友達の友達



土曜、掃除の進展としては70%。

新しく届いたボトルシップは説明書を眺めるだけで、手を付けることなど出来ず(掃除しろ)。

日は落ちて。



「……」



寝て、コーヒー(70点)を淹れて、電車に乗って。

あっという間に詩織さんとの約束の時間が近付いてくる。


あまり現実味が無くて、土曜に如月さんの家に泊まった事は夢なんかじゃないかと思えてくる。


……あの小さい初音さん、可愛かったなぁ……。



《まもなく▼□駅――――》



「!」



なんて、昨日に浸っている暇などない。

約束の駅で降り、ポケットに仕舞った定期券を探す。



……ん?


「えっ」


嘘だろ?

え、今?



「な、ない……」



過ぎ去っていく人の中で、俺だけ立ち尽くす。

あったはずの定期券は――そこには無い。

ついでに言えば仕舞っていたパスケースも。


……もしかして、携帯取り出した時に?

……だとしたら、電車内――



《――まもなく発車致します――》



そして、後ろを見れば走り去る車体。


……終わった――



「――あの」

「!?」


「落としてるよ、君のだよね」

「えっ」



目の前には、俺と同じぐらいの年の女の子が居た。

そしてその手には、前見たZ級サメ映画グッズのパスケース(定期券入れ)が握られている。

サメの被り者をした人間が、まるで丸飲みするようなデザインである(¥1500)。


映画一回分より安いなんてお得だね(言ってる場合じゃない)。



「特徴的な定期入れだね」

「はい……(恐縮)」



友達の友達。

名前を確か、立花立夏さん。


カッコ悪い出会い方だ……。



「……行こう?」

「……は、はい」

「東町君も敬語なんだ」

「あ、あー……はい」

「別にどっちでも良いよ」



気まずい。

こういう時、仲良かったらあっちも弄りやすいんだろうけど。


《——「女の子は落とせないのに、定期は落とすんだね☆」——》


……いやまあこんなこと言わないだろうけど。

魔王様はもっと優しいお方(崇拝すうはい)。



「私のことは知ってるの?」

「えっと、立花立夏たちばなりっかさんだよね」

「フルネームなんだ。立夏で良いよ」

「い、いきなり下の名前呼びは(童貞)」

「……ん? まあどっちでも良いよ」

「た、立花さんで……」



俺の女性耐性を舐めないでほしいね(何様)。



「……」

「……」



で、どうすんのコレ?

会話終わっちゃっちゃっちゃっちゃ(焦)。


まだ待ち合わせ予定時刻には5分と42秒。

朝の10時、今や1秒が10秒ぐらいの長さに感じられる。


計算開始スタート——(5×60+42)×10=3420、3420÷60≒60……結果、多分大体60分。

おいおい、実質1時間じゃないか(馬鹿)。

どうすんのこれ(2回目)。



「あ(天啓)」

「?」




195:名前:('∀`)

今日大学初日

会話秘訣大学教授来需


196:名前:('∀`)

エセ中国語やめろ 

ちなみに会話はノリで乗り切れ


197:名前:('∀`)

そのまま溺死しそうなんで助けてください……


198:名前:('∀`)

別に趣味とかでいいやん

大体誰でも一つは持ってるはず


持ってないなら逆に自分の趣味の話でもすれば?


199:名前:('∀`)

趣味は匿名掲示板でクソスレを建てて住民の辛辣な反応を見る事です

毎日一時間はその時間を設けています


どう?


200:名前:('∀`)

こーれはこれは崇高な趣味をお持ちで(笑)

帰ってもらって良いですか(笑)


201:名前:('∀`)

逆にウケそう



やはり、こういう時は趣味の話だ。

しかも今、彼女が本好きだということを詩織さんからは既に聞いている。


……勝った(何に?)。



「立花さんは本好きなんだよね」

「え、うん」

「どういう系のやつを読んでるの?」

「ミステリーかな」

「そ、そうなんだ。なるほど……」

「うん」

「なるほど……()」

「?」

「 」



おいちょっと待て。

この話題、まずくないか? 

もし仮に彼女が大のミステリー好きだとして、最近それを齧り始めた俺が闇雲にそれを話題に上げてしまっては不快になってしまうのでは(高速思考)。


わわわ話題転換だ。



「髪切った? (意味不明)」

「切ってないけど」

「はい……」

「……というか会ったことほぼないよね」

「そうかな、そうかも……」



終わった。



「あのさ」

「は、はい(裏声)」

「別にムリに話さなくても良いよ。無言、慣れてるからさ」

「助かります……(雑魚)」

「うん。詩織ともそういう感じだから」



まあ確かに、詩織さんがすっごい喋る所は想像出来ない。

だとすると何かちょっとモヤモヤする(醜い嫉妬)。

本好きだからかは関係ないけど、あまり話すタイプではないからこそ彼女と仲良くなったのかもな。



「そういえば、詩織さんとは別クラスなのに仲良くなったんだね」

「そーだね。ずっと本読んでるじゃん詩織。話し合うと思って」

「はは、確かに」

「まー、一番最初に目についたのは図書室だけど」

「図書委員だもんね詩織さん」

「いや、そうじゃなくて。虹色の髪の人とひたすら文通? してる子なんて目に付かないわけないじゃん」

「……あ」



そう言われると確かに、全く周囲の目考えてなかったな俺。

まあこの髪色の時点で考える意味ないですけどね(笑)。


……でも、そういう事なら。

俺のおかげで詩織さんに新しく友達が出来た……と思って良いのかな。


流石に調子に乗り過ぎか。



「そこから、別教室だけど詩織の事が目に入る様になったわけ」

「な、なるほど」

「ん。あっ来たよ」


「——み、みなさんお待たせしましたー!!」



と思えば聞こえた声。

安心する、この笑顔。


背景にでっけぇ山が見えるぞ……!





「詩織、図書カードとか忘れてない?」

「大丈夫です!」

「なら良し」

「(なんか姉妹感を感じる)」



高校生が遊ぶ場所として、思いつくのはカラオケボウリングゲームセンター。

なお、全部友達と行った事はない(悲哀)。

カラオケは……あれはカウントして良いのかな。


そして今回3人で行くのは、そんな場所ではなく。



「……俺、図書館に友達と行くのは初めてだよ」

「意外と充実してるんだよココ。レストランとかジムとかあるし、あとプールも」

「お、泳ぐんですか!?」

「今日は本読むって話だったでしょー?」

「あ……良かった(童貞)」



流石に俺の心臓が持たないのでね。

というか持ってきてないし。



「詩織さんとも初めてだよね、ココは」

「……あっ、あ、そうですね」

「?」

「そ、そうですよ?」

「お、おう……」



えっ何今の反応。

え、来たことないよね?


え? 俺記憶喪失? 



「じゃ、13時頃になったらレストラン前集合で良い?」

「了解です」

「はい! それではまたあとで!」



と、いうことで。

俺達は、コレからひたすら読書をします。


学生の鑑!












▲作者あとがき


なーんか☆3000越えちゃってるんですけど……ありがとうございます

はやいうちにとか言ってすんごい時間経っててすいませんでしたorz 

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