第3話 廃棄場の底
「ま、まだ……生きてる……?」
廃棄場の底へ落ちた。
もう死んだのかと思ったが、幸か不幸か生き残ってしまったらしい。
どうやら背負っていたオートマタがクッションになったようだ。
案の定、オートマタは大破してしまったが、そもそも廃棄予定だったのだから問題ないだろう。
命拾いはしたが、僕はもう動けない。
オートマタがクッションになったとはいえ、身体への衝撃は凄まじく、息を吸うのにも痛みが走る。
右肩は熱を帯びているし、流れ出る血の勢いが凄い。
大破したオートマタにも降り掛かっていた。
「死ぬのか……僕は……」
朦朧とした意識の中、僕は絶望する。
今の状態では廃棄場から脱出することなんて到底できない。
醜くも生き残ってしまったが、救けが来る頃には死んでいるだろう。
そもそも廃棄場の底に落ちた人間はこの街では死んだものとしてみなされる。
ここから叫んだとしても外には聞こえないだろうし、叫ぶ元気ももうない。
自然と涙が溢れてきた。
「こんなことなら……もっとサムエルさんと話しておけば……よかったなぁ……」
もしかしたら会話をもっとしていたらわかってくれたかもしれない。
「あの子……ちゃんと逃げられたかな……」
一瞬しか守れなかったけど、あの女の子は機械獣から逃げてくれただろうか。
(ダメだ……もう意識が……)
支離滅裂と思考していたが、もう限界だった。
僕の視界はだんだん光が失われて、瞼が重くなる。
ウィィイイイイン――。
消えゆく意識の中、辛うじてそういう機械音が聞こえてきた。
きっと廃棄場の機械が作動したのだろう。
これから僕は街のエネルギーになるのだ。
今度生まれ変わったらもう少しだけ強くなれるだろうか。
街の外に出られるくらい強く。
女の子を救けられるくらい強く。
「もっと……強く……生きたかった……な……」
そう呟いた後、僕の意識は――――。
――――――――。
――――――。
――――。
――。
『――エネルギーノ供給ヲ確認シマシタ』
機械的な声が聞こえる。
『起動シマス。失敗シマシタ。再起動シマス。――失敗シマシタ。再起動シマス。――成功シマシタ』
幻聴だろうか。でももう死にいく僕には関係ない。
『血液情報カラIDヲ識別。レオ・ポーターヲ
僕の名前を呼んだ――?
『現状分析ヲ開始。周囲スキャン実行。マスターヲ確認。マスターヲスキャン。脈拍低下。意識レベル最低。右腕消失ヲ確認。出血多量。極メテ危険ダト判断シマス』
そんなことはわかっている。僕はもう死ぬんだから。
『蘇生プログラムヲ実行シマス。――実行不可。診断プログラム実行。――破損率73%。完全自己修復不可。蘇生プログラム実行不可』
蘇生? 助かるのか?
あぁ……不可……それも当然だ。
こんな状態で助かったら奇跡に違いない。
『生存戦略機構ニ基ヅキ対応ヲ検討シマス。――検討シテイマス――。完了』
ガチャガチャと何かが蠢く音が聞こえたが、僕にはもう何も見えない。
意識がもう限界を迎えていた。
『未破壊部分――分解。再構築。成形――機能ノ全テヲ移行』
それを最後に僕は深い眠りについた。
『神経回路ヲ接続シマス――脳ヲ分析。言語ノ最適化ヲ実施シマス――――――』
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