趣味は読書です。


読書が趣味というと、逆に趣味がないみたいな扱いをされる世の中。

俺は今、はっきりと趣味は読書と言える。



「……」



設置された横に三人程座れる椅子に座って、ソレを開く。

手に取るのは、色々あって(クソ実写化映画の影響で)読み始めたミステリージャンル。そしてその中でも特に有名な推理ものを手に取った。


大昔、イギリスで生み出された名探偵のストーリーである。

推理もの全てに影響を与えたんじゃないか……? ぐらいに有名なそれ。



「……(面白かった)」



読み始める前は、勝手なイメージで完璧超人のスーパーマン的な主人公だと思っていた。

でも実際には中々の変人だった。女嫌い、薬物乱用、犯罪紛いの行動。無駄な知識は一切付けず助手から呆れられたり。


それでも……一冊を読み終える頃には、既に彼に魅了されていた。

きっと彼がただの完璧超人であったなら、この本を読み進めた後に続編が気になる事はなかっただろう。


そしてこのシリーズが、とんでもない量があって喜ぶこともなかった。ネットで見たけど……主人公を死んだ後、ファンの反発で生き返ってまた続いただけある!



《――「それじゃ、元気で居るのよ一兄」――》



あの沢山の人に囲まれる二奈も。

この本の彼とは言わないまでも、隠したいことや欠点があったからこそ、人が集まっていたのだろうか?

……もしかしたら、俺に見せなかっただけだったりして?


そう思いながら、次巻を手に取る。

そのまま椅子に座って時計を見れば、まだまだ13時には程遠い。

我ながら結構早く読めるようになったのではないだろうか(調子に乗る)。



「………」



で。

なんか視線感じるなと思ったら、詩織さんが横に来ていた。


めっちゃ俺の本見てる。

凄い話したそうだ。まあ、それは後で。



「!」

「……(座る?)」



的なジェスチャーをすれば俺の横に座る彼女。



「……(2冊目? 3冊目?)」



喋らず、ジェスチャーでそれとなく示す。


そうすると、小さな手がパッと開かれた。



「……(5です)」

「(マジか)」


「くく……っ!」



驚いた俺の顔がおかしかったのか、小さく笑い声が漏れた。

慌てて手で塞ぐ姿が、またリスを想像させる(失礼)。

頬にドングリ入ってるのかな(変態)。


流石にジェスチャーとはいえ、これ以上喋るのはよしておこう。



「……♪」



横。ページをめくる楽しそうな彼女にも、きっと悪いだろうからね。





「はーお腹空いたー」

「ですね!」


「い、いただきます」



13時。

図書館に隣接しているレストランにて、少し遅い昼食だ。


立花さんはサラダとパン。

詩織さんはハンバーグ(可愛い)、それのダブル(え?)。


二枚積み重なったソレは中々に豪快である。

しかも大根おろし(ポン酢味)、スゲー。山が出来ておる……。

こんなところでも?

山ガール恐るべし!



「ほんと詩織はよく食べるねー」

「は、はい」

「その小さな身体のどこに消えてるのやら」



流石だ。

多分、食べる時に食べないと山では生きていけなかったんだろう(?)。



「へ、変でしょうか……」

「こっちとしても気分良いから大丈夫だよ」

「ねー。餌包ばるリスみたいで面白いし」

「り、立夏ちゃん!!」



こ、コイツ(失礼)言いやがった……!

俺が長年心の中で留めていたというのに。



「一君はぼ、僕がリスなんて……思ってないですよね?」

「いいえ(はい)」

「思ってるってー」

「!?!?!?」

「うぅ……」



何故バレた。

俺の完璧な嘘パーフェクト・ラックが……!



「リス、可愛いから良いじゃん」

「僕はクマさんが良いです!」

「えー……」

「山の王者です!」



熊の着ぐるみ来た詩織さんが思い浮かんだ。

……全然怖くない! むしろアリである。



「詩織さんは熊も似合ってるよ(温かい笑顔)」

「……そ、そうですか? 嬉しいです!」



その笑顔が見たかった(変態)。

立花さんが諦めた様に笑っているのは見ないことにして。



「一君も、雲みたいな人で素敵です!」



もはや動物ですらないんだけど(モクモク)。

え、何? 浮いてるって? 色々浮いてるね(解決)。


知ってるか……? 曇って近付くと見えないんだよ。



「優しくて、大きくて、柔らかくて……そんな感じというか……」

「く、曇って……ふっ」

「ありがとう(水蒸気の集合体俺)」


もうなんでもいいや、褒められてるし。


「まーでも、東町君は長男でしょ。弟か妹……妹だ。妹居るよね」

「え゛っ」


その時、彼女の目が鋭くなるのを感じた。

なんで確定? いや、合ってるけど……。



「詩織への話し方とかでさ。分かるんだよね」


「長男に多い、真面目で努力家。頼りにされたそうな感じ」


「ココも注文する時も君が店員に声を掛けてたし。あんまりそういうの慣れてなさそうなのに――違う?」



そんな、怒涛の言葉。


まるで刑事ドラマの犯人になったかのように。

背後に滝が見える!


柊さん程の強者的オーラ(?)ではないが。

その代わり、インテリジェンスな何かを感じる。



「違いません(怖い)」



え、ミステリー呼んでると推理能力が身に付くわけ?

もはや怖い。

スケスケだぜ!(バトル漫画並感)。



「えっ一君、兄弟がいらっしゃったんですか!?」



そ、そんなことないかも……。

立花さんがそういうタイプなだけか。



「妹が居て、しかも長男です。見事な推理のお点前、まるで名探偵だ……(感嘆)」

「ん、そう。やっぱりね」

「凄いです!」

「……こんなの、余裕だから」



二人して感服していると、立花さんのツンとした顔が少し崩れた。

心なしか鼻が伸びている。


あっこれ絶対喜んでるな。分かりやすい。



「……論理的思考力と観察力。この二つが“ちょっと”あればすぐ分かるから」


「いやぁ真似出来ないなぁ」

「ですね! もっと一君の事、推理してくれませんか!」

「え」


「ま、正直分かるけどね」

「ええ……」


「良いですか? 一君」

「い、良いけど……」

「ふっ。察してるけど……デリケートな話題は出さないから」



え、俺何を暴露されるの?

怖いんだけど——



「じゃあ——東町君の趣味・・、全部当ててあげようか」



……やめとけ!

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