なぜ自衛隊は不祥事が頻発するのか

シリーズ頭の整理


 最近セクハラなど自衛隊の不祥事のニュースが嫌に目立っている印象があります。まあ自衛隊って全部合わせて24万人強の人数がいるので母数が多い分仕方ないのかなとも思います。が、被害にあわれた人のことを考えるとそうも言ってはいられないでしょう。

 そもそも最近の自衛隊関係のニュースの多さは元々注目されやすい組織であることや、防衛費増などが影響しているかもしれません。また、時代の移り変わりにより、以前は当たり前と思われていた指導方法も今ではありえないとされたことも一因ではないでしょうか。問題視されていなかったことが問題として表面化して来たということでしょうね。


 さて、私も海上自衛隊の幹部自衛官として末席に属していた身として自衛隊以外の世界に飛び込んでみて感じたことについて語りたいと思います。

 私も所属していたときハラスメントなどの問題(服務事故)は起きていました。自衛隊では服務事故が起きるたびにコンプライアンスなどの教育がなされています。自衛隊が組織として注力した契機になったのは1999年に発生したさわぎりでの自殺事案です。詳細は省かせていただきますが悪質ないじめと調査結果の隠蔽により大問題となりました。これ以降海上自衛隊では同じ事案を二度と引き起こさないよう様々な対策が取られることとなりました。

 職を辞して再就職先で度々感じるのですが、おそらく普通の組織ではコンプライアンスなどの教育は研修という形で行われています。私も今の職場で度々研修を受けてきましたし、係長以上の責任職は更に別の研修を受けています。また、係長以上への昇任についても昇任試験を経て合格する必要があります。翻って自衛隊時代を思い出しますと、まず昇任試験がありません。正確には幹部以降係長や課長という席はありますが、階級の昇任に伴い自動的にその配置につくことができました。つまりは新任の係長や課長に対する研修がないのです。おそらくそれに変わるものが中級課程と呼ばれたりしているのだと思います。

 また、今の職場では部外講師を招いての講話など盛んに行われディスカッションなども経験してます。しかし自衛隊時代ではそういった経験が無く、研修も所属の警衛士官が行うなとかなり機能として限定されていたように感じます。ただしここら辺の事情としては、自衛隊というのは軍事組織であり他の組織と求められるのは強い規律です。そういった背景もあり一般的な組織に求められるコンプライアンスとは一線をかくすのでしょう。

 だからといってパワハラセクハラなどは言語道断ですが、厳しい指導も時として必要なこともあります。

 そのあたり明確になっていないのと、ある種現場任せになってしまっている部分があるために自衛隊という組織はこれからも大なり小なり不祥事が続いていくのかもしれないですね。

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