二人のイケメン
二人のイケメン
「もしかして琉依くん……」
式条は申し訳なさそうに琉依を見ていた。
「最初から気付いてましたよ」
「本当に? わかっててあの時お店に入って来たの? えっ? いつから? なんでわかったの?」
「はは、今度は俺が質問攻めですね」
「だってさ……」
「まずあの店、というかあのビル、オヤジが結界を張ってます」
「は?」
「それで何か悪い霊でもいるのかなと思って見たらあの貼り紙でしょ。どう見たってオヤジがここに入れって言ってるようなもんじゃないですか」
「ああ……ははは」
「ちょうどその前にオヤジに何かやりたいって相談したあとだったし。え、式条さん結界には気付いてなかったんですか?」
「まったく」
「意外です」
「だって普通に霊は入って来てたし」
「まあ、そうですよね。あれはオヤジが最近あみだした特殊な結界だって言ってましたし」
「そうなんだ」
「でもまあ、俺も浄霊屋ってどんなことやってるのか知りたかったし、騙されてやろうと思って入りました」
「へえ」
「でも式条さんがやってることを見て感動して俺もやりたいって思ったのは事実です」
「うん。なら良かったよ」
「あと、俺も式条さんみたいになりたいって思ったしずっと一緒にやりたいって思ってるのも本当です」
「でも何だっけ、自分で稼ぎたいって?」
「はい。しばらく様子を見て思いました。霊が相手だから誰かからお金を貰うことも出来ないし、どうやって生活してるんだろうって。全部オヤジが出してるんですよね」
「まいったな。琉依くんは本当に鋭いよ。全部琉依くんが思ってる通り。三神さんに頼まれてあの貼り紙を貼った。三神さんとは僕が子どもの頃に出会ったんだ。それからずっと三神さんに援助して貰ってる」
「そんな前からだったんですね」
「うん」
「どうせオヤジが無理矢理式条さんに俺のことを押し付けたんでしょ? オヤジがやりそうなことです。迷惑かけてすみません」
「そんな、迷惑だなんてとんでもないよ。さっきも言った通り、僕は琉依くんのおかげで楽しかったんだ」
「そう言ってもらえるとありがたいです」
「僕の方こそだよ」
「でも俺やっぱりこのままずっとオヤジに食わせてもらってる感じは嫌なんですよね。でも正直浄霊屋はやめたくない。だから大学卒業したら俺就職します。普通に」
「えっ? 就職?」
「はい。ちゃんと普通に就職して自分で給料もらって、空いた時間でHELLO GOODBYEの手伝いをするっていうのはダメですか?」
「いや、ダメじゃないけど。就職……」
「ぶっちゃけるとただ単にオヤジのすねをかじりたくないってだけです。就職してお金を貯めて将来俺も浄霊屋として店を持ちたい。それだけです」
「でもそうなると大変だよ? 収入はないし自分の時間もなくなる。霊は朝昼晩なんて関係ないからね」
「それでも俺は浄霊屋をやりたいと思ってます」
琉依は真っ直ぐに式条の目を見つめた。
その決意の固さを表している輝いた瞳は式条にかつての自分を思い出させていた。
「わかったよ。琉依くんが思うようにやるといい。僕が教えてやれることは全て教えるし、三神さんのことも心配しなくていいよ。お世話を頼まれたのは僕だからね」
「本当ですか? あ~よかったぁ。式条さんを味方にしないとオヤジを説得出来ないと思って俺……」
「ハハハ、琉依くんも大変だね」
「わかります? オヤジの親バカぶりが」
「うん、よくわかるよ」
「もう、本当に勘弁してほしいですよ」
「まあ、子どもが大人になっても親にとってはいつまでも子どもは子どもだからね。仕方ないよ」
「そうですけど。あ、オヤジにはまだこのまま、俺は何も知らないことにしておいてください」
「うん、そうするよ」
それから二人は食事を終え店を出た。
式条と琉依、二人が並んで繁華街を歩いている姿は自然と人の目を惹き付けていた。
容姿端麗な二人の若い男は夜の街に異様な華やかさを振り撒いていたのだった。
「あれ? あそこ、あの女性って、霊ですよね?」
琉依がふと道端に立っている女性を見て言った。
「え、ああ、うん、霊だね。あれ? もしかして琉依くんあまり霊と人間の区別がつかない?」
式条が足を止めた。
「実はそうなんです。昔から見極めが苦手で」
「そっか。じゃあ一度目を閉じてみて」
「あ、はい」
式条に言われて琉依はその場で目を閉じた。
「イメージしてごらん。おでこの辺りに自分の目があるって」
「はい……」
「普段からそう意識しておくといいよ。イメージできた?」
「なんとなく」
「イメージできたら目が三つあると思って見てごらん。じゃあ目を開けて」
琉依はゆっくりと目を開けた。
「おお……」
「どう? 少しはわかりやすくなった?」
「はい。あの女性の体がクリアになって……わっ、すごい血が出てたんですね。さっきは視えなかったです」
「コツさえ覚えればすぐに霊だとわかるようになるよ」
「すごいです。ありがとうございます」
「うん。じゃあ話を聞いてみようか」
「はい」
式条と琉依はその女性に近寄り声をかけた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます