第10話夏休み

「んあー...よく寝た... ん?今何時だ?」

夏休み初日、学校が長期休みということもあり、スマホで動画を見まくり夜更かしをしたところ、起きた時間は18時を回っていた。

「うわー 俺寝すぎだろ」

ベッドから体を起こし喉が渇いていたので、何か飲みに台所の冷蔵庫の中を物色する。

「コーラとか炭酸しかないのか」

俺は昔から炭酸を飲まない なんかあの喉にくるシュワシュワが俺には無理なようで決して飲めないのではない飲まないのだ。

買いに行くのもめんどくさいし、諦めて水道水でも飲むか、美味しいわけじゃないが日本の水道水って飲めるから良いよね

「腹減ったな 何か食べもんないかな」

俺は家事などは何もしないので、どこに何があるかというのはよく分からない。

とりあえずメールで母親に何か食べ物ない?と送っておく。

さーて目も覚めたことだし、動画でも見るかーとまたベッドに横たわり、動画を見始めた。

動画を見ているとスマホの通知で、もうすぐご飯だから我慢しなさいというごもっともな返信が来た。

「仕方ないご飯まで我慢するか〜」

改めて思うがニートになったらこういう生活ができるのだろうか。

真面目に将来の選択肢にニートを追加しておこう。


***


やばい何もせずに1週間が過ぎた。

本当に何もしていない昼過ぎに起き、昼ごはんを食べ、動画を見て、風呂に入り、夜ご飯を食べ、動画を見て3時から4時に寝るそんな不登校の時と変わらない生活をしている。

夏休みの初めは休みサイコーなんて思っていたけど、1週間もすると暇になる。

新しい環境になって最初の夏休み今までと、何か違うものになると期待していたが、やっぱり何も変わらない、というか変えられなかったんだ。

もう少し俺が何か行動をしていたら変わっていたかもしれないが、何もやらなかった俺は何も変えれなかった。

何もすることがなくどうしようか考えてると、スマホに通知が来る。

「翔 海泳ぎ行かない?」

ちょうどいいと思い

「いいよ」と返信する。

俺にメールを送ってきたのは、数少ない友人の1人のたけるだ。

今は14時ぐらいで泳ぐにはちょうどいい時間帯、去年の夏に仕舞った水着を引っ張り出し準備をする。

徒歩5分くらいで海が見え、桟橋の所で飛び込んだりして泳いだりしている。

俺が住む所は田舎なので水着に着替え外を歩いても何も思われない田舎って楽だよね。

「おう久しぶり」

「久しぶり」

「おっひさー」

友達と合流して海に向かう。

健がもう1人誘っていた雅紀まさのりも含めた3人で海に向かう。

「翔ちゃんと学校行ってる?」

健が学校に行ってるか聞いてくる。

「おう たまにサボるけど行ってるよ」

「サボらず行けよ」

雅紀がごもっともなことを言う。

健は中学校3年間、毎日俺を迎えにきていたが、先に行っていいと言って俺は学校に行かなかった。

毎日5階まで上がってきて迎えにきてくれた健には頭が上がらない今も変わってないけど中学の時の俺って本当最低だよな。

「あぁ冷てー」

「やばい めっちゃ気持ちいい」

「ほんと冷たいな」

海水の温度になれるため一度肩まで浸かる。

「そろそろ行くか」

「いくぞー」

桟橋を走りそのまま海に飛び込む、体が沈み水しぶきが上がる。

続いて健、雅紀が飛び込み波に体を揺らされる。

「やっぱ飛び込むの楽しいな」

「めっちゃサイコー」

高さは1メートルちょっとしか無いが、頭から飛んだり、足から気をつけの姿勢で飛んだりする。

飛び込みに慣れてきたら前宙をして飛び込むめちゃくちゃ楽しい。

健が桟橋の端から海にぷかぷか浮かんでる雅紀を見ている。

俺は気配を消し、背後に回り「隙あり」と叫びポンッと背中を押す。

健が気づいた時にはもう遅く、体のバランスを崩して海に落ちていく。

「クソっ やったな」

「よっしゃ 決まったー」

健が海から急いで上がり俺を追い詰める俺はギリギリまで引きつけた後自ら飛び込み海に逃げた。

「俺の勝ち逃げー」

と叫んだ瞬間、俺の目の前には某ヒーローの必殺キックみたいなのが飛んできた。

見事にお腹に命中した俺はぶくぶく泡を吹きながら沈んだふりをするが健も雅紀も見向きもせず桟橋に上がる。あれ?俺このまま放置?ちょっとは心配してくれても良く無い?

