第2話 異性としての初登校
「おはよー、ねぇねぇ昨日のやってたアレ見た?やばかったよね!」
「なぁ、今日の現文の課題、写させてくれね?やってなくて」
「それぐらい今からやれよ~、俺だって昨日の夜、必死にやったんだからさ」
クラスでは何ら普段と変わりない話が盛り上がっている。そう、普段と同じなはずだった。
俺も朝起きて登校していつもの友人たちと会話をする、それがルーティーンのように交わされるやり取りなはずなのに今の俺は顔を下に向けて出来る限り誰ともやり取りを交わさないように徹していたのだった。
(やばいやばい・・・何気なく登校してきちゃったけどこれは不味いって・・・!!)
普段よりも丸く小さい背中、自分の髪の長さのおかげで今は誰からも突っ込まれない。そう、朝起きたこの性転換という事実に今の俺は頭を落ち着かせるので、精一杯であった。
「なんでみんな俺の異変に気付かないんだよ・・・」
朝から今の出来事を少し整理してわかったことがある。それは、自分の性別が女性であるということが常識として進んでいるということであった。
それを実感したのは今朝の出来事である。部屋から飛び出し慌てた様子で階段を下り、母親に自分の性別が変わってしまったことを正直に話したのだが彼女は頭をぽかんとさせた様子を見せていたのであった。
『寝ぼけてるの?早く顔洗って準備しないと遅刻するからねー』
(その後、親父にもさりげなく聞いてみたけどやっぱり同じ反応だった…学校についてからもそうだった。やたらとちゃん付けで呼ばれているし)
名前が女にも読めるけれど、高校生の俺が女子のようにちゃん付で呼ばれることは今までなかった。部屋の中にあった衣類もすべて女性物、俺は誰かの部屋に侵入したのかって思ったけどやはりそれは違ったので初めてのブラを付け、今に至る。
(ホック付けるの大変だったな・・・あれだけでかなり時間を使ったし。てか、スカートの頼りない感じがなんて言えばいいか///)
中身が見られないように大股で歩けないし、座る時も気負付けなければいけない。
こういった繊細な感じが彼女たちの日常なのだと思うと尊敬の念を感じてしまう。
(にしてもメイクなんてしたことなかったのに何で自然とできたんだろう・・・ヘアメイクだって)
「おっは~、おはよ!千冬!!」
顔を伏せて考え事をしているとバシンっと強い衝撃が背中を襲った。きっと誰かが叩いたのだろう、声からして女子生徒のはず。
俺は顔を上げて後ろを振り向くと2~3人の集団で登校してきた女子生徒のうち、先頭に立っている笑顔の女子生徒と目線があった。
「早坂、、、朝から挨拶が激しすぎるぞ毎回」
「え~、別いいいじゃん~私たちの仲なんだし」
クラス1の低身長で俺の幼馴染でもある、短いショートヘアで右側の髪を束ねているのが特徴的な少女こと早坂凛であった。後ろにいるのは戸田に石里といった仲が良い女子生徒が立っている
「ねぇねぇ課題やってきたでしょ~、写させて!幼馴染のお願いとしてこの通り!!」
「お前どうせいつもやってこないじゃん・・・それよりさ聞きたいんだけどお前の幼馴染って男だったりしない・・・?」
「へぇ?何言っているの?幼馴染なんて千冬しかいないし、大丈夫?頭でも打った?体調でも悪い感じ?」
彼女の自然の反応を見て確信を持って言える。今の俺は完全に女子として存在するのだと。男としての中野千冬は女子として生まれて幼馴染と仲良くなって今に至るのだ。
一体何が引き金となって俺の性別が変わったのか、それは分からない。
宇宙の法則以上のバグでも起きたのだろう、俺はこれ以上の混乱を招かないよう今の性別として話を合わしていくことにシフトしていった。
「すまんすまん、ちょっと寝ぼけているみたい。あんまり寝ていなくてさ」
「ハハハ、ゲームのし過ぎだよ~女の子には夜更かしは天敵なんだからね!」
よかった。納得してくれたみたいだ。自分の幼馴染があまり疑わない性格で助かる。周りを見ると誰もこちらに対して不自然な視線を向けている人はいないようだ。
後ろにいた戸田や石里は各自、自分の席に着き二人して話し始めている。早坂は未だ席に着こうとせず俺との会話を楽しんでいる。
「ごめん、早坂さん。入っていい?」
「あ、ごめんね三守さん、おはよー」
「・・・おはよう」
思わず見とれてしまった、教室へ登校してきたのは丁度、ついこの前俺を振った女子で未だに未練がましく思い続けている人、矢野三守であった。
相変わらずの人をを寄せ付けないオーラを放っており、すぐさま自席へ座り携帯を開いたかと思えばすぐさま、イヤフォンを耳に着けて顔を伏せていった。
「三守さん、相変わらず感じ悪いよね~」
「え、そうなの?」
「えー、知らないの?三守さん、顔はいいんだけど誰かと仲良く過ごしている姿見たことないんだよね~それに、さっきみたいに感じ悪いからさ。同性にはあまり人気無いんだよね」
同性からの目線は異性の目よりも中々、泥ついている・・・そういって早坂は彼女の噂を話し続けていたが未だに俺は彼女のことを見続けていった
あの時と同じように彼女のことを思う気持ちは何ら変わっていない
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