宇宙の神秘


【>>5で俺は変わろうと思う Pert17】


232:名前:1

というわけで、一人で踊る事になった


233:名前:恋する名無しさん

今ってそんな授業あるんやね


234:名前:恋する名無しさん

創作ダンスとかなかったなー(三十路並の感想)


235:名前:恋する名無しさん

なんだよそのボッチ製造機


236:名前:恋する名無しさん

うわっ俺現世に生まれなくてよかったぁ……地獄だったわ


237:名前:恋する名無しさん

死んでて草


えっんじゃイッチは一人で生徒の前で踊るの? キッッッッッツ


238:名前:1

……正直そこまで不安じゃないんだよね

いっつもクラブで踊ってる感じで行けたらいいかな?


239:名前:恋する名無しさん

そういや1の趣味クラブだったわ(笑)


240:名前:恋する名無しさん

そんな行ってんの? 


241:名前:1

まあ、ちょくちょくと……


242:名前:恋する名無しさん

マジか

気を付けろよ 決めた俺らが言うのもアレだけど


243:名前:1

ありがとう

入口付近とトイレさえ気を付ければ大丈夫だと思う、多分


244:名前:恋する名無しさん

……大丈夫なんですかねそれ


245:名前:恋する名無しさん

アッ-!!




17時半。

学校が終わり、電車に乗って帰宅。

そして着替えて電車に乗った。


そんな面倒な事をする理由は一つ。

制服姿のままでは、決して行けない場所だから。



「——おう! 虹色ボーイじゃん」

「はは、どうも……」


「次何色にすんの? 逆に真っ白か?」

「あー……白追加するのもアリですね……」


「それだと十色じゃねーか! “住職”とは真逆だな! ハハハハ!」

「ははっそりゃあ一本取られたなぁははっ(湿度0.01%の笑い)」


「やっべマジ受けるわお前! ハハハ」

「ははっ……(いつまで笑ってんだよ)」



キラキラ輝く黄金と銀の入り口。

いつものセキュリティーのイカツイ人に、お金を渡して——そのまま捕まった。



「まー住職もよく来るけどよ!」

「えぇ……そうなんですか」



この人、見た目によらずかなり軽いというか。

暇な時はこうして絡んでくる。忙しい時はそんなことないけど。雰囲気がピリピリしてるからね。

今日はアルコールの匂いがするから余計だ。仕事中にお酒飲めるって凄いなクラブ。



「んじゃ女遊びは程々になー!」

「どうも(童貞)」



そのまま、音の鳴る方向へ。

そしてその会場の扉の横へ——俺は、階段を登る。


このクラブは三階建てで、それぞれのフロアによって音楽のジャンルが違う。


まず一階。ここは基本的にEDM。重低音が強く響くものが多い。

次に二階。HIPHOPが中心で、多分一番うるさい。客層も騒がしいのが好きな人が多い。陽キャの巣窟。地獄。一回行ったけど肩勝手に組まれた。とってもしんどかった。


そして——三階。


《♪》


ここは、二階とは打って変わる。

落ち着いた曲なエレクトロニック、ドラムンベースが中心。

もちろん比較的の話で……普通に音は大きいけれど。


騒ぐというよりは、静かに踊るフロア。

そんな印象。



——「ねー夜ご飯一緒にどう?」「その服良いね、どこの?」「ああレッド○ルウォッカ二つ」——



……まあ、もちろんナンパは多いけどさ。

そんな風景にも慣れた自分が居る。


例え髪色が九色に輝いていたとしても、眩い照明がそれよりも輝く。

例え音楽にノッて踊ろうとも、周囲も同じように踊っている。


最初はビクビクしてたけど。まあ今もちょっとは怖いけど。

この異界は、案外居心地が良いもので。



《――♪》



フロア入口ナンパエリア(俺命名)からはすぐに離れ、その音の中心地へ。


思いのまま踊る人々。その中に俺も溶け込む。

ビートが脳を揺らし、それは身体全体に伝わっていく。



「——っ」



一人っきり。

思いのまま、ステップを踏む。


ダンスの指南書——1ヶ月で、それは全て読み終えた。

不思議とつまずく事なく、基本から応用まで。中級者クラスのモノなら踊れる様になった。


それはきっと、コレが楽しいからだろう。後は一応……小学生からの下積み? か。

新たに購入した上級者向けの本は激ムズです。それでも楽しい。

最近は倒立して止まる、停止技なんて練習してみたり。腰に注意(三敗)。



「っ——」



それは、まるで氷の上を滑り歩くように。

前に右足を出し、次に前に出した左足と共に右足を後ろへ戻す。

『フロート』と呼ばれる技だ。

リズムに合わせてコレが決まると、凄く気持ちが良い。


移動していないのにその場で歩いている感覚。

例えるなら、大音量の音楽を鳴らしながら夜道を散歩している——みたいな(不審者)。

でもここでは関係ない。


それは誰にも見られないから。

大事な友達には、行っている事を知られたくない秘密の場所だ。

あの二人には既にバレてるけどね。



『——♪』



「あ……」



という感じで踊ってたら、DJが曲を変えた。

そしてそれは前に流れていた……知ってる曲だった。こういうのがあると嬉しいね。


夜はまだ始まったばかり(時計を確認しながら)。





