堕天使


「……すぅ」


かのんちゃんはお昼寝中。


「……」

「……」


二人は勉強中。


「(集中できない)」


目の前に女の子二人居て緊張しない奴いる?

いや居ない(反語)。



「うーん……」

「あ、そこ分からないの?」


「うん」

「えっと、そこは――」



初音さんが唸っていたから、そこを教える。

俺の取り柄なんて授業態度と学力ぐらいだからね。


人に教えるのは難しいけど、昨晩の“準備”もあって――



「……わ、分かっちゃった」

「よかった」

「さっきからいっち、家庭教師とかやってたの……?」

「ほめ過ぎだよ(照れ)」


「あの、東町君。ココ教えて欲しいのだけど……」

「えっとこの英文は――」



二人の質問を、俺が解消していく。

案外人に教えるのは自分の為にもなる――そう本には書いてあったっけ。



「あ、ありがとう。先生みたいね東町君」

「どういたしまして(嬉死)」



やっべぇコレ気持ち良すぎるんだけど(変態)。

まさか俺が人に教えて――あまつさえソレを理解してくれるとは。


二人共、地頭が良さそうなのもあるだろうけど。

特に如月さんは吸収が早い。なんでこれで赤点ギリギリなんだ?



「……いっち! ここも教えて!」

「い、良いよ」



その声にまた俺は向かう。


ああ、見ているか過去の俺。

勉強頑張ってよかった(昇天)。


「――かのんもべんきょうする!」

「え」


と思ったら、隣に小さい如月さん(かのんさん)が来た。

いつの間に起きてたんだ……。


あとそれお絵かき帳って書いてあるんだけど。

ツッコミはダメだね(大人の対応)。





「……っ、あ、あぶな」

「……(如月さんうたた寝中)」


「二人とも大丈夫?」


「勉強してると眠たくなっちゃって……」

「……! ご、ごめんなさい」



あえて言っておこう。

如月さんの寝顔はヤバい(昇天)。


まるでギリシャ彫刻の様なソレ。

俺は地上に舞い降りた天使を見ているのか?

ってそれだと堕天してるじゃないか。



「つぎはロケット作ってー!」

「良いよ(食い気味)」



そして机に積まれていく作品達(俺製)――って。


今誰一人勉強してない(今更)。



「休憩しようか。疲れたよね」


「はーい!」

「そうしましょう」



――さて。

ココで俺の趣味を活かす時が来た(ドヤ顔)。


休憩といえば何か?

そう、コーヒーである。


この日の為に取っておいた未開封の豆。

ソレを今、解き放つ――!



「ブレイクタイムにコーヒーでも如何いかがですか(誰)」


「あっわたしメロンソーダ買ってきたー!」

「!!」

「!!」



その言葉と同時に、如月姉妹が目を見開き釘付けになる。

1.5Lの緑色の液体に。



「えへへ、二人とも大好きだもんね~これ」



……おれもメロンソーダだいすき!(鞍替え)。





プラスチックコップ(使い捨て)に入れたメロンソーダ。

そしてチョコレート、ビスケット。

ポップコーン(俺の大好物)。


そんな風景は、写真にとって残しておきたい……が叶わず。かのんちゃんが喰らい尽くしました(当然)。


《――「いっちってカレー以外も食べてるんだ」――》

《――「失礼よ桃」――》

《――「主食はナンです」――》

《――「カレーは?」――》

《――「““कूशी喜  び” ” (憑依)」――」

 


そんな雑談も経て、また勉強に戻って。

教えて、教えて、教えて。

結構な時間が経った気がする。


時計を見れば――11時から5時間経過。

夕方が近付いている。



「……すー……(初音さん熟睡中)」

「……(如月さん熟睡中)」


「つぎはスペースシャトルおしえてー!!」

「良いよ(食い気味)」

「んー♪」

「!? 膝はくすぐったいんだけど……まあ良いか」



結果。

目の前の二人は熟睡。

膝に座り始めたかのんちゃんに、ひたすら俺が折り紙を教えている状況である。


勉強してねぇ!(本日二度目)。

一応英単語を復習しながら折っている。折り紙しながらだと脳が動いて良い感じ。

流石かのんさんや……。



「……ふわぁ……」

「っと!」



と思ったらかのんちゃんも撃沈。

机に頭を打ち付ける前に支えてあげた。


……おいおい俺以外全員寝ちゃったよ。

みんな結構疲れてるんだな。

緊張で俺は全然起きてます(陰キャ)。



「よいしょ……」



とりあえず、かのんちゃんは布団に寝かせよう。

小さい身体を抱っこして、敷き布団に転がして――


「……すー……んっ!」

「えっ」


と思ったら、まるで俺を引き留める様に。

小さい手が、己の手のひらを掴んでいたのだ。


「……♪」

「……や、ば……」


子供の手ってのは、本当に暖かい。

そして、その寝顔は副交感神経をかなり刺激する要で。


いうなれば彼女は“堕天使”。

抗えない。

その白い世界に吸い込まれていく。



「……っ」



迫る寝床。

頭ではわかっていても身体は正直。


ああ駄目だ。

ずっと、どこかで眠っていた睡眠欲が。

今になって――


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