『恋愛映画』



320:名前:1

と、いうわけで(唐突)

日曜のバイト終わりに映画見に行きたいと思います


321:名前:1


選択肢


1.話題の恋愛映画

2.定番のヒーローものハリウッド映画

3.何とかの大賞を取った青春ものの邦映画

4..名作映画に名前だけよく似たパクリ(倫理的にアウト)

5.ハリウッド、史上最低評価のファンタジー映画(批評家曰く“高級なゴミ”)


>>330で


322:名前:恋する名無しさん

何個まで?


323:名前:1

複数選択が前提なのやめてくれないかな(死)


324:名前:恋する名無しさん

バイト終わりだしね


325:名前:恋する名無しさん

うーん 迷うな


326:名前:恋する名無しさん

い、1で……


327:名前:恋する名無しさん


328:名前:恋する名無しさん


329:名前:恋する名無しさん

たまには、こういうのも良いんじゃない


1で


330:名前:恋する名無しさん

1


331:名前:1


332:名前:1

お前ら本当にお前らか……?





《好きだよ》

《わ、私も……!》



「……」



と、いうわけで。

バイト終わり……一人悲しく恋愛映画を見る男(不審者)。

キスシーンをまじまじと眺めています。


……ま、俺からすれば甘すぎる(厄介客)。

Z級映画にてサメ同士のそういうシーン(思い出したくない思い出したくない)を見た私からすれば、ね。

子供みたいなもんよ(経験ゼロ)。



「……」



率直に言おう。あまり感情移入は出来なかった。

ま、結局はイケメンと美女の恋愛である。もう遠い遠い!

どこが陰キャなんだよ男前が眼鏡掛けただけじゃねーか(暴論)。


煽り文句に、冴えない青年の成り上がり感動恋愛巨編! 

