入学式:朝食
ゼファール公爵家の食卓に5人の家族が集まっていた。ゼファール家当主セルト、その妻イリア、次女ミリア、三女クレア、養子ヒイロはそれぞれ自分の席について朝食を取りつつ会話を楽しんでいた。ミリアの隣の長女が座るべき席には花が飾られてあり、すでに死んでいることが伺えた。
イリアとミリアはよく似ていて黒目黒髪長髪の美女と美少女だった。セルトとヒイロとクレアは緑目緑髪のナイスミドルと美少年と美少女だった。髪型はセルトとヒイロは短髪でクレアはミディアムパーマのフワフワな髪に大きなリボンをつけていた。年齢は13歳だが、より幼い印象の少女だった。
ヒイロはミリアと同じ15歳なので、一緒に学園に入学する事になっていた。
イリア「ミリア、どうしたんです?はしたない」
ミリア「え?何がです?」
イリア「そんなにガッツいて食べるものじゃありません!」
ミリア「はぁい」
イリア(何か変だわ。昨日までと明らかに魂の色が違う……。あの色はまるで……。そう、ようやく目覚めたのね)
セルト「今日は入学式だったな、私は行けないが楽しんでくるんだよ」
ミリア「ありがとう。お父様」
セルト「ミリア、お前は自慢の娘だ。どこに出しても恥ずかしくないよう育ってくれた。私は嬉しい」
ミリア「お父様とお母様のおかげですわ」
ヒイロ「姉さんは、アルト様と一緒に登校するんですか?」
ミリア「いいえ、学園の正門で待ち合わせしてるわ」
ヒイロ「そうですか、では僕は正門まで御一緒しますね」
ミリア「アルトとの婚約は解消する事にしたから、教室まで一緒でも良いわよ」
ヒイロ「え?なんで?」
イリア「ミリア。予知夢でも見たの?」
セルト「ミリア。どういうことだ?」
ミリア「予知夢を見たのです。アルトは私を裏切ります」
イリア「まあ、そうなのね。じゃあ、仕方ないわね」
セルト「そうなのか……。誠実な方だと思っていたんだがなー」
クレア「意外ですね~。お姉さまのこと大好きだと思ってましたのに」
ヒイロ(姉さんが婚約破棄?本気か?もし、本気なら僕にもチャンスが……)
ヒイロはミリアに恋をしていた。ヒイロはミリアとクレアが他家へ嫁ぐことが決まってしまったが故にゼファール家に引き取られた養子だった。ヒイロがミリアに出会ったのは12歳の時だった。その時に一目ぼれし、婚約者がいることを知って落胆していたのだが、この日、ヒイロに希望がもたらされた。
ヒイロ「予知夢を見たのなら仕方ないね。僕が教室までエスコートするよ。姉さん」
ミリア「エスコートするのは良いけど、私、まっすぐ教室に向かわないから、そのつもりでね」
ヒイロ「良いよ。どこへでもお供するよ」
ミリア(ヒイロも攻略対象の一人だったわね。私に恋心を抱いて叶わぬ恋の苦しみから逃れるためにプレイボーイになってしまった哀れな弟よ。希望を与えてやるから真っ当に生きるんだぞ)
ミリアはヒイロを異性として意識していなかった。12歳の頃に出来た弟を自分の家来のように扱ってきた。前世の記憶が蘇ってもそれは変わらなかった。
イリア「そう、アルト様と別行動するのね。じゃあ、アラン。アルト様とミリアが一緒に居ないときは、あなたがミリアをしっかり守るのよ?」
アラン「畏まりました」
アランは黒目黒髪短髪のどこにでもいる普通の少年だった。年齢はミリアと同じ15歳、5歳の時、セリアが死んだ後で買われた元奴隷の使用人だった。彼は、幼少より戦闘術を叩きこまれた暗殺者だった。
ゼファール家に仇名すものを秘密裏に殺害していた。初仕事は12歳の時だった。そのころから何人殺してきたかを彼は数えていない。だが、『ゼファールの死神』と呼ばれるほどの実力者になっていた。
ミリア「頼んだわよ。アラン」
アラン「はい、お嬢様」
アランは無表情のまま答えた。
ミリア(アランも主人公の攻略対象だったわね。でも、レイラがショタコンだったなんて意外だったわ。主人公にとって、アランルートはいばらの道、なんせライバルのレイラは『ゼファールの炎帝』と呼ばれる凄腕の魔法使い。最終的に主人公は彼女に決闘で勝利する必要がある。難易度で言えば、アランルートが一番バットエンドになりやすいのよね。主人公がアランを選ばないことを祈るしかないわ)
セルト(さて、アルト様との婚約破棄か……。まあ、国王陛下はアルト様の結婚相手は、それなりの家柄ものであれば誰でも良いというスタンスだし、アルト様も破棄されたからと言って報復なさる方でもない。ミリアの好きにさせて問題ないな。イリアも反対していないのだから大丈夫だろう)
イリア(セリア。これからたくさん辛いものを見るでしょう。逃げたくなるような敵にも出会うでしょう。でも、たどり着きなさい。あなたの本当の未来に……)
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