「……水だろ?」

「えっ。はい」

「ほらよ」

「どうも……」



ある程度踊って、バーカウンターへ。

入場時に貰ったドリンクチケットは、水(多分いろ○す)と交換。


「……ふぅ( う ま い !)」


この水たまりませんわね。まるで遠い北の山の湧き水を汲んだような爽快感。

これ、い○はすじゃない。クリスタル○イザーだ。発注先変わったのかな(効き天然水検定1段)。

激しい動きもしないし空調も効いてるから汗はかかないけど、水分は欲しくなる。


そりゃこんな状態の身体に水ではなく酒入れたら酔うだろうね(未成年並感)。

……時間はまだ余裕あるけど、もうそろそろ帰ろうかな。


ちょっと人増えてきたし——



「——あっ!」



なんて。

飲み終えた残骸を、ゴミ箱に持っていこうとした時だった。



「あの時の子?」

「あー、はは。どうもどうも〜それじゃ」



背中を向ける。

いつものこといつものこと。

こういう時はササッと——



「ちょいちょい!」



あれ、おかしい。

脳内掲示板を検索。


クラブ内じゃ確か——




545:名前:夜の名無しさん

この前帰省ついでで地元のクラブ行ったんだけど、意味不明なダンス流行ってて笑った

集団がスクワットの動きしてんの ダンスじゃなくて筋トレじゃんって


546:名前:夜の名無しさん

田舎だとよくある

見てる分には楽しいんだけど……やるのは恥ずかしいね

酒酔っててもキツイww


547:名前:夜の名無しさん

サングラス着けだしてから知らねー奴から挨拶されまくる お前らどうしてるの


548:名前:夜の名無しさん

外せ


549:名前:夜の名無しさん

やだ!! ぼくのいちまんごせんえん!!!


550:名前:夜の名無しさん

よくあることだから愛想笑い+「あーどうもどうも」


251:名前:夜の名無しさん

同意

男ならまともに取り合わなくて良いよw

女の子なら逆にラッキー




だったのに。

やけにこの人呼び止めてくるぞ。

怖い(怖い)。



「『食べちゃうわけじゃないんだから』」


「! あ、あの時の」



しかし、その声と言葉で思い出す。

初めてクラブで逆ナン(?)された時の——



「ん〜? なんか随分顔つき変わったんじゃない?」

「そ、そうですかね……」

「うんうん。ちょっとあっちで話そ?」

「あ(背中に手を回される)」



近付いてくる彼女。

今日はお酒の香りはしない……が、甘い香水のそれが俺を包む。


現実とは思えない、ふわふわとしたその感覚。


……ってマズいだろ!

踊り過ぎてクラブがそういう場所でもあるの忘れてた。


今は隣に夢咲さんは居ない。

でも、用事はあるんだよ。大事な大事な!



「あの俺ちょっと、コレから予定があってですね……」



その時。

まるで、背中をズズズッと冷たい何かが覆っていく様に。



「——予定?」


「っ!?」



隣の彼女は、笑っている様で笑っていない。

怖い。底知れない何かが、彼女に宿っている。


黒い、黒い星の様な。



「目、見せて?」

「は、はい……」



覗き込むその目。

全てを見透かされる様に、じっと見つめられる。

それはさながらブラックホールだ。


高鳴る鼓動は生存本能によるもの。

やっぱり、迂闊にこの場所に踏み入れるんじゃなかった。


俺——死んだ——?



「ッ、フハハハハ! ごめんごめん、イジワルしちゃった★」

「……ぇ……」


「そういえば、君ダンス部?」

「……い、いえ」

「あ。ダンス教室通ってるとか?」

「いや、全くそういうのは……」


「そうなんだ!」

「はい……」


なんだ? 多分褒められてるのか?

分からない。

というか考えがまとまらない!


「ホント、ついついイジったくなっちゃうね君」

「……はい……?」


「約束あるのはホントだったみたいだし、また今度会ったら話そうね〜」

「……はい(思考停止)」


「私の名前、羽織っていうの。ハオって呼んで★」

「はい……覇王さん……」

「ん〜?? なんか違うけどいいか〜」



もう何が何だか分からないけど、俺は生きている(多分)。


というか、あれ? 何か視界に近付いて……



「じゃあはい、ぎゅー★」

「オ゛(理解不能理解不能)」



温かいそれ。

甘い匂いが、今日一番に広がる。

軽くハグされたと気付いたのは、全てに包まれた後で。



「バイバイ! またうちに遊びに来てね★」


「…………は、い」



その柔らかい感触が離れていき、光る照明が目に入った。


色んな情報が頭の中を駆けめぐって、クラクラする——



「——って時間!」




だが、何とか脳裏に宿った椛さん(背景:紅葉降る山々)の姿で自我を取り戻す。

そろそろ駅に向かわないと駄目な頃合い。今日に予定があって本当に良かった。


覇王ブラックホールさん(とても失礼)、俺が一番苦手とする人物かもしれない。



「行くか……」



ただ、しばらく一人でクラブに行くのはやめておこう……。

公園で我慢しとくかな(不審者)。


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