エピローグ:人生で、一番長い二日間
「……ただいま」
震えた声が、玄関で木霊する。
家に帰ると今日二番目の静寂があった。
先程までの、彼女達の出来事が嘘の様に思える。
主張が激しい、鶴の五兄弟(追加した)が少しそれを紛らわしたが。
「――っ」
スーパーで購入したスパイス達、珈琲や売れ残り達を棚に仕舞う。
そして、俺は外へ飛び出した。
あては無い。
でも今は、走りたい気分だった。
☆
「はっ、はっ――」
もう、辺りはすっかり暗くて。
そんな夜道をひたすら走る。
今。
そうしていないと、どうにかなってしまいそうだから。
「ぁ……」
そして。
辿り着いたのは、その公園だった。
《――「で、出来た」――》
土曜日、朝。
ひたすら逆上がりを繰り返したあの時を。
まるで、世界が開ける様になった瞬間を。
……人生初の職質も。今となってはいい思い出で。
《――「いっけえええええ!!」――》
子供向け映画と思って、全く期待していなかったのに。
思わず叫んでいたあの時を。
《――「は~! 語った語った!」――》
思わぬ遭遇。
初音さんと通じ合ったその瞬間を。
「はあっ、はあ――」
また走る。
まだ――もっと、思い返したい。
夜へと溶け込むよう……俺はまた走った。
《――「……!」――》
思い出す。
図書館の静けさに落ち着いて。
まるで世界に吸い込まれる様な、手に取った古の物語を。それに魅了された時も。
《――『♪♪』――》
真逆――騒々しいクラブ。
音楽と一体化した時も。
踊って楽しんだ――その瞬間を。
《――「『東町君って面白い人なのね』、だって」――》
最後、公園。
名前すら覚えて貰えてなかった。
そんな好きだった人に、そう言われた事実を知った時も。
《――「わたし、いっちと友達になりたい!」――》
そう言ってくれた彼女の笑顔も。
「……はっ、はっ――」
全てが、濃密な時間だった。
長い長い二日間。
鳥肌が止まらない。
スレの住民によって、20の趣味を決めてもらった。
こんなにも――休日が楽しいなんて知らなかった。
「ああ――」
全て。
点と点が繋がっていく。
やりたいことが、どんどん溢れていく。
こんなことは――初めてで。
生まれた線が、次々に伸びて行く。
「何なんだよ、これ……!」
走り過ぎて、苦しくなって、心臓が爆発しそうな程に鼓動を早くしても。
抑えきれない。
「『伝えたい』、この想いを――」
形にしたい。
吐き出したい。
『イラスト』でも。
『文章』でも。
『音楽』でも。
だから。
俺はまた――その掲示板を立ち上げた。
□
【>>5で俺は変わろうと思う Pert5】
1:名前:1
なあ、お前ら
2:名前:恋する名無しさん
どうした?
3:名前:恋する名無しさん
なに?
4:名前:1
趣味って、追加してもいいかな
5:名前:恋する名無しさん
え、まだ増やすのww
6:名前:恋する名無しさん
別に良いんじゃない
7:名前:恋する名無しさん
元々、趣味って誰かに決めてもらうものじゃないし(今更)
8:名前:1
そっか ありがとう
9:名前:1
でもそうなると迷っちゃうな いっぱいあるから
10:名前:恋する名無しさん
20あるのにまだ“いっぱい”増やすのかwww
11:名前:恋する名無しさん
ばけもんかよ
12:名前:1
ってわけで……安価してもいいかな
13:名前:恋する名無しさん
だと思ったww
14:名前:恋する名無しさん
バッチ来い
15:名前:恋する名無しさん
ほんと1はしょうがない奴だなぁ
16:名前:1
ありがとう
それじゃ、今日最後の安価だ
選択肢置いときます
1.イラスト制作
2.音楽制作
3.小説制作
この3つのどれかを、趣味に加えたいと思うんだ
皆さん、お願いします
レス番は>>50で
17:名前:恋する名無しさん
バッチ来い
18:名前:恋する名無しさん
加速
19:名前:恋する名無しさん
そういや最初、虹色に決定してからもう三日か
20:名前:恋する名無しさん
早いもんだね
21:名前:1
うん 凄い濃い時間だったよ
22:名前:恋する名無しさん
もうスレも5まで行ったしなw
23:名前:恋する名無しさん
最初の安価も>>5だったし
24:名前:恋する名無しさん
これが運命か……(ドヤ)
25:名前:1
実際そうかもしれない
26:名前:恋する名無しさん
加速
27:名前:恋する名無しさん
でも、急になんで趣味の追加を?
