通知




「……まだ、月曜日っすよ……(瀕死)」


「しゃーないココ辺りで勘弁してやるか☆」

「体力ねーぞ東町。もっと食えよな」



結論から言えば、俺の喉は死んだ。

ヘタクソなりに頑張ってたらこれだ。


一方の二人は全く堪えていない。

なんなら途中から二人の歌声を聞く鑑賞会になった。


レパートリーが無いんでね(陰キャ)。

途中からデスボイスの曲歌ったらウケたから良いや……。喉は死んだけど(最後の輝き)。



「腹式呼吸って知ってるか?」

「せ、戦闘はしたことなくて……」

「おまっ体術じゃねーよ。歌い方の方法だ」

「そんなのあるんだね(声ガラガラ)」

「ふはは、まあ慣れてないとそうなるよね☆」



どうやらなんかそういうの(語彙力)があるらしい。

人とあんまり話してこなかった陰キャ男(自己紹介)からすれば、もともとの声量が彼女達とは違うと思うけどね。



「じゃあバイビー☆」

「帰ったらのど飴食えよ」


「ば、ばいびー……(陰)」


「お仕事がんばるぞい☆」

「おう」



で、二人はこれからモデルの仕事らしい。

体力ヤバスギでしょ……。

やっぱこの子達、俺とは違う身体の構造してる。



――ピコン!



「ん?」



そして、狙いすましたかのような通知。

『今日一緒に帰りたい』――そんなメッセージが一つ。


俺は、コンビニでのど飴を買った。





「あー、あー……」



家、最寄り駅のホーム、降りたらもう19時半。

枯れた声なのを再確認。


そして、そのベンチの彼女を見つけた。



「ごめんごめん、お待たせ」

「ううん、急に一緒に帰りたいなんて言ったの、わたしだから……って」



初音さんは目を見開いて俺を見る。

……次に彼女は『その声どうしたの?』って言うね(ドヤ顔)。



「カラオケ行ってたんだ〜」

「ハイ(敗北者)」

「あはは」



常に俺の一手先を読む――流石永世九段初音桃だ(違う)。


部活終わりの彼女は、運動したあとなのに良い香りがする。

……もしかして俺は変態なのか(今更)。



「じゃあ帰ろうか」

「う、うんっ」


「で……なんかあったの?」

「実はね。あのOGを追い払ってくれた時、後輩に見られてたみたいで……」


「え゛っ」

「カラオケから出てくるとこ……その後OGの人達も出てきたから、すぐにわかったんだって」



ま、マジか。

全然気付かなかった。その子は忍者かな。

俺と同じ――“陰”を極めた者、か(中二病)。



「同志が居るとは、ね――(この風、泣いています)」

「? い、嫌じゃないの?」


「同じバスケ部の人なら、OGに告げ口なんてしないだろうし」

「そういう問題……?」


「ま、まあ。あの服は結構気に入ってるし。お守り? みたいなね」



言ってから気付く。

なんでそんな悲しそうな感じ?



「……じゃあ、あの格好で結構遊んでたりするんだ」

「いやそれはないけど……着たのあの時だけだし」


「! そうなんだ〜、だよね!」



……で次はなんでそんな嬉しそうな感じ?

悪い気はしないけど。



「部屋の守り神みたいになってるよ、今は」

「あはは、なにそれ。もったいないな〜」


「じゃあやっぱりいつも着たほうが良いのかな」

「え、えっと〜。それはそれで……」


「……?」



なんというか、さっきから矛盾してるよ初音さん。


……。

いやいや、まさか。



《――「……ほんと、今日のいっちはいっちじゃないみたい」――》



カラオケから連れ出した後。

上目遣いで、頬を紅潮させた彼女。


ほんの一瞬――それが脳裏に宿った。



「なんでもない。いっちが着たい時に着ればいいじゃん、いっちの服だし!」

「え」

「うぅ……」

「じゃあ——今着ようか? なんちゃって……」



間違ってたらただの自意識過剰男だ。

そうは思っていても、ふっと口から漏れた。



「……良いの?」



それは、まるで探していた靴下が手に入ったかの様(朝の俺)。


……そんな冗談を頭に浮かべておかないと、きっと冷静じゃいられなくなる。


何故か『はい』と言う事も出来ず、ただ頷いた。



「はやく〜!」

「じゃあ、俺の家行って着替えてくるよ」

「うんっ」



通りがかった公園の外灯は、ヤケに輝いて見える。

こんな時こそサングラス!



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