状態異常:混乱


「…………」



――「どこ中?」「ボクシングやってるって言ってたよね」「すごい筋肉! 美味しそう!」――



目の前。

柊さんの宣言を皮切りに、男女が一気に激突(?)した。


それはさながら戦国合戦。

もちろん男女同士で全員が会話しているわけではなく、女の子三人で固まって談笑したり、男の子二人が作戦会議? をしている様子もある。

ちなみに夢咲さんは女の子達と話している。元チームらしいし色々話すことがあるんだろう。


多種多様な行動。十人十色とはこのことだ。

俺の髪色より多い(勝手に敗北中)。


……というか、コレだけ盛り上がってたら、モテてどうこうなんて考えなくて良かったな。

自意識過剰はコイツです。いやほんと良かった。



「――いやーさっきのは笑ったね、君!」


「……時止めてたよね間違いなく。柊さんが笑ってなかったら終わってた……」


「ふはははは! そんなことないって――」



ぼんやりとその戦場を眺めていると、声を掛けてくる柊さん。

ほんと、この人優しいよな。ちょっとSだけど。いやドSか……。いや魔王か(失礼)。



「――柊さん!! 今夜空いてますか!」

「――柊さん!! 今日も可愛いっすね!」

「――柊さん!! 連絡先交換しませんか!!」



「(絶句)」

「……うわぁトリオが来た。流石に驚いちゃったね」



と思ったら、合コン総大将(柊様)へ槍兵三人組(金髪)が突っ込んできた。

一気に視界が眩しいよ。



「リオ、今日幹事だからー☆ ごめんね?」


「ッす!」

「ッす!」

「ッす!」


連携取れ過ぎだろ。

そのままUターンして帰っていった……。

訓練されてるねこれは。



「――り、リオさん彼氏とか居るんすか……?」

「いませーん! 作る気もありませーん!」


「ッす……」



そしてまたもう一人槍兵が突撃。

消沈して帰っていく男の子。

なんか見てたら親近感湧いてきたかも。


《――「ごめんなさい、貴方誰かしら?」――》


蘇る過去の記憶。

あ、ああ……ああ……(トラウマスイッチON)。



「――リオさん、出会いのない俺らに機会を用意してもらって感謝ッス!」

「――マジで女神ッス!」

「――付き合ってくれませんか!」


「お気持ちだけ受け取っときまーす! バイバイ☆」



そしてまた三人来た。俺が苦しんでいる間に。


帰った。


……やっぱモテるよなぁ、柊さんは。



「彼氏とか興味無いんだね」

「……ぶっちゃけ、いらない☆」


「い、意外」

「人と話すのも好きだし、仕事も色んな人と関わるのも好きだけど……誰かのものにはなりたくないなぁ」


「……なるほど」

「でもリオ可愛いからなぁ☆ モテちゃって困るんだよねー。きゃぴっ☆」


「ははは(湿度10%の笑い)」



恐らくたくさんの男性を魅了してきた笑顔で言う彼女。

いっつも弄られ過ぎて耐性が出来てきたぞ。



「そういう意味では、あの子には助かったかも☆」

「……もしかして如月さん?」


「うん。あの子もめっちゃモテるからねー。助かった助かった。変な好意とか向けられたらだるいしなー☆」

「柊さんも負けてないでしょ」


「……ふーん?」

「如月さんは塩対応だし、というか男に興味抱いてなさそうだし……」


「続けて☆」

「柊さんはどんな人にでも優しいし、話すのも上手いし、あとは――」



――まだ、髪を染める前の事。


《――「おはようとーまち!」――》


きっと……彼女だけが、俺の名前を覚えてくれていた。

でも、それを言うのは流石に恥ずかしいし男としてみっともない。



「……やっぱ何でもない」

「あらあらあらー☆ 気になるなーリオ! 言え言え!」

「こわっ」

「ひどーい☆」


「いつも思ってたけど、柊さんってSだよね」

「うわあセクハラだー☆」

「えぇ……」



こいつは勝てないや(誰)。

多分レスバしたら一瞬で負ける――



「「――あ、あの!! 『思い立ったが吉日』さん!」」

「え」



柊さんとの頭の回転の差を身に染みていると――また新たな声。

……今俺の事言ったよね?


「あらあらー! お邪魔者は退散しますか☆」

「えっちょ」


「――話しませんかッス!!」

「――えっと、名前が東町一さんッスよね?」


「あ、ああ……(状態異常:混乱)」



気付けば、両肩に二人の女の子が現れていた。

柊さん程上手じゃないけど、しっかりと化粧をして、一見は普通の女の子。

見るからに緊張しているのは分かる。が、それは俺も同じな訳で。


正直ヤバい。想定なんてしていなかった。

こんな状況、人生で一度も経験なんてした事ないって――



「「ポロって何なんスか?」」




――さあ、レクチャーを始めよう。


まずは紀元前600年頃にさかのぼるぞ!

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