一難の前にまた一難
「ねえ、あやのん」
「なに?」
「いっちとかのんちゃん、どこ行ったの?」
「公園に行ってるわね」
「え……二人で?」
「そうよ、机に紙が置いてあったわ。かのんと朝ご飯も食べたらしいわよ」
「え~……かのんちゃんしっかりしすぎでしょ……」
「ふふっ。お皿も洗ってくれてるわ」
朝9時。
部活もない。
そして昨日は、あんまり寝れず――気付けばこんな時間だった。
「……学校あったら大遅刻だね~」
「そうね」
「……」
「なんでそんな不満げなの?」
「うぅ……」
「?」
だって。
せっかく、お泊りした夜の朝なのに。
一緒に朝ご飯とか、歯磨きとか? 顔洗ったりとか。
「なんで顔紅くするの、桃」
……。
やめよう。
「なんでもない」
「なんでもある顔してるわね」
「も~!」
「とりあえず、迎えに行きましょうか」
「うん……というか。この時間、公園人多そうだけど大丈夫かな……?」
☆
☆
小さい子と遊ぶのは好きだ。
昔、妹と遊んでいたころを思い出すから。
兄でいられたその時を思い出せるから。
「にじいろ!」
「にじいろ! にじいろ!」
「さわらせて!」
「誰か……助け……あ(瀕死)」
公園。
最初、かのんちゃんと砂場でお城作り(ガチ)をやっていたところまでは良かった。
楽しかった。
蟻が城の中を駆け巡るのは見ていて寿命が三十秒は伸びた――いやそれは置いといて。
そこからがまずかった。
かのんちゃんのお友達? であろう女の子が集ってきたのだ(絶望)。
「にじいろ!」
「きれー!!」
「はは……(この顔見たら110番!)」
見ろ、あの遠くから見る通行人の顔を。
通報はギリされてないけど。されてないよな?
親御さんはどこ行った? おい世間話してる場合じゃないぞ! 何微笑ましい顔してんだバカ(すいません)。
警察仕事しろ! 普通にこっち見てから去ってったぞ! 絶対前の鉄棒より怪しいだろうが!
……マジ? 誰か俺を捕まえて(不審者)。
「いちにーだいにんきだね!」
「止めて(切実)」
ああ最低だ。五歳の女の子に命令口調とか。
しかしながらマジでキツい。
なんで俺、幼稚園児達に
わっしゃわっしゃされる俺の髪。
大事にしてね(
「ぴんくもあるよ!」
「えのぐみたい!」
「でしょ!」
「ウッ」
すんごい恥ずかしい。
人によっちゃご褒美(変態)かもしれないが、俺にはただの拷問である。
……ま、この虹色を綺麗と言ってもらえるのは嬉しいけど。
「――さ、流石に引っ張るのはダメ(ガチ焦り)」
「ほちぃ!」
「にじいろ、ぬいちゃだめ?」
「駄目に決まってんだろ(ガチツッコミ)」
「きゃー!」
「あはは! にげろー!」
「おにごっこだー!」
「この
もうヤケである。
こうなったら、とことん遊んでやるとするか(首コキッ)――
☆
「……ハッ、ハッ……(瀕死)」
「大丈夫~?」
「顔真っ赤だけど」
「ゴホ(大丈夫だよ)」
結局、俺は誰も捕まえられなかった(絶望)。
よく考えたら、五歳児の身体にタッチ()は親御さん的に
ひたすらに追いかけまわしていたら、ただの地獄のランニングとなった。
というか、普通に走力でも負けた。
俺……何歳だっけ?
あの年頃の子、身体の中に原子炉でも積んでるのかね。
しかも今からまだまだ遊ぶっぽくて、かのんちゃんはあのお友達の子の家に行くらしい。
凄いね!
あとは普通に途中から初音さん&如月さん二人がこっちに来てた。
恥ずかしいね!!
「またあそぼーね!!!」
「ばいばーい! にじいろおにーさん!」
「いちにーばいばーい!」
「ッス……(声が出ない)」
「かのん、迷惑かけないのよ! お昼には迎えにいくからね!」
手を振り返す。
やっぱり小さい子供と遊ぶのは好きだ。
でも今回のは……いささかきつかったよ!
「にじいろおにーさんですって」
「教育番組に居そうだね~」
「ッ、はぁ、一緒にしたら、失礼だよ……」
「ふふ、東町君は子供に好かれるのね」
「ね~」
「はは……」
好かれているというか、逆に遊ばれてるだけだと思うけどね。
この髪色もあるだろう。ほんと虹色って凄い。
……。
「はぁ……」
「笑ったりため息ついたり忙しいね」
「これからどうするの? 東町君」
「一緒に宿題しようよ~」
「あー。実は、これ……」
ため息の正体。
俺は、手元の携帯画面を見せる。
□
東町二奈『来週には帰るから 着いたら連絡する』
東町一『はい』
□
「……わぁ。業務連絡?」
「思ったより早かったのね……」
「ってわけで、帰って急いでお掃除に取り掛かります……」
「……て、手伝うっ?」
「あら」
「あっその。流石に、いろいろヤバいのがありますので(焦)」
ま、色々とね。
創作関係はマジで見られたら恥ずかしくて死ぬ。
「……あ、ご、ごめん」
「気持ちだけ……ありがとう」
初音さん顔紅くない?
違うよ、本当そういうのじゃないから!
「でも、そんな焦らなくても大丈夫じゃないかしら? 明日も休みだし」
「あー……」
……駄目なのだ。
明日は明日でまた――家族来日ほどではないが、ちょっとアレな(語彙力)イベントがある。
「……明日は……」
「へ?」
「え?」
「明日なんだ……(意味不明)」
「?」
「東町君、大丈夫?」
「はは(助けてくれ)」
手元、携帯に映る――もう一人のメッセージをもう一度確認。
□
椛『一君、明日は〇×駅集合でお願いします』
椛『立夏ちゃんが、そこが近くて良さそうなので!』
□
陰キャの人見知りにはかなりきついイベント。
そう、明日は“友達の友達”と遊ぶ日である。
胃が痛い!!!
▲作者あとがき
真夏の投稿祭りである一週間が終わりました、早いですね。お付き合い頂きありがとうございます!
スローペースですいません、日常要素多めだからという言い訳をしておきます。
続きはまた近いうちに!
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