いつもの朝
朝。
今日も豆からこだわったコーヒーを
ナンはどこ行ったって? 今日は米で食います(日本人の鑑)。
五月の中旬、少しづつ温度は上がっていく。
というか暑いなもう。
「……っ、はぁ。いただきます」
ダンス練習を終えて、朝飯にありつく。
ちょっとだけ急いで。
その理由は二つある。
まず一つは――最近始めた創作活動をする為。
「テンション上がってきた(興奮)」
俺は、部屋の一角にある『箱』の中に入る。
詳しく言うと一人用テント。
腕を回せるぐらいの個室がそこにあるのだ。
「……よし」
落ち着く暗室の中、俺はペンを取る。
……ああ。ようやくこの部屋を有効活用出来るよ。
自分は親のおかげで、結構良いマンションに住まわせてもらっている。
比較的広い1LDK(11畳ある)の為、勿体無いぐらい。
《――「これならいっぱいお友達が来ても大丈夫ね」――》
《――「ママ、分かって言ってるの……?
思い出す、この物件を紹介してくれた母親の言葉。
苦虫を嚙み潰したような妹の顔が今でも頭に残っている(トラウマ)。
俺はしっかりと狭い部屋で良いって言いましたけどもね。
しかし昨日! 届いたそれを組み立ててLDKの部屋に設置。
最高ですよコレは(惚)。大人の秘密基地って感じ。
とりあえず朝のお絵かき練習と行きますか……。
☆
「集中し過ぎた……っ!」
個室は気が散らないが為、時間の感覚も馬鹿になっていた(恐怖)。
見れば予定時刻五分オーバー。
急いで着替えて学校へ。
――「うわすご、アレ」「あんな人居たっけ?」「でもアレ星丘でしょ」——
いつもと違う時間帯の電車の為、また目線集中。
駅から降りたらもっと集中。
学校が近くなったらもっと
良いぞ、更に俺を見ろ(不審者)。
……なんて冗談を心の中で言える程にはなった。
人間って、本当に“慣れる”生き物だと思いませんか(誰)。
「――あ! いっちだ~! おはよう~」
俺が、急いで家を出た理由。
その二つ目は――彼女、初音さんと朝に話す為である。
如月さんは遅めに登校するから、このホームルーム前15分ぐらいは彼女と話せる時間があるのだ。
「おはよう」
「? なんか嬉しそうだね」
そりゃそうだ。
友達と朝から話すなんて、コレまでなかったんだから。
「……今日は、珈琲が旨く
「はえ~」
人間は、慣れる生き物だ。
でも朝のこの時間は――まだまだ慣れる事はないだろう。
☆
「……」
「……?」
いやいや何話すの?
ホームルーム前、友達と話す内容って何なの?
今日の天気とかですか(よりにもよって曇天模様)。
「あっそういえば昨日のDVD見ました」
「なんで敬語なの~?」
「あ、あー……」
思わず詰まる。
こうなると言葉が出てこなくなる。
おかしい、あんなに楽しみにしてたんだけど。というか前までは普通に話してたのに!
いや、だからこそか。
本当――こういうとこやぞ(一年間友達ゼロ)。
「なんかいっち今日変だね! いつも変だけど!」
「うん、そうだね(
「認めちゃったぁ~!」
あのギャル二人組からいじられまくられたせいか、その台詞だけはスッと出た。
何か凄い情けない気がする(今更)。
でも、彼女は笑ってくれた。
……ありがとう、夢咲さんと柊さん。
ちょっとだけ緊張が解れた気がする。
「それ……そういえばいっちって、あー、隣の二人と仲良いよね」
「え」
今度は彼女の声が震えていた。
でも、思えば
「意外、だな~って」
「まあ確かに……」
「正直
「……うーん」
そう言う初音さん。
それは少し違うと思うんだ。
彼女達は正真正銘陽キャで。一方はどうしようもない陰キャで。
でも――
「俺は彼女達の事、結構好きだよ」
「え」
「柊さんは
柊さん、夢咲さんも。
こんな俺と話して笑ってくれるのは嬉しい。
疲れる時もあるけれども(飢え)。
魔王とかヤンキーとか心の中で言ってごめんなさい。
いざ思えば、仲間にしたら戦闘力高そうな二人だな(クソ失礼)。
「あ、あ……」
「?」
言い切って気付く。
初音さんが、何故か固まっていることに。
「……い、いっち。後ろ……」
「え゛」
その瞬間。
俺は、命の危機を感じた。
「やっほー☆」
「……」
背後、明るい声が一つと
怖かった。
ギギギと、首が油を切らした機械の様に後ろを向く。
そうだ――当たり前だろ。
同じクラスメイトなんだから、教室に入ってくるに決まってるのに。
なんで俺は、あんな事を!
「……お、おはよう」
「全部聞いちゃった~☆」
「……聞いてねぇよ。何も」
いや絶対聞いてる(絶望)。
柊さんはいつも通りだけど。むしろ凄い笑ってるんだけど(第六天魔王)。
夢咲さん、そっぽ向いちゃってる……。
《――「柊さんは弄ってくるし、夢咲さんはちょっと怖いけど」――》
“ちょっと怖いけど”。
“怖いけど”。
――すいません無かった事にできませんか(タイムリープ)。
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