変わっていく彼女


図書室、鮮やかなステップ(言ってる場合じゃない)にて飛び出す。


休み時間は残り9分。

食堂に着けば、残り7分。綺麗に髪色の数字だ(言ってる場ry以下略)。


そして彼女は居なかった。図書室、食堂にいないとなれば……後は教室。



「っ、椛さんは——」



なぜ俺が、ここまで必死なのかといえば。



48:名前:恋する名無しさん

俺が狙ってる子、一週間前から今までずっと寝てたらしい

大丈夫かな……


49:名前:恋する名無しさん

次は100年経っても返事こなさそう


50:名前:恋する名無しさん

コールドスリープかな


51:名前:恋する名無しさん

女の子はよく眠るからね


52:名前:恋する名無しさん

俺は誕生日の時だけ起きる子が居たな 


53:名前:恋する名無しさん

織姫と彦星みたいで素敵


54:名前:恋する名無しさん

今日空いてる? 送信からの 

翌日起きたorごめん見てなかった率は異常


55:名前:恋する名無しさん

悲しくなってきた…………




そう。

なんか、まるで昼休みに話したくなかったみたいになってしまいそうだからだ。

……考え過ぎかもしれない。



そんなわけで全力競歩(廊下は走るの禁止)の後。


授業開始5分前の予鈴とともに教室に入れば。



「——えー、詩織ちゃん生徒会の人だったんだ」

「は、はい……」

「って予鈴鳴っちゃったー、じゃあまた一緒に考えよ!」



そこには、教室では見た事のない……他のクラスの女の子と話す椛さんが居た。


……安心した。そしてそれと共に、一人じゃない彼女に驚いた。

教室では、全然誰かと話すところなんて見なかったから。



《——「東町くんみたいになりたくて」——》



髪を切ってそう言っていた彼女の瞳は、以前よりも輝いていた。

いやもっと前……山に遊びに行った帰りから。


椛さんも変わっていっているんだ。

それが、ほんの少し……自分のおかげでもあるのなら。


誇らしいと思う。

でもどこか――いや、なんでもない。



東町一『ごめん! スマホ見てなくて』

東町一『良ければ今日話聞くよ』



送った途端、びくんと震えた彼女の身体。

まるで驚いた小動物さながら。


ああいうところは変わらないかも。






詩織『あ ありがとうございます でも今日は帰ってすぐ18時までバイトがありまして』

東町一『そっか。LIMEで話してもらっても良いけど』

詩織『ごめんなさい 出来れば会って話したくて』



5限終了後。休み時間、携帯を取り出しメッセージを確認。


……なんというか、これは椛さん結構悩んでそうだ。勘だけど。

俺のレインボーセンスが囁いている(手から虹は出ない)。


□ 


東町一『電話でも良いよ』

詩織『dえ』

詩織『ごめんなさい ちょっと ごめんなさい、すいませんちょっと』




……反省してます。

流石にいきなり電話とかキモいね。初音さんが優しすぎるだけだ。

よく考えたら、靴箱に電話番号のメモ入れるとかかなりキモかったよな……(ダメージ倍)。




東町一『こっちこそごめん バイト終わるまで待ってるよ』

詩織『え 流石に悪いです』

東町一『実は俺もそれぐらいまで用事があったから。気にしなくて良いよ』

詩織『そうなんですか……それならお願いしたい です』

東町一『了解。んじゃそういうことで』



……ふう。電話の件のダメージはあったが、なんとかなった。


ちなみに学校の帰り道で話す事も考えたが……あの椛さんと話していたクラスメイトが気になる。

一緒に駅まで帰っているのなら、俺が邪魔することになるので止めておいた。


俺は一人で空気を読んで帰ります(陰キャ)。


「とーまちが必死になんか打ってる! デートのお誘いですか☆ 必死な男は嫌われるゾイ☆」

「デデデ(動揺により言葉を失う)」

「まーそんなわけないか☆」

「あ、ああ……(ん?)」


「そんなわけないか」

「なんで2回言った?(なんで2回言った?)」

「ふはははは!」


「お前らな……おいそろそろ授業始まるぞ。携帯しまっとけ」

「うん☆」

「はい……」



この3人の中で一番真面目なのは、きっと夢咲さんである。

やはり見た目で人は判断してはいけない(いましめ)。


と思っていたら視界に虹色が映った。

……やっぱ少しは判断するべき。

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