第4話新たな出会い
先輩と気まずい雰囲気になり、同じ下校時間を出来るだけ避けるため、学校の図書館に通い始めた。
本を読むのは好きなので、姉が仕事帰りに迎えに来てくれるのを待つことにしたのだ。
3時過ぎに終わる学校なのでそれから、6時まで本を読んだり、映画を見たりと、意外に放課後図書館生活は、楽しかった。
そんな楽しいぼっちライフを過ごしていた俺に、少しイラっとする出来事があった。
それは、いつも通りに寝たふりをしてクラスメイトの話を盗み聞きしている時だった。
「どんな人がタイプなの?」
あからさまな高校デビューみたいな奴がクラスの女子と話していた。
「わかんなーい」
「んーじゃあさー 隣にいる奴とかかっこいいじゃん どうなの?」
ん?隣?俺じゃん なんだよこいついい奴なのか?
男にかっこいいと言われても嬉しくなんかないが隣の女子が俺のことをどう思っているか、それ次第では、今後の学校生活の楽しさが変わる!
「いや 別にどうでもいい」
あれ?おかしいな欠伸してないのに涙が出てくる。
よし 学校辞めるか...そんなことを本気で考えてると
「そっか〜まぁそうだよね それじゃ今度一緒に遊び行かね?」
と高校デビューのやつが女子を誘っていた。
なんだろう 殺意が湧いてくる。
そうだよなよく考えれば俺悪くねぇじゃん。
なんで俺が学校辞めなきゃいけねぇんだよ。
告ってもない女子に勝手に振られ、メンタルやられたのはこいつのせいじゃん。
クソったれ、人が寝たふりしてるのをいいことに好き放題言いやがって ぶっ○ろすぞ!。
冗談です。
すみません俺にそんなこと出来る度胸はありません。
こんなことがあったのだが、最近、この高校デビューこと
なんだこいつ鬱陶しいな イラっとする出来事以来、俺はこいつがあまり好きじゃない。
多分だか、俺の周りをうろちょろする理由はなんとなく分かる。
俺が通う定時制の高校は、元不登校や他の高校を中退して転入してくる人、ヤンチャをしていた人などがよく来るのだ。
大抵は夜間部にヤンチャをしていた人は行くのだが、俺がいる昼間部にも一定数いる。
そのヤンチャをしていた3人組くらいの奴と寺田は一緒に居たのだが、義務教育ではない高校ではすぐに、居なくなってしまうのだ。
1人になり、いかにも高校デビューで陽キャを演じている寺田は、周りからあまり、よく思われていなかった。
そんな寺田に、少し同情して、普通の対応をしたのだ。
これで俺は、学校で少し喋るクラスメイトをゲットした。
放課後図書館に通っている俺に着いてきて、本も読まず、あちこち図書館をフラフラしている寺田は、楽しいのだろうか?と俺は疑問に思っていたのだが、杞憂だった。
この図書館は地域の人に解放されており、お年寄りや子供、社会人などもちらほらいる。
寺田は、近所の子であろう学生の女の子と仲良く話していたのだ。
あいつ最初はいつも良いんだよな。
というのも、告っていない俺を振った女子も最初こそこいつと一緒に居たが、いつの間にか居なくなっていた。
まぁ俺は、1人で本を読んで過ごすとしよう、そう思っていたのだが、寺田ともう1人女の子が俺の元に近づいてきた。
「どうも、初めまして」
え?俺?俺に話しかけてるんだよな?
「ども、初めまして」
いきなり話しかけられるとは思っていなかったので少し噛んでしまった。
「こいつはさっき話した翔 俺の友達だ」
いつからお前の友達になったんだよ。
女子が苦手な俺にヤンチャをしてそうな女の子はきつい、正直帰りたかったが、まぁ寺田の知り合いだし、適当に対応すればいいか そう思い俺は、本を読み始めた。
寺田と女の子が俺の目の前で話す え?何 俺は何を見せられてんの?そう思っていたが、静かに本を読みながら聞き耳スキルを使っていた。
どうやら女の子の名前は
たまに、俺に話しかけてくる佳華だが、俺は自他共に認める捻くれた性格の持ち主なので年上などには敬語を使うが、年下には人の揚げ足を取る喋り方が基本だ。 俺最低だな
だが、佳華はそんな俺と笑いながら話してくれる。
何こいつ見た目はちょっと怖いけど可愛い
少しして、図書館を出ようとする2人。
俺は、そのまま本を読んでいようと座ったままだったが、佳華が俺の服を引っ張って図書館から出そうとする え?俺カツアゲでもされんの?そんなことを思いながら図書館を出る。
それにしても、女の子に服を引っ張られるのってなんか良いですよね?
図書館の裏に門があり、そこから学校を出ることができる。
すぐ近くの小道に入り2人が階段に腰を掛ける。
寺田は、ポケットからタバコを取り出し、佳華に一本渡し吸い始める。
おいおい未成年だろ?お前ら
「翔も吸う?」
「いらん」
吸う?じゃねぇよ見つかったらやばいだろ バカなのかな?。
「別に美味しくないだろ?タバコって」
「めっちゃ 美味しいぞ!」
「別に美味しくはないよ」
「へぇ〜」
寺田は多分イキって最近、吸い始めたのだろう。
美味しいと言いつつ吸い方がぎこちない だが佳華の方はなんか前から吸っていたような吸い慣れている感じがする。
「美味しくないなら吸うのやめなよ」
寺田の方はどうでもいいので、何も言わないが、佳華の方は年下ということもあるのだろうが心配になった。
佳華は何も言わず吸い続けた。
「俺、見つかりたくないから図書館に戻ってるな」
見つかって問題になりたくないので、図書館に戻ろうとすると、タバコを吸い終わった佳華が後ろから着いてくる。
寺田の方はもう一本吸うとか言っていたので、置いていく。
「お前ヤンキー女だったのか」
「ん?なにそれひどくない?」
「ひどくない 実際そうだろ?タバコ吸ってるし俺より全然男らしいからな」
「私女だよ! そんなにいうならタバコやめるよ でも、私もこんなウザい先輩初めて会ったし」
「ウザいって俺みたいに、優しい先輩そうそういないぞ?」
「そういうとこだよ」
図書館に戻る道そんなくだらない会話をした。
なぜだろう 俺がチョロいとかではなく、本当にふと思ったんだが、佳華とは初めて会った気がしない前からの知り合いみたいな感じなのだ。
そう思っていると
「翔って、初めて会った気がしないよね」
佳華が突然、俺が思っていたことを言った。
俺も同じこと思ったと言いたかったが、言葉が詰まり
「初めて今日あっただろ その年でもうボケたの?」
などと捻くれたことしか言えなかった。
「怒るよ 女の子にボケた?とか」
「ごめんごめん」
その後も図書館に戻り、2人で少し話をした。
女子と喋ってこんなに落ち着いて楽しかったのは初めてのことだった。
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