いつもの彼



▲作者まえがき


バグ? か私のポカミスで投稿後すぐに下書きに戻っていました。申し訳ない……。









「――二奈?」


「!?」



心臓が止まるかと思った。


彼の声だ。



「そんな驚いた顔されたら傷付くな」

「いつ、から」


「ついさっき。玄関の鍵あけっぱだったよ、気を付けてね」



良かった。大丈夫だ。

聞かれていない。大丈夫。



「ねえ二奈」

「な、なによ」


「涙出るぐらいのあくびって……そんな眠たかった?」

「! そ、そう!」


「今日は昔みたいに、同じ部屋で寝ようか」

「えっ」


「あごめんやっぱ」

「……さきお風呂入ってくる」

「りょ、了解」





「別に……髪乾かすのぐらい自分でやるわよ」

「そっか、もう中学生だもんね」

「もう三年生。来年には高校生よ」

「時間が過ぎるのは早――」

「ん。気が変わったわ」



我ながら行動がめちゃくちゃ。

でも、彼は「そっか」とだけ言ってドライヤーを受け取る。


優しい声だった。

変わらない、彼の。


安心するそれ。



「……うまいじゃない」

「どうも」



小さい頃と変わらず。

優しい、その手つきが私は好きだった。


三年前? いやもっと昔のこと。

まだ一兄が私と一緒に居た頃は、毎日そうしていたのに。



《――「いちにー!」――》



今は……あの小さい子供にそうしているんだろうか。



「ありがと。良いドライヤー使ってるのね」

「こんな髪色だから。痛まない様に気を付けてるんだ」

「そう。ずいぶん変わったのね」

「……うん、色々あって。二奈も大きくなったね」

「一兄に比べれば、私なんて変わってないのと一緒」



笑みを張り付けながら、彼の寝室に戻る。

ぐちゃぐちゃにしてしまった本がそこにはあった。



「……これ、ごめんなさ――」

「ははっ家出る前に読み漁ってたっけ。ごめんね汚くて」

「え、いや、その」

「部屋も綺麗にしないとなぁ。お恥ずかしい」



呟きながら、そこに落ちた本を本棚に戻す彼。

その声も、変わらず優しい声で。



「……確かに。そこの水なんて、災害に備えてるにしては多すぎるわよ?」

「はは! そうかな。早めに飲み切るよ」

「ええ。一本もらいましょうか」

「どうぞ」

「ん……美味しいわねコレ」

「そう? “ただの水”だよ。お風呂上りだからかな――よいしょっと」



来客用布団をクローゼットから出し、ぱんぱんと叩く。



「じゃあ寝ようか。二奈はベッドが好きだったよね」

「い、一緒が良い」

「! そっか。じゃあ布団の方が良いか」

「……そうね」

「落ちちゃうからね」

「分かってるわよ」



中学生なのに、小学生低学年みたいな。


自分でも何を言ってるのか分からない。

ただ、それを受け止めてくれる兄に甘えた。



「おいで」



掛け布団を敷布団に掛け、兄はその中に入って誘う。

……包まれるそれ。知らない香り。



《――「いちにー! 早く早く!」――》

《――「もう、急いだらカメラがブレちゃうわよ」――》



きっと、一兄の女友達。

もしくは、あの小さな子供が来た時についたのだろうか。


私よりもずっと可愛い、愛嬌のある彼女達。

彼と一緒に笑っていた。



「……っ」

「大丈夫? 二奈」

「ごめん、なさい。大丈夫」



ああ、もう。

全然私、兄離れ出来てない。


最低な自分は――未だに、兄に戻ってほしいと思ってしまっている。


ずっと一緒だった時の彼に。

私だけに優しかった彼に。

“私が知っている”彼に。



そんな事、もうあり得ないのに。


そして、それはお互いにとって良くない事だと分かっているのに。




「……おやすみ、二奈」




自己嫌悪と睡魔が合わさっていく中で。

昔と同じ。いつもの彼。


暖かい手が、すっと夢の中へ誘ってくれた――









【>>5で俺は変わろうと思う】


1:名前:1

ごめん皆

俺嘘ついてたんだ


2:名前:1

家族に今の姿を見られて、家族は明らかにショックを受けてた

見た目だけじゃない。様変わりした部屋も減り過ぎた預金残高も


3:名前:1

全部知られてたよ 

大事な家族も泣かせるほどに悲しませた


だからもう良いんだ 短い間だったけど夢みたいな時間だった


楽しかったよ


4:名前:恋する名無しさん


5:名前:恋する名無しさん

いきなりどうした


6:名前:1

『安価は絶対』はこの掲示板において守らなきゃいけないルール


髪は黒に完全に戻すことにして、趣味も何個かは諦めなきゃいけなくなった今 

もう俺はこのスレに居る資格がない


7:名前:恋する名無しさん

ちょ待てって


8:名前:1

本当に付き合ってくれてありがとう


9:名前:1

30近く続いたこのスレッドだけど 今日をもって終わりにさせてくれ


10:名前:1

それじゃ!

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