魔女(5)
金曜日。
明日を休みに控えた、そんな日。
ちょっと昨日はあまり眠れなかったから、少し眠い。
駄目だな今日は体育もあるのに。
本格的に振り付けと曲を考えていく……んだけど。
もう決まったんだよな俺。
そりゃ、ひと月まるまるダンス本読んで練習してたらね。
気が付けばダンスの事を考えてるからね。
今日ももちろん、朝から踊ってました。
ダンスフロアはリビングだ(防振マット完備)。けど、下の階に響くのであんまり派手な動きが出来ないのがつらい。かといってスタジオ借りるとかはなぁ……。
そんな訳で、朝と夜は鉄棒ついでに公園でもこっそり踊っているのだ(不審者)。
「……ふぅ」
少し早めに、俺は教室へと辿り着く。
隣席、その隣はまだ来ていない。
静かだ……クラスメイトもまだ半数は来ていないから余計に。
自習でもしてようかな。そうしよう。
「……」
机に参考書を広げる。
ただ、やはり集中力がいまいち。
あー眠たい。でも頑張らないと。
最近ボトルシップが完成したからその分創作活動に当ててるんだよな。特に音楽。
楽しい。けれど少し落ち着かないというか……ボトルシップ制作はもはや寝る前の瞑想みたいなものだったからな。
新しいボトルシップ買うか。
うんそうしよう。あっでも最近お金使い過ぎだ……。
その為に明日バイトするんだっけ。って今は勉強勉強——
「——おはよう、東町君」
「!」
「ちょっと良いかしら」
金曜日の朝8時。溢れてくる自我に対抗していたら、挑戦者が現れた(違う)。
如月さんだった。
綺麗なロングヘアーをなびかせ俺の席の前に。
クラス中の視線がこちらに向く。
そして彼女の目も当然の様に。
……一気に目が覚めた。
彼女に翼は生えていない。当然俺にも。
「ど、どうかしましたか(震え声)」
「ごめんなさいね。忘れないうちに言っておこうと思って」
「?」
「今夜、家に来てくれないかしら」
「はい?」
はい?
「ごめんなさい、忙しかったかしら。それならまた今度でも」
「えっあ……いや」
ほんとすいません。
ここ教室なんですよ(震え)。
視線が! 視線が痛い!
「じゃあ来てくれる? その、かのんが……ずっと言ってて」
「かのんちゃんが?」
「ええ。昨日は、その。泣いちゃって……」
「えっ」
おい今なんて言った?
“泣いちゃって?”
これは本当に、クラスの視線なんて気にしていられない。
「また来てくれるって言ったのに、って」
「それで泣いた……?」
「ぁ……いやその、涙も見えなかったしあからさまに泣き真似なのだけど……とにかく! ずっとうるさいの」
「(きこえてますよ)」
小声で呟く如月さん。ばっちり“泣き真似”って聞こえてた。
……かのんちゃん五歳だよな確か。
魔女だよ魔女! いや年齢的に違うか?
魔法少女☆かのんちゃん(タイトルコール)か……。
「了解です(恐怖)」
「そう! 来てくれるのね。それじゃ今夜待ってるわ。18時以降なら大丈夫だから」
「は、はい…」
「それじゃ、待ってるわよ」
「はい……」
これは喜ぶべき事なんだろう。子供から好かれるのは良い事だ。
だけど。
「…………へー☆」
横から。
2mぐらい先から、明らかにヤバイ視線を感じる。
魔王様が楽しそうで何よりです(犠牲)。
☆
「——とーまとは女泣かせなんだねー☆」
「はい……俺はゴミです……(日本語不自由)」
「まさか“あの”如月彩乃がお家に男を誘うなんてね☆」
「いや本当に遊びに行くだけだよ(早口)」
「しかも何かもう一人“女の子”の名前聞こえたけど☆」
「い、妹さんだよ」
「妹さん泣かせたんだ☆」
「ははっ(精神崩壊)」
至近距離。
怒涛の連続攻撃に、俺は成すすべもなくやられていた(瀕死)。
彼女は俺の椅子の横に立って、左耳に攻撃を仕掛けてくる。
これが魔王ASMRか……。
お金払ったら良いですか? それとも一番高い会員になれと?
激甘耳掃除差分はこちら(存在しない)。
「そ、そういえば夢咲さんは」
「ああ苺なら今日のダンスの曲選びで遅くなるって!」
「ア(鼓膜破壊)」
「あっごめん!! これは本当にわざとじゃない!」
「い、良いよ……」
柊さんの焦る姿、貴重だ。
これを見れただけで鼓膜一つは安いもんだ……あっ聴覚戻ってきた。
ギリ破れてないみたい。
「――あのさ、とーまち」
「! 何?」
「他所のクラスの男子から、変な事言われても気にしないでね」
そして、ふと彼女の声が低くなる。
耳元。その位置は変わらずに。
「え」
「ま、大丈夫だと思うけど☆」
「は、はい……」
……朝からヘビーだよ。
まだ始業前ってマ?(
□
日曜日なので!
今日はもう一話投稿します。よるぐらいです。
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