空き教室にて
「君が、とーまちの噂を広めたんだね」
「……だ、だから。そんな一気に広がるとは思わなくて」
「……」
「だってほら、事実じゃんか。アイツがクラブに入ってくのを見たわけで」
「彼が“そういうこと”してたの見たの?」
「それは……でも、実際そうだろ!? あんなとこ行く奴らなんて」
「リオもよく行くんだけど」
「え」
「君、リオの事も“そういう認識”で見てるってこと?」
星丘高校、昼休みの空き教室。
二人の少女に連れられた少年の顔は、次第に青
最初は美女二人からの誘いで期待に溢れていたが、今は真逆。
星丘高校、暗い空き教室。
「それは……その……」
「なあ言ってみなよ。リオの事、男遊びしてるビッチだって」
「ひ、柊さんは違——」
「なんだそれ」
「ひっ!?」
柊の、教室では決して出ない低い声に。
情けない音を出す彼は——既に自分の行動を悔いていた。
「おい莉緒。そろそろ良いだろ」
「……はぁ。んじゃ君、二度ととーまちの事で変な噂流さないでね」
「は、い……」
「噂も撤回する様に。じゃ行こ、苺」
「ああ」
次なる二人の目的地は、職員室。
その足取りは重い。
☆
「アレから連絡は来てないわね。きっと寝てるわよ」
「……そうですけど」
「……」
職員室、彼女達の担任の声を聞く二人。
「ふふっ、この質問3回目なのよね。そんなに心配だったかしら」
「え」
「椛さんと、如月さんと初音さんからも聞かれたわ。ほんの軽い“頭痛”だけらしいから、そんなに心配しなくていいわよ」
「……そうですかね」
「……ありがとうございました」
「? ええ」
ほんの少し歯噛みをして、二人は職員室から出る。
莉緒はため息を吐いた。
担任との食い違いを感じたから。
その“頭痛”の理由が問題なのだ。
《——「俺に、話しかけないで」——》
彼女の耳から離れないのだ。
その、低い彼の声が。
——バタン。
職員室から出て、二人は歩く。
「アタシが東町と距離を置くなんて言わなければ、こうはならなかったよな」
「そうだね」
「……スマン」
「謝る相手が違うし、リオも甘く見過ぎてた。リオも悪い」
(水曜の時点で、彼に気付くべきだった)
思えばヒントは散らばっていたのだ。
何度も兆候はあった。
まさかここまで追い込まれているとは、予想出来なかった――その後悔は何度目か。
――ガララララ。
2-A教室。
彼女達がそこに戻った時、ほぼ男子全員は不機嫌そうな柊を見て怖気づいていた。
“次は自分じゃないか”、なんて。
「……はぁ」
(つまんない男ばっか)
また彼女はため息を吐いて――瞬間。
ピコン、と着信音。
「えっ」
「莉緒も来たか?」
□
リオ☆『とーまちー大丈夫?』
東町一『ありがとう 大丈夫だよ』
□
彼女がスマホを見れば、着いた返信。
彼からのそれ。
朝から、全く音沙汰なしだったが……。
「ど、どうしよ……なんて打つ?」
「普通に聞きゃ良いんじゃねーか」
「いやいや! 地雷踏んだらヤバいじゃん!」
「そうか?」
「そうだよ!」
「……ま、待ってるぞ……とかか?」
「それ逆に来づらくなるやつ!」
「どうしろってんだ……」
「わかんない!!」
キーンコーンカーン――
「って予鈴なった――ってもうアレだよね!?」
「ダンスの発表だな」
「わーもーまともに踊れないよ!」
慌ただしく、彼女達は鞄を手に更衣室まで走っていく。
(返信来たって事は、嫌われてないよね?)
その疑問は、未だに晴れる事は無いが。
彼女達の表情は――着信前より、ずいぶんと明るくなっていた。
▲作者あとがき
お察しの方もいるかもしれませんが
イッチが峠を越えたので、更新スピードはゆっくりになってます。
毎日更新は変わりませんが。一気に6話はやり過ぎた。
でも今日はもう一話投稿します!
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