即答


あっという間に土日は過ぎて月曜日。

バイトで得たお金――18000円程。

財布はかなり温まったけど、精神的にはいろいろ辛い。


昨日は特に酷いと思った。

映画じゃバスケ部と居る初音さんを見て、その帰りには椛さんをチラッと見てしまった。


本屋さんにて、仲良さげに黙々と本を見る“二人”。

かなり仲が良いらしい。

ガラス越しに見えた椛さんの表情は、普段よりずっと輝いていた。


こんなことなら――遊ぶんじゃなかった。

陰キャらしく、黙々と勉強でもしていれば良かったんだ。


……なんて。新しいダンスゲームの発見と、恋愛映画のレビューが出来たから良しとしよう。




《名無しの映画レビューブログ》


『名無しさん、恋でもした?』

『前の【火星VSサメ星 ~炎と海の黙示録~】の映画レビュー、凄く参考になりました! 評価通りめちゃくちゃ面白くなくて最高でした!!!』

『急に普通の映画のレビューするじゃん 心境の変化?』



映画レビューブログの方じゃ、凄い心配されたけどね(嬉)。

たまには普通の映画も見とかないと……“幅”を広げることでより良い映画評論家への道が開けるのだよ(意識高い系)。




「はぁ……」



そして月曜。

いつも通り登校……と行きたいが、今日は少し出遅れた。

登校前の鉄棒に興じていたら、なんと着地ミスって泥まみれになったのである(最悪)。


やけくそで結構派手めなダンスしたら結構取れた。

普通に払った方が取れたけど。


色々と分かりやすいよね、俺の体調は(単純男)。



「ついてない……いや自分のせいだけど……」



しかも、帰って着替えた瞬間振り始める雨。

運が良いのか悪いのかわからん!


「……ふぅ」


とはいえ、二年になってから無遅刻無欠席の俺(ドヤ顔)はHL開始20分前には着席完了。


まだ隣席と隣隣席の二人は来ていない。

如月さんも、初音さんも。何だったら椛さんも。


今日の授業の予習でもおさらいしておこう。

あ、ついでに創作ダンスの曲もイヤホンにセット。

勉強の質は少し下がるが、少しでも耳に慣れさせとかないとね。





「……あれ」



思いの外、集中してしまった。

しまったっていうのは……普段、朝は彼女達と会話するからで。

時計はもう、HL開始三分前。



「――でさ☆」

「夢咲さんは――」



見れば、教室の近くの廊下。

夢咲さんと柊さん、そして柊さんの前で知らない女子二人と話していた。


珍しい。いつも俺に襲い掛かってきたから(エンカウント)ね。はいごめんなさい――



「……」



なんて心の中で思っただけで、いつも狙いすましたかの様に飛んでくるのに。

ただ、静かな時間が流れていくだけ。


珍しい。いや――いつもが異常だっただけかもしれない。

むしろ今日が普通なんだ。


そう、思っておく事にした。

でも。少しだけ、勇気を出した。

彼女達が机に戻って来た時に。



「お、おはよ夢咲さん」

「……おう」



「――はーい、んじゃHLはじめまーす!」



その後、会話が続かないと怖いから。

先生が入ってきた瞬間――挨拶を掛けた。


我ながら本当に陰キャだ。

……でも挨拶を返してくれた。こんな事だけど、嬉しかった。





「はーい、んじゃ今日もみっちりダンス考えてねー!」



そんなこんな、第四限。

結局――いつも飛んでくる柊さんは、全くと言って良いほど来なかった。

当然夢咲さんも。


でも、時折視線は感じる。

廊下から二人が見てたり、右斜めから初音さんが見てたり。


……今日はちょっと勇気出して、帰り道誘ってみようか。

ダンスのステップ踏みながら彼女オススメの漫画読んでたんだよね、実は。

酔った(馬鹿)。



――「どうするよ」「えっと、先輩の真似するなら……」「千手観音やろうぜ!」――



創作ダンスは金曜の体育で発表だから、もう今日入れて二回しか考える時間はない。

各々、結構真剣に考えている。最初はふざけていた生徒も、今はほとんど真面目だ。

ダンス部は言うまでもない。


一方、俺。

もう完成してる。

なんならアレから三パターンぐらい作った。ダンスゲームとダンス本、様様であります。


つまり、後はひたすら練習するだけ。

だけ、なんだけど――周りが試行錯誤中、踊りまくるのかなり浮くよね。虹色の髪の時点で浮いているけど。

ダンス部の方々もまだ考えてる人多いし。そんな中で優雅に踊るのは……精神が持たない。



「……」



しかし。

このまま止まってたら、また逆に浮く。

こうなれば、各シーンに切り分けてそれぞれ練習しよう。



「っ、はっ――」



ステップ、ステップ。

はい前後、前後(脳内トレーナー)。


足上げ、回転。

倒立、開脚――姿勢を整えて。



「わー! すごいね東町君、もう完成間近?」


「あ(床に寝っ転がったまま固まる)」



男の開脚とかいう最悪な絵面で先生に気付く。

熱中し過ぎた。



「凄い動きだね!」

「あー。まあ……でもコレはあの音楽に合わないんでやるかは分かんないです(超早口)」


「良いね……ってそんなに考えてるの!?」

「ははっ(恥) まあ三パターンぐらいは……」


「三パターン!?」

「ははっ(言わなきゃよかった)」



声大きいです先生。

マジで勘弁して下さい(土下座)。



「ちょっとダンス部負けてるよー!」

「えっちょ」



――「……」「っす……」「……」――



その瞬間。

間違いなく、ダンス部と敵対した。


いや。元々かもしれない。じゃあいっか(?)。



「スゲーじゃん。東町だっけ?」

「!? ああ、どうも……」



そして。

その中――ダンス部であろう一人。

多分違うクラス、その彼が……俺に近付いて、こう言った。



「――ちょっと、やって見せてよ」


「無理です(即答)」







▲作者あとがき

今日はもう一話投稿します。


(以下ちょっとネタバレ注意?)

















お察し? の通りちょっとの間しんどいシーンが続きます。

代わりと言ってはあれですが、GW中はかなり投稿ペースが加速すると思います。


せっかくの連休、タイミング悪すぎなので……早くこの山を超えなければ。

作者もキツイシーンを書くのは辛いです。吐血しながら書いております。



いつも応援本当にありがとうございます!

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