アロマと秘密基地
……携帯を見る。
曜日を見れば、確実に日曜日。
この日の為に準備して来た。
アリの巣キット(まだ住人は無し)とか、ボトルシップ(俺の“魂”)とかは押し入れに仕舞って。
部屋の脱臭&清掃により、日々のカレー臭や散らばったゴミは一掃。
玄関の十兄弟の鶴達はもう一度折りなおして綺麗にした(これいる?)(いる)。
その他色々飲み物も買ったし。
我が家の天然水のバリエーションだけは、恐らく世界一だと思っています(意味なし)。
食べ物は……初音さん達が用意してくれるらしい。
「……GoodSmell(ネイティブ)」
そしてこのアロマディフューザー。
女の子は良い匂いが好きらしいからね。
多種多様な香りを取り寄せております(果物系全般)。
“完璧”ってヤツかな――あ。睡眠時間は足りてないけれど、気合でなんとかする。
――ピコン!!
「!」
□
もも『今〇×駅に居るよ~!』
東町一『迎えに行きます』
□
と、思っていても手が震えてしまう。
準備はしたつもりだけど、肝心の心のソレは未だに出来ていない。
嫌われたらどうしよう、引かれたらどうしよう――ずっと考えてしまうんだ。
初めての友達。
初めての勉強会。
初めてのお客様。
俺の様な陰キャには、このイベントは難易度が高すぎる。
☆
彼女達を迎えに行く。
徒歩で五分程。駅が近いこの場所の家賃は、家族は教えてくれなかった。
きっと高い、が。今から有効活用します。
「えっココがいっちの家なの!?」
「……す、凄いわね」
「たかーい!!」
辿り着いた我が
当然の様にかのんちゃんは、もはや定位置となった俺の背中に居る。
如月さんの親も仕事で忙しい様で……家に一人にするわけにもいかず、今日着いてきた。
もちろん金曜から知ってた事なんだけど。
大丈夫かな(不安)。
「……すぅ」
もう寝てるし。
うん、背中があったけぇよ……(不審者)。
「いっちの両親ってお金持ちなの?」
「一応海外で仕事してる」
「凄いわね」
「え、って事は貸し切り?」
「そうだけど……」
そういえば言ってなかった。
普通は家に親が居るもんな、日曜日だし。
「いっちのお母さん見てみたかったなぁ~」
「普通だよ普通」
「……ほんと~?」
「ちょっと失礼よ桃」
「髪色は普通です」
三人と共にマンションのセキュリティゲートを通り抜けて。エレベーターに乗り込んで。
俺の髪を見てくるから一応言っておく(牽制)。
ちなみにこの虹色はまだ報告しておりません。
別に言ってもいいんだけど。緊急帰国とかされたら困るからな。
誰ですかとか言われたら傷付く。あ、でも妹に見せたら反応が面白そうだ。
「……はい、着いたよ」
エレベータ内で雑談して、辿り着いたは俺の家。
あー。緊張してきた。
――ガチャ。
「……?」
「な、なにこの……」
「(絶句)」
まずは、玄関で俺の可愛い鶴兄弟達が出迎える予定だった。
――でも。
「折り紙が、し、シナシナになってる……?」
呟く初音さん。
そう――玄関から良い香りを、という事で鶴の横に設置していたデュフューザー1号(水蒸気式)が。
鶴達に降り注ぎ、紙がフヤケてしまったのだ(即理解)。
「――っ(デュフューザー電源切断)」
「……だ、大丈夫かしらこれ?」
「大丈夫だよ(食い気味)」
あああああああ!!!
なんでこうなるんだよ!
俺の……可愛い鶴達が……。
「ど、どうぞ……」
「お邪魔しま~す」
「お邪魔するわ」
とりあえずこの鶴達は乾燥させておくとして。
居間に彼女達を招待。
「あっ良い匂いする~!」
「ね」
焚いていたアロマがようやく仕事した。
……さっき、玄関でもあったんだけどね。
「それじゃ、荷物は適当に置いといて下さい」
「は~い」
「ベンキョウ、ハ、ソノツクエデ……(機械化)」
「ええ」
「あはは、いっちカクカクだぁ~」
「か……かのんちゃんは、寝室から布団持って来て寝かせてあげようか」
「ごめんなさい、そうしてもらえると助かるわ。手伝うわよ」
「助かります(敬語)」
合ってるよね? 俺の行動。
もうさっきから緊張し過ぎて分からない。
「……これです」
「分かったわ……よいしょ」
如月さんと寝室に行って布団を二人で持ち出してくる。
俺は敷き布団。彼女は掛布団。
なんか初音さんがめちゃくちゃ見てくる。
……あれ、もしかして女子高生を寝室に入れたら犯罪だったっけ……。
「……ねっ、ねっ、あの黒い箱みたいなの何~!」
「アレは物置だよ(大嘘)」
「変わった物置だなぁ……」
はい。
あの俺の秘密基地は仕舞えませんでした(絶望)。
中身も全く移動できませんでした(世界の終わり)。
あの部屋には俺の下手くそな創作物の欠片が大量にある。
後は朝までの勉強の跡も。
それが見つかったら恥ずかしいなんてもんじゃない。
つまり。
凄い違和感があるが気にしてはいけない!
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