エピローグ:夜のダンサー


柊主催――関ヶ原の闘い(違う)は終幕に向かっていた。

見れば、半数以上はカップリング成立? したのか居なくなっている。あのムッキムキの人も消えてるな……。


残る者は集団になってゲームをやっていたり、果敢かかんにアタックしたりと様々だ。


ちなみに、元々お金は払っていたからそこは心配ない。

いつでも抜け出して良いようにそこは柊さんがしっかりやっているらしい。


さすまお(さすが柊魔王様の略称)だ……。



「じゃ、後は頼むぞリオ」

「はーい☆ まあそろそろお開きだし気にしなくて良いよ☆」



そして、俺は腕を掴まれて出口の方へ連行されていた。

力強すぎるよ夢咲さん。握力100kgぐらいありそう(クソ失礼)。



「「思い立ったが吉日さんがお持ち帰りされ――きゃッ!」」


「そのピンク思考をやめろよテメーらは。コイツには“れい”をするだけだ」



どうみてもケジメにしか聞こえないんですが。

えっ俺小指吹っ飛ばされるの……? 



「いってらっしゃーい☆」

「おう」


「さ、さようなら(遺言) ポロに栄光あれ(次代への継承)――――」







「……ココは?」

「アタシが良く寄ってるショップだ」



どうやら指を詰める事は無かった(当然)。


時刻は既に17時。

結構時間が経ってたんだなと実感しながら、夢咲さんと歩いていって。


辿り着いたそこは、まあまあ大きな音楽ソフト販売店。

CDやDVDが所狭しと並んでいて、その中を夢咲さんは迷う事なく歩いていく。



「東町は…… ドラムンベースなりテクノポップとかが好きっつてたな」

「……え、うん」

「コレ――まだ買ってないよな?」



並ぶディスクの山から拾いあげた一つのCD。

スッと、一瞬で。どれだけこの店に来ているのか分かる仕草だった。



「持ってないけど……」

「おう」



そしてそのままレジへ。

俺が止める暇もなく――



「すんません。コレ下さい」



お買い上げ。

さっきから動作が早すぎて追いつけない!



「出るぞ」

「ハイ(壊れたロボ)」



夢咲さんが、固まる俺の腕を掴んで店の外へ連れていく。

自分で歩けるって!



「……ほら。やるよ」

「え、夢咲さんが自分の為に買ったんじゃないの」


「もう持ってる。東町の為に買ったんだ」

「え、ちょ――」



差し出されたレジ袋を渡され、また固まってしまう。



「……」

「な、なんで?」


「言ったろ。今日の、礼だ」

「!」



そういえば合コン会場から出る時もそう言っていた。

別に俺は何もしてないんだけど。



「要らなかったか?」

「いやいやいや! 凄い嬉しいけど、良いの?」


「……今日の礼って言ってんだろ」

「俺何かしたっけ」


「愚痴とか長々と吐き出したろ、東町には。その詫びだ」



その理論だと、俺は彼女から愚痴を受けるたびにCD一枚貰えるんだけど。

流石に申し訳ないし。


……なんとなく、引っ掛かった。



「別にアレぐらいだったらいつでも聞くよ」

「は?」

「俺達、席が隣なんだから」

「……ッ!」



それは神の悪戯か。

二年になって、彼女とは席が隣になった。


今思えば――俺の少し遅れた登校初日。

自分が席に着いて、俺から机を引き離した彼女の行動は。


“怖がらせたくない”……そんな考えでやっていた事だったのだろう。



「不器用だよね、夢咲さんは」

「ッ――悪かったな」

「俺も不器用だから。気が合うね」

「……そうかよ」



夕方。

混雑する人波は未だにおとろえる事は無い。


差し出されたレジ袋を握ったまま、俺は彼女に向き直る。




《――「わたし、いっちと友達になりたい!」――》




未だに鮮明に思い出せる、あの時の――初めての友達の声。


そんな彼女の様に、平然と言うのは無理だけど。



「――俺、夢咲さんと友達になりたい」



自分らしく。

不器用に笑って、目の前の彼女にそう言った。



「……! あ、アタシで良いなら……」

「よろしく。漫画でしか知らないけど――こうするんだっけ?」


「――フッ、懐かしいな。中学の時はソイツがダチとの挨拶だった」

「じゃあ決まりだね――」



拳を突き出す彼女に、俺も同様に突き出し当てる。

フィスト・バンプ。またの名をグータッチ。



「よろしくな。東町」

「よろしく、夢咲さん。ちなみに、この後はさ……」



友達だからだろうか。今だけは彼女の思考が分かる。


さっきのCDのジャケット写真が。

まるで、俺の手を引いて誘うように。



「――クラブに行こうか」

「――クラブに行こうぜ」



ストリート、鼓膜に響く俺達の声。

思わず二人で笑ってしまった。



「急がないとデイタイム終わっちゃうね」

「フッ、走るぞ!」

「だから腕は掴まないでって――」




貰ったCD。

ジャケット写真は夜のダンサー。

今はそれが、袋の中で揺れて踊っている。


さあ。

土曜の夜は、まだまだ終わる事は無いようだ。










890:名前:1

皆のおかげで最高でした ありがとうございます


891:名前:恋する名無しさん

良かったね お持ち帰りは?


892:名前:1

いやいやいtやdそういう年じゃないしやめtttえって


893:名前:恋する名無しさん

テンパり過ぎぃ!


894:名前:恋する名無しさん

これは童貞


895:名前:1

でも楽しかったよ


896:名前:恋する名無しさん

……あのさ 自己紹介シート間違ってたよな


897:名前:恋する名無しさん

流石に気付いたよな?


898:名前:1

え、ワザとじゃないのあれ


899:名前:恋する名無しさん


900:名前:恋する名無しさん

はい?


901:名前:1

意図的にズラして、自己紹介からネタに走るのかと

お前らならそれぐらい考えてくれそうだから


902:名前:恋する名無しさん

あ、スマンスマンそれで合ってるで!


903:名前:恋する名無しさん

流石俺達や!


904:名前:恋する名無しさん

やっぱイッチぶっ飛んでんな……




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