ネオ・魔王



「ふう……」



月曜日。

良い意味で長かった土日を終えた今、大変清々すがすがしい気分で朝を迎える事が出来た。

コーラ美味いね、かのん様(5)とじゃんけんしたくなってきた。コーヒーじゃない朝も良いものだ。


ボトルシップも一度経験してしまえば意外と慣れる……というわけでもなく、逆に時間が掛かってしまった。

分かっているからこそ一部品一部品拘ってしまう、これがボトルシップ製作の魔力か。



「……とか言ってる場合じゃない!」



そんなこんな。

作業に没頭するあまり、いつもより遅めに出発してしまった。

何度目だよこの失態。


これもボトルシップの魔力か……(怠惰)。





「あっとーまちだ!」

「おう」


「! おはよう二人とも――」



昼ご飯を忘れたので(これもボトルシップの魔力ry)、コンビニにてコンビニ限定パンを迷いに迷っていると声が掛かった。


スーパーに置いてるパンとは違うよ。

値段が(嫌味)。こんな高いなら、もちろん質も違うんだろうね(厄介客)。

まあこれ60%オフなんだけどね(未知との遭遇)。


……なんて。

そんな下らない思考のまま、その声に振り返った時だった。



「……え」



目の前には、何時もの様に金髪でほんの少し威圧感のある夢咲さんと。


……見間違いか?

黒髪の清楚ギャル(柊さんの対義語)が居るんだけど……。



「誰でしょうか☆」

「……柊さん、だよね?」


「違うよ☆」

「えっ」



じゃあ誰だよ。

目なんて合わせられないから確かめようが無いんだけど(童貞)。


髪留めもいつもの星型じゃなくて月だし。

メイクもなんというか大人しいというか。


なんといってもその髪色。

黒なのに眩しい。茶髪のそれより、何故か何倍も。



「ネオ柊だよ☆ カワイーでしょ☆」

「オォ……(消滅)」


「ただの髪染めたリオだぞコイツ」

「なんでそういうこというの」

「やっぱりそうだよね(復活)」


「ほらー復活しちゃったじゃんとーまち」



……それは、俺なんて消えろという事ですか(豆腐メンタル)。

消えます!



「(消滅)」

「で、クラス一の美少女の家に泊まってた感想は☆」

「は?」


「えっあっいや(復活)」

「東町お前……」



か、考えろ。

その言い訳を。

恋愛板――モテ男スレでの内容を――




302:名前:('∀`)

明日女友達の家に行くんだけど


303:名前:('∀`)

〇ね


304:名前:('∀`)

クソがよぉ……


305:名前:('∀`)

気を付けた方が良い事とかあるかな


306:名前:('∀`)

コイツ目見えてねぇのか


307:名前:('∀`)

ま、やっぱ清潔感だよ

清潔感ってのは心がけるものじゃない “着る”ものなんだ

常に纏わせろって事ねw


308:名前:('∀`)

は?


309:名前:('∀`)

実際泊まりにいくならパジャマとかあった方が良い


310:名前:('∀`)

歯ブラシも持っていこう

あとバスタオルも


311:名前:('∀`)

気を許されてからこそ本番

気を付けろよ


312:名前:('∀`)

皆ありがとう 実は嘘なんだ

おかげで女友達の家に泊まる妄想が捗った


313:名前:('∀`)

良いってことよ


314:名前:('∀`)

生きろ


315:名前:('∀`)

強く生きよう





「しっかり寝間着持って行ったよ(威風堂々)」


「……」

「とーまちのパジャマ気になるなぁ☆」


「ところでその髪色はどうしたの(完璧な話題転換)」

「……」

「これは今日の仕事の都合でね——」



よし、完璧に切り抜けたな!





「……そんな感じで、夜も遅いということで、小さい妹さんの事もあって……」

「「……」」


「もちろん寝室も別で……」

「なるほどな」

「そういうことだと思ったけど☆」



結局、夢咲さんの圧力(1トン)に押されて吐いた。

……いやいや、別になにもやましいことなんてしてないじゃないか。



「で、布団の中には誰が居たの☆」

「!?」


「わっその反応マジじゃん☆」

「東町? お前……そういうのは段階を踏めよ」



えっだからなんで分かるの? もう怖い(恐怖)。

あとその目やめて夢咲さん!!



「き、気付いたら居たって感じでさ。はは(必死)」

「東町、男としてそれは――」

「――まあその5歳の妹さんってオチだろうけど」


「……はい」

「そういうことかよ」



知ってた? なら先言ってくれ……。

朝から胃が痛い。

まるで拷問だ……。



「で、相談したいことってなに? なんでも聞くよ☆」



と思ったら、優しく笑ってそう言う柊さん。

素晴らしい飴と鞭。

これが“魔王”の器か……!



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