03.日本に徴兵制は復活するのか

 平成27年度に安全保障関連法案が成立した際、一部界隈から徴兵制が復活するのではという論調が出た。その時は飛躍しすぎだと鼻で笑っていたが頭の体操も兼ねて日本で徴兵制が復活するのか考えてみた。

 結論だけ言うとほぼあり得ないと思う。


 出だしで終わったが現在の社会構造と自衛隊の軍としての在り方を考えると徴兵制はほぼあり得ないと言い切って良いのではないだろうか。なぜ「ほぼ」かというと他国による武力侵攻を受けた時に前線を維持するため兵力が投入された際、後方部隊の任務を継続するために徴兵もあり得るのではと考えたがそれは予備自衛官という制度がある以上あり得ないと自分ですぐさま否定した。けれども余地はあると考え「ほぼ」とさせてもらった。なお、日本における自衛隊は軍ではないのではないかという突っ込みもあるが諸外国では軍という認識もあるためここでは「軍」として扱う。


 ここからはなぜ徴兵制は復活しないという結論に至ったか述べていく。その前に前提条件の一つとして、ここでは徴兵制に対する世論は除外とさせてもらう。世論を軽視するわけではないが世論は移ろいやすく、正直鳩山由紀夫率いる民主党政権に交代した時の状況を思い出すと、今後の情勢によってはどう転んでもおかしくないと考えられ、こう言っては何だがあてにならない。また、憲法に反しているからという理由も今回は除外する。もっと具体的な内容として論じていきたい。

 

 その徴兵制を否定するに当たり一番わかりやすく有力なのが経済に与える影響であろう。すでに有識者たちの手により理由は語られているが簡単に言うと、ハイテク化されている装備は習熟に年月が必要であり短い年数の徴兵になじまない。また、軍隊というものは基本的に消費集団であり生産性を伴わないと言われることがある。誇張されている部分はあるかもしれないが個人的にはおおむね正しいと考えている。仮に徴兵対象人口が10万人だとしてそのうち2万人を徴兵したとする。徴兵対象人口はそのまま労働人口と仮定した場合その2割が生産活動に従事しないことになる。そうなると経済に与える影響が無視できないことも容易に想像がつく。より詳細な話は有識者の方々により日夜議論されていると思うのでお任せしたい。そこで私の経験なりに日本に徴兵制が復活しない理由について語りたい。

 と言ってもそこまで大それた理由ではないが徴兵され、充足率を100%までに押し上げたとして果たして装備類が人数分足りているのだろうか。海上自衛隊にてそれなりに勤務していた経験上圧倒的に装備や設備、施設が足りない。これが私の考える徴兵制が復活しない理由の一つだ。装備を例にとると自衛隊の主力小銃に64式小銃というものがある。この小銃はその名の通り1964年に自衛隊に採用された国産の武器であるが、その後継小銃である89式小銃(1989年採用)への更新がいまだに終えていない。確かに、現役で使用が可能であれば64式小銃を主力として使用することに違和感はない。それでも後継小銃が採用されてから30年以上も経過していまだに更新されていない部隊があることは非常に疑問が残る。

 また、徴兵された者たちの宿泊場所について不足するのではないかと危惧している。海上自衛隊を例にとると、士は基地内もしくは所属の艦艇で寝泊まりすることが義務付けられており、外泊は許可が下りれば可能だが基本的には一人ひとり部屋や寝具が割り当てられているはずだ。現状充足率が足りていない状況が常態化していると、破損したり古くなった備品は処分され差し迫った状況でもないので補充されていないのではないだろうか。

 さらに上げると制服についても自衛官には一定年数ごとに貸与という形で支給されるが、これの保管場所を考えると不足するのではないだろうか。例えば徴兵による期間が2年間だとして、2年後の除隊時に制服等を返却したとする。その返却された制服を次に入隊する徴兵された者たちにそのまま支給できれば良いがサイズがそのまま流用できるというのは楽観視が過ぎる。余分に保管する場所を確保すればよいというのも楽観視が過ぎるし使用されない状況が続けば劣化してそのまま廃棄される可能性もある。

 

 その他にも様々理由が考えられるが一言で言うと現在の自衛隊の組織としての在り方が徴兵制に対応できるものではない、というのが私が考える日本で徴兵制が復活しない理由である。

 正直な話予算が付ければこれらの問題点は解決すると考えるが現時点で予算が不足しており、これから増額されたとして必要な部分に割り当てられていくことを考えれば少なくともすぐにという話ではないだろう。

 ぶっちゃけた話自衛隊という組織として予算の使い方や割り振りの仕方が頭おかしいと思う部分がいくつかあるがここでは語らないでおく。

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