パパ助けて
《――「リオ達今日は仕事なんだー。打合せだけだけど☆」――》
《――「じゃあな東町、そんな思いつめんなよ」――》
ありがとう、頑張ってね……そんな台詞を言ったっけ。
帰り道と休み時間の間ずっと構っていただいた(敬服)二人に感謝を心の中で呟く。
「こっちも頑張らないとな……ただいま(重)」
とんでもなく重い扉(体感10000万t)を開けて、家に戻る。
中途半端に片付けた部屋がお出迎え。
……そして、どことない寂しさが俺を覆った。
《——「一兄」——》
ああそうか。昨日まで、ここには家族皆で居たんだっけ。
一人は気絶してたけど。
母さん大丈夫かな……昨日の記憶全部飛んでたらそれはそれで。
……いや駄目だろ、もう一回あのショックを味わわせるのは!
「……」
クローゼット、掛かったその服を眺める。
日曜日まで後水木金土……今日入れて五日か。
それならもういっそ、それまでコイツを満足行くまで着てやろう。
《——「俺はお前と話をする」——》
「はぁ……」
話、といっても。何をどうするかなんて全く決まっていない。
あの時は父さんしか居なかったからまだ楽だったけど、次は母さんも居るんだよな。
……俺、どうすりゃ良いんだろう。
先延ばしにしたのを失敗とすら思える。
大事な友達。当然ながら、それらと家族は別だ。
父さん達が知っている俺は、紛れもなく高1……妹に至っては恐らく中3で止まっている。
“この”俺を見て、あんな反応をするのは仕方ない事だ。
「行こ……」
重い足取りのまま、賑やかに音の鳴る方へ。
そうすれば、きっと何かが見えるような気がしたから。
この静かな空間から、逃げたかっただけかもしれないけど。
☆
駅で電車に乗って。
明るい17時の太陽の光が跳ね返る、黄金色の扉を開けた。
なぜかこっちは偉く軽い。
ダンボールか何かで出来てるのかな(クソ失礼)。
「おっ。虹色ボーイじゃん」
いつもの受付のイカツイ系兄さんが応対してくれる。
「お前……今日は張り切ってんな……」
「ど、どうも(照)」
「まさかそんなファッションも出来るとはなあ。お前らしくない、似合ってるが」
「どうも……」
そういえばこんな姿だけど、一番“らしい”この場所には足を運んでいなかった。
「でも急に背伸びすぎだろ……成長期すげーな」
「いやこれそういう靴ですけど……」
「は?」
「Magic Shozeです(ドヤ顔)」
「頭だけじゃなく足もメルヘンになったか……」
俺どういう認識なの?
これはよろしくない!
恥を承知だが、片足だけ脱いでそれを見せた。
……今だれも来てないよね?
「いやほんとマジで伸びるんですよ、ほら」
「……それ足しんどくね?」
「“代償”としては軽いです、ね――(悲しき能力者並感)」
「まあお前今オレより高いもんな」
「はは、まあ……」
「なんかムカついてきたな」
「まあまあ(焦)、これ入場料です……」
ちょっと怖くなったのでお金を取り出し、さっさとお兄さんに渡す。
だが、それは受け取られる素振りもなく。
「あっお前VIPだから」
「え」
おい今なんて?
「VIP客は金取らねーのよ」
「い、いやいやいや。何も聞いてないんですけど……」
「まぁ何も考えなくて良いんじゃねー? オーナーお気に入りだからなお前は」
「えぇ……」
「でも酒飲めねぇしな。代わりにドリチケ、タダでやるよ」
「勘弁して下さい(滝汗)」
「ハハハ! VIP様の御入場〜!!」
「いやもうほんとマジで(必死)」
VIPなんてちらっとしか聞いたことない。匿名掲示板のアレじゃあるまいし(激寒)。
まず、そんなにお金ココで使ってないんだけど。
一番安い『水』しか買ってないんだけど?
……クソ客だろ俺(今更)。
そんな俺がVIPとか、周りの人から殺されませんか?
☆
「ぎゅー★」
「ォ゛……」
さて踊ろうか、なんて意気込んだ瞬間のこと。
少し前見た――その吸い込まれる様な瞳が、視界に映った後。
気がつけば目の前にいた。
言うまでもなく、羽織さん……ハオさんが。
何か妖術でも使われた?
「なんで目逸らしたの★」
「いやいやははは(冷汗)」
耳元、ブラックホールASMR(失礼)が響いていく。
オーナーなんだよなこの人。じゃあ俺をVIPにしたのもこの人……当然だけど。
「っと、まあ良いか! その格好見れたし許してあげる★」
「え」
「ずっと見たかったんだよね!」
その格好?
なんで知ってるみたいな言い方?
って違う! まずアレだ。
「びっ――」
「VIP会員のことだよね★」
「は、はい」
「ハオさん、君のファンみたいなもんだから。オーナー権限でVIPにしちゃった★」
「えぇ……」
ファン……? 回転するのかな(IQ5)。
つーかブラックホールさんなんだから吸う側だろ(バカ失礼)。
って――考える時間なんてない。
「あと君、もうココの名物みたいになってるし」
「(理解不能)」
「まっそういうことだから! 行こ行こ★」
手を引く彼女が向かう先は、このクラブの未界域。
煌びやかな装飾が並ぶ、高そうなソファーが並ぶ場所。
周りには大量のボトルが。
クラブは普通立ちっぱなしが普通である。
なのにここだけは優雅な劇場の様に座って楽しむ場所。
まるで踊る平民を見ながら酒を嗜む貴族。
確かVIP席ってやつだよコレ!
「驚いてるねー★」
「いやいや……」
ちらっとみた料金表、桁は5つ。
俺なんかが入っちゃけない場所だろここ……。
「貸し切りでーす!」
「今はたまたま、そういう人が居ないだけですよね?」
「“た ま た ま”そうみたいだね★」
「ははっ(恐怖)」
「フハハハハハ!」
「 」
「まーこの時間だし気にすんなって★」
やっぱりこの人恐ろしい。
多分あの魔王よりも。財力あるからね。金だよ金!
「は、覇王様は俺に何をお求めで……」
「君の実力、見てみたいと思ってね」
「はい?」
え、何俺今から闘うの?
裏から黒尽くめの男とか出てくるとかやめてね(笑い)。
「アレ持ってこーい★」
「「「っス」」」
ぞろぞろ現れるガタイの良いスタッフ×3。
……ある意味黒尽くめの方が良かったね。
え、何その手に持ってる透明の液体は。毒? 酒?
アルコールってね、ある意味毒なんですよ。
まず未成年だし。
これからバーでよくある酒飲み対決でも始まるのかな(笑)。
……。
えっ俺死んだ?
パパたすけて(届かぬ声)。
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