通知
☆
「……まだ、月曜日っすよ……(瀕死)」
「しゃーないココ辺りで勘弁してやるか☆」
「体力ねーぞ東町。もっと食えよな」
結論から言えば、俺の喉は死んだ。
ヘタクソなりに頑張ってたらこれだ。
一方の二人は全く堪えていない。
なんなら途中から二人の歌声を聞く鑑賞会になった。
レパートリーが無いんでね(陰キャ)。
途中からデスボイスの曲歌ったらウケたから良いや……。喉は死んだけど(最後の輝き)。
「腹式呼吸って知ってるか?」
「せ、戦闘はしたことなくて……」
「おまっ体術じゃねーよ。歌い方の方法だ」
「そんなのあるんだね(声ガラガラ)」
「ふはは、まあ慣れてないとそうなるよね☆」
どうやらなんかそういうの(語彙力)があるらしい。
人とあんまり話してこなかった陰キャ男(自己紹介)からすれば、もともとの声量が彼女達とは違うと思うけどね。
「じゃあバイビー☆」
「帰ったらのど飴食えよ」
「ば、ばいびー……(陰)」
「お仕事がんばるぞい☆」
「おう」
で、二人はこれからモデルの仕事らしい。
体力ヤバスギでしょ……。
やっぱこの子達、俺とは違う身体の構造してる。
――ピコン!
「ん?」
そして、狙いすましたかのような通知。
『今日一緒に帰りたい』――そんなメッセージが一つ。
俺は、コンビニでのど飴を買った。
☆
「あー、あー……」
家、最寄り駅のホーム、降りたらもう19時半。
枯れた声なのを再確認。
そして、そのベンチの彼女を見つけた。
「ごめんごめん、お待たせ」
「ううん、急に一緒に帰りたいなんて言ったの、わたしだから……って」
初音さんは目を見開いて俺を見る。
……次に彼女は『その声どうしたの?』って言うね(ドヤ顔)。
「カラオケ行ってたんだ〜」
「ハイ(敗北者)」
「あはは」
常に俺の一手先を読む――流石永世九段初音桃だ(違う)。
部活終わりの彼女は、運動したあとなのに良い香りがする。
……もしかして俺は変態なのか(今更)。
「じゃあ帰ろうか」
「う、うんっ」
「で……なんかあったの?」
「実はね。あのOGを追い払ってくれた時、後輩に見られてたみたいで……」
「え゛っ」
「カラオケから出てくるとこ……その後OGの人達も出てきたから、すぐにわかったんだって」
ま、マジか。
全然気付かなかった。その子は忍者かな。
俺と同じ――“陰”を極めた者、か(中二病)。
「同志が居るとは、ね――(この風、泣いています)」
「? い、嫌じゃないの?」
「同じバスケ部の人なら、OGに告げ口なんてしないだろうし」
「そういう問題……?」
「ま、まあ。あの服は結構気に入ってるし。お守り? みたいなね」
言ってから気付く。
なんでそんな悲しそうな感じ?
「……じゃあ、あの格好で結構遊んでたりするんだ」
「いやそれはないけど……着たのあの時だけだし」
「! そうなんだ〜、だよね!」
……で次はなんでそんな嬉しそうな感じ?
悪い気はしないけど。
「部屋の守り神みたいになってるよ、今は」
「あはは、なにそれ。もったいないな〜」
「じゃあやっぱりいつも着たほうが良いのかな」
「え、えっと〜。それはそれで……」
「……?」
なんというか、さっきから矛盾してるよ初音さん。
……。
いやいや、まさか。
《――「……ほんと、今日のいっちはいっちじゃないみたい」――》
カラオケから連れ出した後。
上目遣いで、頬を紅潮させた彼女。
ほんの一瞬――それが脳裏に宿った。
「なんでもない。いっちが着たい時に着ればいいじゃん、いっちの服だし!」
「え」
「うぅ……」
「じゃあ——今着ようか? なんちゃって……」
間違ってたらただの自意識過剰男だ。
そうは思っていても、ふっと口から漏れた。
「……良いの?」
それは、まるで探していた靴下が手に入ったかの様(朝の俺)。
……そんな冗談を頭に浮かべておかないと、きっと冷静じゃいられなくなる。
何故か『はい』と言う事も出来ず、ただ頷いた。
「はやく〜!」
「じゃあ、俺の家行って着替えてくるよ」
「うんっ」
通りがかった公園の外灯は、ヤケに輝いて見える。
こんな時こそサングラス!
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