とかあったけど、その高身長&イケメンの時点でもう冴え冴えですよ。悔しい(嫉妬)。

感情移入なんて無理どす……。


ま、だからこそ客観的に評価が出来るのは良い点だ(批評家気取り)。



「はぁ……」



ま、でも。

最後に二人のヒロインから主人公は一人を選ばなきゃならないんだけど。

彼の選択にはホッとした。


感情移入……ほんの少ししてたかもな。

なんて。

エンドロールが終わって、場内がほわっと明かるくなって。



「!」



席を立った時、前に見知った顔があった。


バスケ部の二人と居る初音さん。

少し見えた顔は紅く——手でそれを隠すように覆っている。


それは、まるで。

スクリーン。

映画の中。そこに居た“彼”に――



「っ」



悪い気がして、俺は走って映画館から出た。



《――「やっぱり俺、お前が居ない未来なんて考えられない」――》



……やっぱり、初音さんもああいうイケメンが好きなんだろう。顔を手で覆うなんて。どれだけ紅くなってるのやら。

あんな臭いセリフでも、顔が良いと破壊力抜群なんだろうな。


スクリーン上なのに、俳優ってのは凄いね。

俺はあんな風に身長も高くないし、顔も良くないし。

本当に世界は理不尽だ……悔しいけどそれが世の摂理。


結局俺に、恋なんて——好きになってくれる人なんて——もっと言えば彼女など、出来る未来は無い。そう確信した。

ほんの少しは、女の子から“カッコいい”なんて思われたい人生でした(END)。



「はぁ……」



ただ――レビューには私情を挟んではならない。

しっかりと正当な評価はしますので、ご安心ください(何様)。

また、趣味に助けられたかも。






日曜の、お昼どきからはかなり遅くなった15時頃。



「やー! 今日も勝利! お疲れー!!」

「「お疲れー!! さまです!」」



今日は少し強いところだったけれど、何とか勝てた。

いつもの会場で試合を終えて——今は祝勝会を上げている。



「ここのファミレスも久しぶりだ〜」

「桃、本当に大丈夫なの?」

「平気。もうあの人達は来ないから……」

「ほんとに酷い事されなかったんですよね?」

「……うん。ほら、かんぱーい!」

「……じー」

「ちょっと明、桃が大丈夫って言ってるんだから深入りしないの」



グラスを片手に、目を細める後輩の視線から逃げる。

いっちが助けてくれた事は、まだ言ってない。


ただ、登校中にあのOGから謝られていた所に彼女達も居た。

というか、一緒に登校してたからね。

OGの謝罪にわたし以上に驚いていた。当たり前か。



「吐いたら楽になりますよー……」

「こら」

「手つきが嫌らしいって明!」

「ぐふふ、どうせ今日は3人なんですから」

「目的忘れてちゃだめだよ〜」



キャプテンの吹雪と後輩の明、それにわたし。


普通ならもっと人数が居るんだけど……先週のアレがあってから、警戒という意味で3人だけ。

寂しがっていた部員には申し訳ないけど、チームメイトを傷付けるわけにはいかない……そんなキャプテンの意向で。

本当に大丈夫なんだけど、気持ちは分かる。

わたしも帰る様に言われたけど、二人が心配だから来た。


……自分があのOGの立場だったら、絶対ムリだけどね。

いっちって分かる前は……本当に裏の世界の人だと思っちゃったもん。




「ま、マジで来ないね……」

「言ったでしょ〜」

「えっ、ほんとにもうあの人達に怯えなくて良いんですか!?」

「う……うん」



拍子抜けといった風に、椅子にもたれ掛かる後輩。

それに合わせて、ふうとわたしも息を吐いた。


あまり実感無かったけど……本当に、来ないんだ。

今更、いっちの凄さを再確認する。

本当に——彼のおかげで、こうしてチームメイトとの時間が過ごせている。


それは分かっていたはずなのに。



《——「いっちはちっさい子が好きなの」——》

《——「帰っちゃうんだ」——》



金曜、ひどい事しか言ってない。

一昨日のあの時はどうかしていた。


かのんちゃんに嫉妬するわ、いっちの寝込みを……その——



「桃ー?」

「先輩?」


「あっごめん、ぼーっとしてた……」


「最近桃、こういうの多いけど大丈夫? 試合中はキレキレなのにね」

「悩みごとですか? 悪い男なら暗殺しますよ」


「あはは、平気平気。ごめんね」



だめだな、チームメイトに心配されるなんて。

最近のわたしは……やっぱり変だ。



「でも、もうあのOGが来ないと分かったら急にウキウキしてきました」

「どっか遊びに行く?」

「おー良いですね!」

「どこ行くの〜?」

「大会終わりだし、体力使う系はやだよね」

「カラオケボウリングバッセンは除外で!」

「うーん、じゃあ——」



少し人が多い、建物の最上階。

三人で会議の結果——映画を見ることになった。



「うわぁまたチケット高くなっとる!」

「はは、日曜だし学生割引しか無いね〜」



ちょっと意外だけど、二人は結構乙女だ。

だから見る映画もジャンルで言えば恋愛系が多い。



「すんごいイケメン俳優が出てる方か、ストーリー重視の方か悩みますね!」

「えーちょっと派手過ぎない? それならこっちの真面目系男子の俳優のが良いなー」

「お、おまかせする〜」


……正直、わたしはそういうジャンルの映画はあまり見ない。

見たこともあるけれど、面白いとも思えなかった。


だって……派手なアクションとか無いし。

登場人物が死んじゃうかもしれない——とかの緊迫感が感じれないし。

何より、キャラに感情移入出来ないから。


……まあでも、たまには良いか。





《やっぱり俺、お前が居ない未来なんて考えられない》



映画館、スピーカーから聞こえてくる声。

わたしはスクリーンから目が離せない。



《本当に、私なんかで良いの……?》



そのストーリーは、簡単なものだった。


影の薄い男子高校生の主人公は、実は歌が凄く上手かった。

あるきっかけで歌手になってからは人気歌手へと変貌。

しかも雲の上だったアイドルの女性から猛烈なアプローチを受ける。


ただ彼は、小さい頃からずっと一緒に居た、、“普通”の幼馴染の少女を選ぶ。

幼い頃から、主人公を認めてくれていたのが彼女だったから。



そんな——よくある物語。

だった、のに。



「っ……」



分からない。

どうして、こんなにも主人公の事を応援してしまうのか。

幼馴染の少女の恋が、うまく行って欲しいと思うのか。


……重ねてしまう。

主人公の髪色は、黒いはずなのに。

なぜか——“彼”が——



《“私なんか”じゃない。お前だから良いんだ》

《本当に……?》



抱き寄せられたヒロインが。

わたしだったら、良いのになんて——



《好きだよ》

《わ、私も……!》



そう思った時。

スクリーンの中で、近付く二人。


キスシーン——わたしは思わず、両手で目を覆ってしまった。




「……」

「いやぁ良かったね——って桃?」


「ぁ……」

「せ、先輩えっろ……!」

「ちょっと明!」



明るくなった映画館。

未だに熱い自分の顔。


やっぱり、最近のわたしはおかしい。


こんな状態でいっちと話せない。

どうなってしまうのか分からない。

だから……距離を取ろう。きっと、そうすれば前みたいに戻れるから。



「——そう、だよね」



きっと——これが正しいはずだから。


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