私たちを強く抱き締めた。
「中学生のあるときから急に仲が悪くなって、美都は部活頑張っていたけど、美孤はどんどん塞ぎ込むようになって......、環境が悪かったのかしら、って悩んで......」
さらにお母さんの声はどんどん涙声に変わっていった。
「このまま美都と美孤が一生このままだったらどうしようって......本当に......」
「お母さん......」
私はそこでお母さんが、私以上に私とお姉ちゃんの関係のことを考えてくれていたことを知った。いつも笑っていたから、いつも暖かかったから、今までその事について一度もなにも言わなかったから、お母さんにそんな心配をかけていたなんて、私は気づきもしなかった。気づこうともしてなかった。その時、お姉ちゃんが声をあげた。
「母さん、心配かけて本当にごめんなさい。ずっと私が誤解していたんだ。美孤は悪くない。でも、その誤解が解けたから、もう大丈夫」
お姉ちゃんがそういうと、お母さんは「そう!」と言って笑った。そんなに嬉しそうなお母さんの顔を見るのは、なんだか久しぶりな気がして、私も嬉しかった。お母さんは私たちを離すと、リビングにいたお父さんに声をかけた。
「お父さん!美都と美孤が仲直りしたわ!」
「ええっ!本当か!?」
お父さんもお母さんと同じように、リビングから飛び出してきた。どれだけ心配したと思っているんだ、なんて怒られて、私とお姉ちゃんは一緒に謝った。そんなことをするのは、初めてだった。
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