第3話

鏡に映る自分の姿を見て驚愕した。


目つきが悪いで有名だった俺の鋭い目はまん丸のパッチリとした目になり、192cmあったはずの身長は多分160cmもないくらい小さくなっていて手も足も全てが小さい。髪の長さもギリギリ肩につかないくらいだが男の時と比べればかなり長くなっていた。


そして普通の男ならついているであろうあれの存在を確認するため俺は一番気になっていた場所に渋々と自分の手をあてた。


「…ない」


パンツの中を覗いてみるがやはりなかった。その代わりに男の時にはなかったおっぱいがあった。

自分の体についてるものだし触って見たかったが今はまだ罪悪感が勝ってしまい触るのをやめた。


しばらく鏡に張り付いていると部屋の外から声が聞こえてきた。


「秋穂~いい加減にしないと遅刻するわよ~!」



どうやらここでの俺の名前は秋穂というらしい。


きっと母であろう人の声が聞こえたのでなるべく自分の体を見ないように急いで部屋にかけてあった制服に着替え、さっさと朝食を食べて家を出ることにした。


家を出た直後は見慣れない街並みにどうやってどこの学校に行くんだと思っていたが、しばらくするとまるで元々知ってるかのように学校名や行き方が頭の中に浮かんできてわかるようになった。


歩いていて思ったがとりあえずこの履きなれないスカート、足元がスースーしすぎてとても落ち着かない。こんな腰に布を巻いただけのものが衣類だなんて心許なさすぎるし世の女性は凄いなと思った。


そして俺は登校中の電車の中で色々情報を整理していた。すると停車した駅が大きい駅だったのか突然人がたくさん乗ってきて電車が混雑し始めた。


192cmあった時は大体の人よりは大きく頭も飛び抜けるため大して気にしていなかったが、今のこの身長だと周りの人の背中だったり腕だったりが顔の目の前にきたりぶつかったりして凄く不快だしそしてなにより人混みでおっぱいが圧迫されてとても苦しいと思った。やっぱり世の女性は凄いと思ったし女性専用車両に乗ればよかったと後悔した。


そしてまた次に停車した駅で人混みが大きく動き出し、それに流されて先程までやっと落ち着ける場所をキープしつつあったのに体の向きが変えられてしまった。再び電車が動き出すとお尻辺りに違和感を感じた。


「(まさかこれが俗に言う、痴漢か…?)」


痴漢とは全く無縁だった俺には確信が持てなかったがお尻になにか擦り付けられている気がする。気になって顔だけでも後ろに向けようとすると耳元でそっと囁かれた。


「君…さっき俺の背中に胸あててきたよね…?そういうのが好きなの?」


全く心当たりの無いことを言われて頭がハテナだらけだが、とりあえず耳に当たる息が荒くて気持ち悪かった。


「は、ふざけんな誰がお前なんかに」


反抗しようとするが男は構わずにスカートをめくって俺の太ももを撫でるように触ってくる。


「ひっ」


俺は咄嗟にその男の腕を掴み動きを止めようとしたが力が足りないのかそんなのもお構い無しに向こうの手は止まらなかった。


「君も変態さんでしょ?だって胸が当たった時すぐわかったよ、今君ブラジャー着けてないよね」



男にそう言われてハッとした。確かに体を見ないことに必死で急いで着替えるあまり下着のことなんて考えもしなかった。


「声を出したら君がノーブラの変態さんて周りの人に言いふらしちゃうね。みんなどう思うかな」


こいつの言ってることがもっともすぎて何も言い返せなかった。


何も俺が言ってこないことを良いことに触ってくる手の動きがどんどん悪化していく。先程から太ももを撫でていた手が両足の間の所を布越しにゆっくりと往復して撫でてくる。


「下ははいてるんだね、せっかくなら下もはいてこなければよかったのに」


「っ、く、そが…」


気持ち悪いのに気持ちいい。女の体はこんな程度で感じてしまうのかと声を押し殺そうと歯を食いしばった。




すると電車が次の駅に到着し扉が開いたと同時に突然誰かに思い切り手を引っ張られた。



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