28:名前:恋する名無しさん
ね
29:名前:1
この二日間でさ
色んなものに触れてみて、自分でも何か創ってみたいと思ったんだ
30:名前:恋する名無しさん
そっか
31:名前:恋する名無しさん
本当にこれまで趣味無かったんだな
32:名前:1
うん
33:名前:恋する名無しさん
俺も、1に影響されて積んでた本読み始めたよ
34:名前:恋する名無しさん
分かる 俺も久々に連れと草野球やりに行ったw
35:名前:1
え
36:名前:恋する名無しさん
自分もサボテン買ったわwww
アリ飼育楽しそうだけど俺にはハードル高いし イッチは凄いよw
37:名前:恋する名無しさん
久々にサッカー観戦行ったね
趣味っていいもんだよな
38:名前:恋する名無しさん
多分、このスレに出会わなかったらこの土日は何もしてなかった
39:名前:恋する名無しさん
ね
40:名前:恋する名無しさん
影響を受けてるのは、1だけじゃないんだぜ
41:名前:恋する名無しさん
筆を折った身ですが、また拙者小説を書き始めました
一君、小説は良いぞ
42:名前:恋する名無しさん
音楽作るの楽しいよ(素人並感)
43:名前:恋する名無しさん
久々に絵投稿したわ 1も仲間になろうぜ
□
……打ち込まれているレスが、俺の目に映っていく。
背中を押してくれた彼らのその声が――文字を伝って脳に響く。
□
44:名前:恋する名無しさん
そろそろやね
45:名前:恋する名無しさん
ま、決まってるけどなもう
46:名前:恋する名無しさん
じゃ、背中を押してやろうじゃないか(今日一番のドヤ顔)
47:名前:恋する名無しさん
もちろん
48:名前:恋する名無しさん
1
2
3
49:名前:恋する名無しさん
1
2
3
50:名前:恋する名無しさん
123
51:名前:恋する名無しさん
決まりましたわね
52:名前:恋する名無しさん
頑張れよ
53:名前:恋する名無しさん
決まったな……
54:名前:恋する名無しさん
そうなると思ってました
55:名前:恋する名無しさん
これで趣味23個だな おめでとう!
56:名前:恋する名無しさん
めでたいねぇ
□
届くその声。
□
57:名前:1
みんな
ありがとう
□
携帯を閉じて、俺は帰路に着く。
やるべき事が多すぎて困ってしまう。
何から手を付けようか迷ってしまう。
でも――楽しくて仕方がない。
そんな夜。
人生で、一番長い二日間。
その終わりを感じながら――俺はゆっくりと歩いて行った。
□
70:名前:恋する名無しさん
……お前ら、何か忘れないか?
71:名前:恋する名無しさん
ダメダメ!!! 言うなって!!
72:名前:恋する名無しさん
アレは流石に無理だったんだ
趣味として難易度が高すぎる 諦めても無理はない
73:名前:恋する名無しさん
(1居ないよな?)
74:名前:恋する名無しさん
居ないっぽい
75:名前:恋する名無しさん
よっし おじさん言っちゃうぞー!!!!!!!
76:名前:恋する名無しさん
ポロは?
77:名前:恋する名無しさん
草
78:名前:恋する名無しさん
ポロは?
79:名前:恋する名無しさん
流石に無理だって言ったろwwww
80:名前:恋する名無しさん
ポ
81:名前:恋する名無しさん
ロ
82:名前:恋する名無しさん
ロ
83:名前:恋する名無しさん
?
84:名前:恋する名無しさん
ポロロって何だよ
85:名前:恋する名無しさん
せっかくいい感じだったのにwwwww
86:名前:恋する名無しさん
は
87:名前:恋する名無しさん
?
88:名前:恋する名無しさん
ポ
89:名前:恋する名無しさん
ロ
90:名前:恋する名無しさん
は
91:名前:恋する名無しさん
?
92:名前:恋する名無しさん
お前ら急に騒ぎすぎ このスレを1が見たらどう思うでしょうか(ポロは?)
93:名前:恋する名無しさん
相手は高校生やぞ アンタらはみっともないと思わんのか(ポロは?)
94:名前:恋する名無しさん
1はよくやったよw 流石に本だけで勘弁してやれってww
そもそも二日間でアレだけやったのが異常なんだわ
95:名前:恋する名無しさん
ポロってなんだっけ(ゲシュタルト崩壊)
96:名前:恋する名無しさん
あーあー台無しだよ
97:名前:1
もちろん忘れてない
夏休み、北海道でポロの体験会やるらしいから行くつもり もう応募申し込んだ
それまでは近場の乗馬出来るところがあるからそこで練習もするよ
98:名前:恋する名無しさん
!?!?!?!?!?!?!
99:名前:恋する名無しさん
大草原
100:名前:恋する名無しさん
やっぱり1じゃないか(手のひら返し)
□
▼作者あとがき
これにて第二章終了!
皆様の応援本当に嬉しいです。本当にありがとうございます。
おかげ様でランキングにも顔が出るようになってました。
とりあえず今から頑張って次章の誤字チェック作業もろもろやります。血眼で。
というわけで、投稿が一日程空くかもしれません。
ガマン出来ず最初の方に連続更新しすぎた自分を殴りたい……!
次章からは学園生活に戻ります。
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