限界まで息を止め沈んだふりをしたが、一切見向きもされなかった。かなしい

桟橋に上がり息を整える。

「はぁはぁ あーきついねー」

と振り返ろうとした瞬間マッチ棒みたいな俺を健と雅紀で抱える。

「ちょ ちょっと待て 何する気だ?」

「決まってんだろさっきのやり返しだ」

「いや さっきミサイルみたいに突っ込んできたじゃん しかも雅紀にはなんもしてないだろ」

「まぁまぁ先に始めたのは翔だからな」

「そうそう」

「そうそうじゃねぇ あとで覚えてろよ雅紀 えっちょ待てって」

俺の手と足を掴み横に揺らし勢いを付ける。

ちょっと待てマジで怖い

「せーの」

「123」

「ちょお前らバラバラじゃん」

ズレたタイミングで投げられた俺は空中でバランスを崩し、お腹を海面に叩きつけながら着水した。

やばい今度はマジで沈みそう。

必死に沈まぬよう犬かきで桟橋までたどり着く、俺が上がってくるまでこいつら腹を抱えて笑ってやがった。悪魔だろこいつら

「よし17時だからそろそろ防波堤行って上がるか」

「おう」

「いくかー」

桟橋のすぐ近くに防波堤があり、普段の高さだと4メートルちょっとぐらいだが、海が引いてくると6メートル近くまで高くなる。

そこから飛ぶのが一番楽しい

「さあー誰から飛ぶ?」

「じゃんけんでいいだろ」

「よし じゃんけーんぽん」

負けたのは雅紀だ

「よし雅紀が飛んだら俺たちもいくから早く飛べよ」

とニヤニヤしながら言う

「お前ら絶対飛ばないだろ」

「飛ぶって」

ただでさえ一年振りに6メートルくらいの高さから飛ぶのに、後にたいて飛ぶかわからない俺たちはの反応で尻込みをする。

「ほら早く早く」

さっきの仕返しとばかりに急かす俺。マジ最低

「よし」

雅紀が決心を決めたようで助走をつけるため、一旦距離を取る。

息を吐き大きく吸い込んだ後、走り出し、ジャンプ

大きな水飛沫が上がり、浮き上がるまで少し時間がかかる。

健が顔を出して早く来いと顔で訴える。

「よし 健帰るか」

「おう そうだな」

と後ろを向き雅紀の視界から消える

「おい ふざけんなー」

と雅紀が叫ぶ、俺たちは腹を抱えて笑う

「じゃ俺先行くから来いよ翔」

「おう 多分な」

「来なかったらここからさっきみたいに落とすからな」

「わかったわかった飛ぶって」

怖いことを言ってくる健

「ヤッホー」

健がジャンプし水飛沫が上がる。

次に飛ぶのは俺だ、飛ばないと落とされるから飛ぶしか無いまぁ元々飛ぶ気なんだけどね。

勢いを付けジャンプする

「フォー」

ジャンプし、体全体に風が当たり落ちていく感覚がある。1メートルの高さじゃ味わえない感覚だ着水し海面にバチャーンと手のひらが当たる。結構痛い

いつもより深く沈み浮上するのに時間がかかる。

毎年のように飛び込んでいる海だが何度来ても飽きないまた来年も来るのだろう。

俺たちは程よい疲労感の中、健の家の庭で水を浴び

解散した。

新しい環境での夏休みでは無いが、変わらない今までの夏休みも、心地よく最高だった。

結局暇をしていた俺たちは夏休み中に週に3回ぐらいの頻度で海で泳いだ。もちろん肌は焼け、俺はより一層外国人に近づいたのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る