一難の前にまた一難



「ねえ、あやのん」

「なに?」

「いっちとかのんちゃん、どこ行ったの?」

「公園に行ってるわね」

「え……二人で?」

「そうよ、机に紙が置いてあったわ。かのんと朝ご飯も食べたらしいわよ」

「え~……かのんちゃんしっかりしすぎでしょ……」

「ふふっ。お皿も洗ってくれてるわ」



朝9時。

部活もない。

そして昨日は、あんまり寝れず――気付けばこんな時間だった。



「……学校あったら大遅刻だね~」

「そうね」

「……」

「なんでそんな不満げなの?」

「うぅ……」

「?」



だって。

せっかく、お泊りした夜の朝なのに。


一緒に朝ご飯とか、歯磨きとか? 顔洗ったりとか。



「なんで顔紅くするの、桃」



……。

やめよう。



「なんでもない」

「なんでもある顔してるわね」

「も~!」

「とりあえず、迎えに行きましょうか」

「うん……というか。この時間、公園人多そうだけど大丈夫かな……?」






小さい子と遊ぶのは好きだ。

昔、妹と遊んでいたころを思い出すから。

兄でいられたその時を思い出せるから。



「にじいろ!」

「にじいろ! にじいろ!」

「さわらせて!」


「誰か……助け……あ(瀕死)」



公園。

最初、かのんちゃんと砂場でお城作り(ガチ)をやっていたところまでは良かった。


楽しかった。

蟻が城の中を駆け巡るのは見ていて寿命が三十秒は伸びた――いやそれは置いといて。


そこからがまずかった。

かのんちゃんのお友達? であろう女の子が集ってきたのだ(絶望)。



「にじいろ!」

「きれー!!」


「はは……(この顔見たら110番!)」



見ろ、あの遠くから見る通行人の顔を。

通報はギリされてないけど。されてないよな?


親御さんはどこ行った? おい世間話してる場合じゃないぞ! 何微笑ましい顔してんだバカ(すいません)。

警察仕事しろ! 普通にこっち見てから去ってったぞ! 絶対前の鉄棒より怪しいだろうが!

……マジ? 誰か俺を捕まえて(不審者)。



「いちにーだいにんきだね!」

「止めて(切実)」



ああ最低だ。五歳の女の子に命令口調とか。

しかしながらマジでキツい。


なんで俺、幼稚園児達にこうべを垂れているんだ……?


わっしゃわっしゃされる俺の髪。

大事にしてね(取扱説明書とりせつ並感)。



「ぴんくもあるよ!」

「えのぐみたい!」

「でしょ!」


「ウッ」



すんごい恥ずかしい。

人によっちゃご褒美(変態)かもしれないが、俺にはただの拷問である。


……ま、この虹色を綺麗と言ってもらえるのは嬉しいけど。



「――さ、流石に引っ張るのはダメ(ガチ焦り)」


「ほちぃ!」

「にじいろ、ぬいちゃだめ?」


「駄目に決まってんだろ(ガチツッコミ)」


「きゃー!」

「あはは! にげろー!」

「おにごっこだー!」



「この徒競走第六位ビリの“俺”から逃げれると思ってるのかね(カス)」



もうヤケである。

こうなったら、とことん遊んでやるとするか(首コキッ)――





「……ハッ、ハッ……(瀕死)」


「大丈夫~?」

「顔真っ赤だけど」


「ゴホ(大丈夫だよ)」



結局、俺は誰も捕まえられなかった(絶望)。


よく考えたら、五歳児の身体にタッチ()は親御さん的に遺憾いかんだろという事で。

ひたすらに追いかけまわしていたら、ただの地獄のランニングとなった。


というか、普通に走力でも負けた。

俺……何歳だっけ?

あの年頃の子、身体の中に原子炉でも積んでるのかね。


しかも今からまだまだ遊ぶっぽくて、かのんちゃんはあのお友達の子の家に行くらしい。

凄いね!


あとは普通に途中から初音さん&如月さん二人がこっちに来てた。

恥ずかしいね!!



「またあそぼーね!!!」

「ばいばーい! にじいろおにーさん!」

「いちにーばいばーい!」


「ッス……(声が出ない)」

「かのん、迷惑かけないのよ! お昼には迎えにいくからね!」



手を振り返す。

やっぱり小さい子供と遊ぶのは好きだ。

でも今回のは……いささかきつかったよ!



「にじいろおにーさんですって」

「教育番組に居そうだね~」


「ッ、はぁ、一緒にしたら、失礼だよ……」


「ふふ、東町君は子供に好かれるのね」

「ね~」


「はは……」



好かれているというか、逆に遊ばれてるだけだと思うけどね。

この髪色もあるだろう。ほんと虹色って凄い。


……。



「はぁ……」


「笑ったりため息ついたり忙しいね」

「これからどうするの? 東町君」

「一緒に宿題しようよ~」


「あー。実は、これ……」



ため息の正体。

俺は、手元の携帯画面を見せる。



東町二奈『来週には帰るから 着いたら連絡する』

東町一『はい』



「……わぁ。業務連絡?」

「思ったより早かったのね……」


「ってわけで、帰って急いでお掃除に取り掛かります……」


「……て、手伝うっ?」

「あら」


「あっその。流石に、いろいろヤバいのがありますので(焦)」



ま、色々とね。

創作関係はマジで見られたら恥ずかしくて死ぬ。



「……あ、ご、ごめん」

「気持ちだけ……ありがとう」



初音さん顔紅くない?

違うよ、本当そういうのじゃないから!



「でも、そんな焦らなくても大丈夫じゃないかしら? 明日も休みだし」

「あー……」



……駄目なのだ。

明日は明日でまた――家族来日ほどではないが、ちょっとアレな(語彙力)イベントがある。



「……明日は……」


「へ?」

「え?」


「明日なんだ……(意味不明)」


「?」

「東町君、大丈夫?」


「はは(助けてくれ)」



手元、携帯に映る――もう一人のメッセージをもう一度確認。




椛『一君、明日は〇×駅集合でお願いします』

椛『立夏ちゃんが、そこが近くて良さそうなので!』




陰キャの人見知りにはかなりきついイベント。

そう、明日は“友達の友達”と遊ぶ日である。


胃が痛い!!!





▲作者あとがき


真夏の投稿祭りである一週間が終わりました、早いですね。お付き合い頂きありがとうございます!


スローペースですいません、日常要素多めだからという言い訳をしておきます。

続きはまた近いうちに! 




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