アロマと秘密基地


……携帯を見る。


曜日を見れば、確実に日曜日。

この日の為に準備して来た。


アリの巣キット(まだ住人は無し)とか、ボトルシップ(俺の“魂”)とかは押し入れに仕舞って。


部屋の脱臭&清掃により、日々のカレー臭や散らばったゴミは一掃。

玄関の十兄弟の鶴達はもう一度折りなおして綺麗にした(これいる?)(いる)。


その他色々飲み物も買ったし。

我が家の天然水のバリエーションだけは、恐らく世界一だと思っています(意味なし)。

食べ物は……初音さん達が用意してくれるらしい。


「……GoodSmell(ネイティブ)」


そしてこのアロマディフューザー。

女の子は良い匂いが好きらしいからね。

多種多様な香りを取り寄せております(果物系全般)。


“完璧”ってヤツかな――あ。睡眠時間は足りてないけれど、気合でなんとかする。



――ピコン!!


「!」



もも『今〇×駅に居るよ~!』

東町一『迎えに行きます』



と、思っていても手が震えてしまう。


準備はしたつもりだけど、肝心の心のソレは未だに出来ていない。

嫌われたらどうしよう、引かれたらどうしよう――ずっと考えてしまうんだ。


初めての友達。

初めての勉強会。

初めてのお客様。


俺の様な陰キャには、このイベントは難易度が高すぎる。





彼女達を迎えに行く。

徒歩で五分程。駅が近いこの場所の家賃は、家族は教えてくれなかった。

きっと高い、が。今から有効活用します。


「えっココがいっちの家なの!?」

「……す、凄いわね」

「たかーい!!」


辿り着いた我が居城きょじょう(お父さんお母さんありがとう)。

当然の様にかのんちゃんは、もはや定位置となった俺の背中に居る。


如月さんの親も仕事で忙しい様で……家に一人にするわけにもいかず、今日着いてきた。

もちろん金曜から知ってた事なんだけど。

大丈夫かな(不安)。


「……すぅ」


もう寝てるし。

うん、背中があったけぇよ……(不審者)。



「いっちの両親ってお金持ちなの?」

「一応海外で仕事してる」

「凄いわね」

「え、って事は貸し切り?」

「そうだけど……」



そういえば言ってなかった。

普通は家に親が居るもんな、日曜日だし。



「いっちのお母さん見てみたかったなぁ~」

「普通だよ普通」

「……ほんと~?」

「ちょっと失礼よ桃」

「髪色は普通です」



三人と共にマンションのセキュリティゲートを通り抜けて。エレベーターに乗り込んで。


俺の髪を見てくるから一応言っておく(牽制)。

ちなみにこの虹色はまだ報告しておりません。

別に言ってもいいんだけど。緊急帰国とかされたら困るからな。


誰ですかとか言われたら傷付く。あ、でも妹に見せたら反応が面白そうだ。



「……はい、着いたよ」



エレベータ内で雑談して、辿り着いたは俺の家。

あー。緊張してきた。


――ガチャ。



「……?」

「な、なにこの……」


「(絶句)」



まずは、玄関で俺の可愛い鶴兄弟達が出迎える予定だった。

――でも。



「折り紙が、し、シナシナになってる……?」



呟く初音さん。

そう――玄関から良い香りを、という事で鶴の横に設置していたデュフューザー1号(水蒸気式)が。

鶴達に降り注ぎ、紙がフヤケてしまったのだ(即理解)。



「――っ(デュフューザー電源切断)」


「……だ、大丈夫かしらこれ?」

「大丈夫だよ(食い気味)」



あああああああ!!!

なんでこうなるんだよ!


俺の……可愛い鶴達が……。



「ど、どうぞ……」

「お邪魔しま~す」

「お邪魔するわ」



とりあえずこの鶴達は乾燥させておくとして。

居間に彼女達を招待。


「あっ良い匂いする~!」

「ね」


焚いていたアロマがようやく仕事した。

……さっき、玄関でもあったんだけどね。



「それじゃ、荷物は適当に置いといて下さい」


「は~い」

「ベンキョウ、ハ、ソノツクエデ……(機械化)」

「ええ」

「あはは、いっちカクカクだぁ~」


「か……かのんちゃんは、寝室から布団持って来て寝かせてあげようか」

「ごめんなさい、そうしてもらえると助かるわ。手伝うわよ」

「助かります(敬語)」



合ってるよね? 俺の行動。

もうさっきから緊張し過ぎて分からない。


「……これです」

「分かったわ……よいしょ」


如月さんと寝室に行って布団を二人で持ち出してくる。

俺は敷き布団。彼女は掛布団。

なんか初音さんがめちゃくちゃ見てくる。


……あれ、もしかして女子高生を寝室に入れたら犯罪だったっけ……。



「……ねっ、ねっ、あの黒い箱みたいなの何~!」

「アレは物置だよ(大嘘)」

「変わった物置だなぁ……」



はい。

あの俺の秘密基地は仕舞えませんでした(絶望)。

中身も全く移動できませんでした(世界の終わり)。


あの部屋には俺の下手くそな創作物の欠片が大量にある。

後は朝までの勉強の跡も。

それが見つかったら恥ずかしいなんてもんじゃない。


つまり。

凄い違和感があるが気にしてはいけない!


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