山から見る夕日


詩織『明日は朝の10時頃集合ですよね』

東町一『だね』

詩織『 』

東町一『大丈夫?』

詩織『大丈夫 です』



文面からして緊張しているのが分かる。

俺も人の事言えないけど、自分以外の誰かが緊張してると逆に緊張しなくなるよね。



詩織『その 色々道具とかもあるので』

東町一『そうなんだ。キャンプ場があるんだっけ?』

詩織『はい おじいちゃんが山持ってて 材料さえあれば料理とかも』

東町一『良いね 色々持っていくよ』

詩織『はい! あ、僕休憩終わるので失礼します』



……うん。

サラッと山一つ持ってるお爺様が居る事が分かったけど、気にしないようにしよう。


――ピコン!



YUMESAKI『おう 無事帰れたか?』

東町一『ありがとう まだ帰ってないよ』



実は今、クラブ帰りにインドカレー屋さんに寄っていたのだ。

アレから夢咲さんとは駅で別れて、電車に乗ってここに来た。



YUMESAKI『は? 何やってんだ』

東町一『ちょっとカレー屋さんに居るよ』


YUMESAKI『……お前、ホントにカレー好きなんd』

東町一『えっどうしたの』


YUMESAKI『今日はありがとー☆』

東町一『え、柊さん? どういたしまして』


YUMESAKI『苺がねーとーまちとダチになれたってずっと嬉しそうなんだけd』

YUMESAKI『※このメッセージは消去されました』



きっと、激しい人格の移動があるんだろう。

ホント仲いいね!



YUMESAKI『すまん 何でもない じゃあな』

東町一『大丈夫だよ。あ、夢咲さんって山と言えば何する?』


YUMESAKI『は? 中学ん時は滝に当たったり 瞑想してたりしてたが……』

東町一『あ ありがとう!』



ごめんなさい。参考になりませんでした。

俺は修行に行くわけじゃないからな……。



「ドウゾ」

「お、ありがとうございます」



そんなこんな、メッセージを返していると注文していたモノが来る。


今日は山というわけでグリーンカレーにしました(色だけ)。

めっちゃ美味そう(感動)。

有難く勉強させて頂きます……。





「……ごちそうさまでした」



めっちゃ美味しかった。

やはりプロは違う。辿り着ける気がしない。

ナンもふっかふかだし。もう寝れそう(?)。


しかも食い放題(最高)。

まあ言って2枚食べたら限界なんですがね。



「オソマツサマデシタ」

「どうもどうも」



お金を払って店から出る。

涼しい。

もう時刻も19時――ちょっと本屋さん寄ってから帰ろうかな。


新しいカレー本でも探すとするか(インド料理研究科)。





「あ」

「あ」


「ど、どうも」

「……その、こんばんは……!」



なんて思って、インドカレー屋さんの近くの本屋へ行って。

鉢合わせたのは彼女だった。

本棚の整理をしているっぽい。


その制服姿には見覚えがある――確か前も、カレー屋さんの帰りに見たんだっけな。

忘れてたよ。



「……はは、カレーの本とか置いてる?」

「! 少々お待ちください」


「ごめんね。邪魔じゃなかったかな」

「い、いえ! ……嬉しいです」

「そっか」


まるで小動物の様にとてとてと歩く椛さん。

どうやら本の場所は直ぐに分かるらしい。

嗅覚? (クソ失礼)。



「……あ。ありました。これとかどうでしょう」


「! 良いね」



タイトルは『スパイスの真価』。

表紙には美味しそうなカレーがのってる。これは買いです。



「ありがとう。お会計も椛さんがしてくれるの?」

「……あ、いまは別の方で……」

「了解。ごめんね忙しいのに。それじゃ――」

「あ、あの。明日は、凄く楽しみで……」



本屋の制服姿。

彼女の頬は、また紅くなって。



「うん」

「そ、それだけです。ごめんなさい」

「……俺も凄く楽しみだよ。じゃあね」



その椛さんの仕草で、明日をどれだけ楽しみにしているかが分かった。


……これは、失敗出来ないな。

色々準備しなくては。



「……帰ったらスレで相談してみるか」



椛さんが選んでくれた本を手に、そう呟く。


やはり俺には、掲示板が欠かせない。

合コンも(ある意味)成功だったからね!




【>>5で俺は変わろうと思う Pert13】


219:名前:1

というわけで


緊急 山で楽しく遊ぼう作戦を立てようと思います


220:名前:恋する名無しさん

合コンの次は山ですか


221:名前:恋する名無しさん

落差凄いね……


222:名前:恋する名無しさん

まあ山と言えばロッククライミングですわね(お嬢様ロッククライミング部)


223:名前:1

ちょっとハード過ぎませんか(困惑)


224:名前:恋する名無しさん

山で食うインスタント麺が一番美味い(まじ)


225:名前:1

そうそう 料理はしようと思ってる


226:名前:恋する名無しさん

山でする昼寝が一番気持ちいい


227:名前:1

起きたら野生動物に囲まれたりとかしないよな


228:名前:恋する名無しさん

キャンプファイヤーしよう 

学生時代は雨降って出来なかったんだよな

組み立てた木が全部濡れて笑った(泣いた)


229:名前:恋する名無しさん

山菜食え うまいよ 

たまに毒草あるけど


230:名前:恋する名無しさん

花火 

後始末がダル過ぎてびっくりした


231:名前:1

……皆ありがとう、デメリットも書いてくれて助かるよ

参考にします


232:名前:恋する名無しさん

イッチ、俺達の意見はあんまり真に受けるなよ(恐怖)


233:名前:恋する名無しさん

前の合コンで身に染みただろ……?


234:名前:1

この前のはむしろ助かったんだけどな


235:名前:恋する名無しさん

……


236:名前:恋する名無しさん

俺らのおかげでイッチのアドリブ力が鍛えられていると考えよう(錯乱)


237:名前:1

みんないつもありがとう お陰で助かってるよ


238:名前:恋する名無しさん

ああああああああああああああ!!! 逆に辛い!!


辛いといえばカレー!!!


239:名前:恋する名無しさん

ごめんなさいごめんなさいごめんなさい


240:名前:恋する名無しさん




阿鼻叫喚のスレを閉じて、俺は己の武器を探す。


自分に何が出来るか。

友達の為に何をしてあげられるか。


……カレーぐらいしか思い浮かばない。

山遊びもそうだし、林間学校の時もひたすら勉強してたから記憶に無いんだよな。



《――「アイツこんなとこまで来て何やってんだろ」――》


《――「つまんねーよなホント」――》



……ア、ア……(崩壊)。



《――「あ、あの。明日は、凄く楽しみで……」――》




……あ、あぶないあぶない。

こんなところで無駄に黒歴史を掘り起こしている場合じゃないんだ(使命感)。


タケノコ掘りでもやるか(季節外れ)。

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